個人的なナポリの思い出

12月1日、ナポリ対ユヴェントス戦、細かいことはあまりよくわかりませんが、前回ナポリとの試合でユヴェントスのサポーターが差別的発言をしたため入場制限をかけられたとかで、今回はナポリサポーターだらけの試合になるとか。前半戦最大の山場なだけに、これは結構ユヴェントスにとっては厳しい制裁になるのではないだろうか。

ナポリって結構有名な街ではありますが、正直あまり日本人が観光で行かない印象があります。僕は一度だけ行ったことあるのですが、その時も日本人はおろか、中国人含めてアジア人をほとんど見なかった記憶があります。実際、イタリアの観光都市と言ったらローマとヴェネツィア、ついでミラノ、フィレンツェ。はるばる東アジアから来て、その辺りを巡ったら、確かにお腹いっぱいになってしまうと思います。古代ローマ時代の遺跡の数々、ルネッサンス時代の豪勢な聖堂、美術館、、、このあたりを否応なく見せられた後にナポリまで行くのは精神的にも結構辛いですよね。僕も初めてイタリア旅行をした時は、ヴァチカン美術館とサン・ピエトロ大聖堂を見ただけで本当に、新しい文化に触れるためのキャパシティを超えてしまい、心が満たされてしまいました。世界史の教科書で見たダ・ヴィンチやミケランジェロの芸術をこれでもかというくらい生鑑賞した結果、完全に芸術酔いしまったようです。

でも、せっかく片道14時間とかをかけてイタリアに行くのであれば、僕はやはりナポリを訪れてみることを強くオススメします。これから大学の卒業旅行を考えてる人がいて、もしイタリア旅行を計画してるなら、ローマとヴェネツィアで終わらせずにナポリに行った方が良いと思います。ヴァチカン美術館をほぼ半日かけて周り、ついでに真実の口やら、コロッセオやらに行くことを否定する気は全くありませんが、僕のように芸術酔いしてしまうくらいなら、あえてヴァチカン美術館は入ってすぐにシスティーナ礼拝堂に直行し、最後の審判だけ見て1時間で済ませ、芸術酔いをせず体力を温存し、残った時間でナポリまで足を伸ばして見てください。ナポリは本当に良い街ですから。

とはいえ僕も、ナポリには実は一度しか行ったことがありません。でもその時の思い出が素晴らしすぎて、次にイタリアへ旅行するときは必ず立ち寄ろうと心に決めています。今回は、僕のたった一度のナポリ旅行の思い出を語ってみようと思います。

イタリアの主要都市を2週間かけて渡り歩く旅行をしてたとき、朝9時フィレンツェ発の電車に乗って、お昼頃にナポリに着きました。その日は薄暗い曇りの日で、ナポリの空気はどんよりとしていたのを覚えています。重いスーツケースから解放されたかったので、ナポリ中央駅から歩いて15分ほどのホテルに直行しました。ホテルまでの道で、移民やホームレスが多い地域を通りがかったのですが、路地裏で左腕に注射を刺してる人を見かけ、おぉ・・・さすが治安の悪い街・ナポリだ・・・と圧倒されました。

スーツケースを置き一休みした頃には、時間も13時くらいになっていたので、ホテル近くのピッツェリアに向かいました。Pizzeria Del Popoloというお店です。店員は英語は全く喋れませんが、「マルゲリータ、ウーノ!」だけ言えば注文くらいはできます。ちなみにマルゲリータは1枚3.5ユーロ、僕が旅行した当時は1ユーロ=115円くらいでしたので、日本円になおせば400円くらいでしょうか。僕と、一緒に旅行をしていた奥さんは、400円のピザということで、まあ1切れ分くらいの量かなと想像し、二人で合計2つのピザを頼みました。注文して5分か10分くらいしか経たないうちに、注文した400円のピザ2枚がテーブルに来ます。そこで驚いたのは、日本のピッツェリアで出てくる1枚2000円のピザよりも一回り以上大きいピザでした。それだけの量なので2人で1枚を食べきったところで満腹となってしまい、残りもう一枚は全く手つかずのまま残す羽目に。さすがに全く手をつけずに帰るのは気が引けたので、テイクアウトを頼み、ホテルのフロントスタッフに差し入れをしました。ちなみにこのピザ、値段は日本の5分の1ですが、味は数十倍美味しかったです。美味しすぎて、「うめええええええ!」って叫びました。その瞬間の写真を今も持ってますが、本当に幸せそうな顔をしてます。

ランチを終え、Napoli Sotterraneaという観光スポットに向かいました。ここは要するに古い古い地下都市です。そこへ向かう道で、カフェに寄りました。イタリア的に言うと「バール」です。イタリア滞在も10日を越え、ローマ、ヴェネツィア、ミラノ、フィレンツェと渡り歩き、それなりにイタリアの文化にも慣れてきた(気持ちになっていた)ため、(気持ちは)まるでイタリア人のように颯爽と「エスプレッソひとつください」と注文しました。バールのおじさんは、常連客と談笑しながら片手間にエスプレッソを作り始めます。ものの数十秒でエスプレッソは完成しました。値段は0.8ユーロ、100円もしません。その雑に作られたエスプレッソを一口飲んだ瞬間、誇張なしに、僕の体の中に衝撃が走りました。とにかく美味しかったのです。イタリアではコンビニもパチンコ屋もないので、うんこがしたくなったらバールに行くしかありません。バールでうんこをするついでに、日本のコンビニで100円のガムを買って帰るのと同じように、エスプレッソを各地でたくさん飲んできましたが、もう完全に別の飲み物ではないかというくらいの美味しさでした。

バールでエスプレッソを飲み、Napoli Sotterraneaで地下都市を観光し終えたところで、喉が渇いて、そのまま水を買いに行きました。ドンキホーテのように通路のせまいスーパーがあったので、奥さんだけ表で待っててもらい、さっと僕だけお店の中に入りました。1分ほどで水を手にして戻ってくると、奥さんはすごく仲良さそうに5歳くらいの小さな女の子と話してます。女の子の横には、いかにもナポリ人といった感じのお父さんがいて、奥さんの手にはクッキーが1枚ありました。どうやら女の子が、ひとりでお店の前にいる僕の奥さんを見かけて、「クッキーいる?これ美味しいよ」と渡してくれたようです。5歳の女の子はもちろんですが、横にいるお父さんも英語なんて話せません。一方で奥さんはイタリア語は「ボンジョルノ」と「チャオ」くらいしか知りません。ですが、お父さんは、拙い英語で「Napoli!! Welcome! Good! Good!!」とハイテンションで話しかけてくれます。僕は奥さんよりもすこーしだけイタリア語ができたので「Sono giaponese. Grazie mille per questo biscotto」とお父さんに話しかけると、「日本から来たの!イイネイイネ!ナポリは良い街だよ!!エスプレッソ美味しいよ!!!あ、もう一枚これいる??」と返してくれました。100%聞き取れたわけではありませんが、とにかく縁もゆかりもない極東から来た人間を、ものすごく歓迎してくれたのはわかりました。

そのあと、僕たちは卵城(Castel dell'Ovo)という、海岸にそびえ立つ城に向かいました。あいにく雨が降りはじめ、さらに良くないことに携帯電話の電池もなくなってしまったため、ついさっきまで見ていたGoogle Mapの記憶を頼りに卵城へ向かいました。晴れた日であればそのまま歩いても良かったのですが、雨もどんどん本降りになっていく中、バスに乗らないとずぶ濡れになってしまうため、卵城行きのバス停を探します。しかし、意外とバスの路線図が複雑で、自分が乗ろうとしてるバスが卵城に向かうのか、全く自信がなく、同じバス停で並んでいたおじさんに、「このバスに乗ったら、Castel dell'Ovoに行けますか?」とダメ元で英語で聞いてみました。しかし、やはりこのおじさんも英語は全く話すことができず、「こいつ今Castel dell'Ovoって言ってたよな・・・卵城に行きたいのか・・・?」といった困惑した表情で、自信なさげに「Yes・・・」と答えてくれました。数分後バスが来たので、おじさんと一緒に、卵城に向かうと思われるバスに乗りました。バスに乗るとすぐに、おじさんはすでにバスに乗ってた人たちにイタリア語で何か話し始めます。おそらく「この二人の観光客、たぶん卵城に行きたいんだけど、合ってるのかな。誰か英語話せる人いないの?ってかこのバス、卵城行けるよね?」みたいなことを言ってました。すると大学生らしき女の人が、僕ら夫婦に「Are you going to Castel dell'Ovo???」と英語で話しかけてくれました。しかし、この大学生によると、僕らが乗ったバスは卵城の近くには行くけど、卵城には行かないバスのようでした。それを聞き、地図もないしどうしよう・・・と落ち込み始めたのもつかの間、バスの中で急に「この観光客二人が卵城に行くにはどのバス停で降りて、どうやって行けば良いか」会議が始まりました。イタリア語の会話についていくことができず、口を開けてその会議の様子を見ているうちにバスは、卵城の近くのバス停に到着しました。大学生に英語で「ここで降りて!降りたらそこの道をまっすぐ行って、途中で左の方に行けば卵城あるから」と説明を受け、バスを降ろされました。説明通りに歩き、無事卵城には着きました。

とまぁ、これらが僕のナポリでの思い出です。ナポリは本当に良い街だと思います。治安が悪いなんて言われてますが、確かに治安はあまり良くないかもしれませんが、その分本当に人情に溢れた街です。そして、何よりも料理が美味しい!エスプレッソも美味しい!

イタリアには「ナポリ見てから死ね」という言葉があるようです。石田純一のとっておきの口説き文句は「美味しいピザを食べに、ナポリに行かない?」らしいです。そんな素晴らしい街、ナポリ。イタリア旅行を考えてる方は、ローマやヴェネツィアで終わらせず、ぜひナポリへ寄ってみてください。ついでにソレントなんかに行っても良いかもしれません。

とりあえず無性にナポリ旅行の思い出に浸りたくなったので、このブログ書きました。ナポリという街は大好きですが、今日は大一番なので、ユヴェントスにはぜひ、ナポリに勝利して欲しいです。


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