トッテナム戦2ndレグ、アッレグリは4−3−3で戦ってない

アッレグリの名采配が再び話題になっている。先日ロンドンで行なわれたチャンピオンズリーグ決勝トーナメント第一ラウンド2ndレグ トッテナム対ユヴェントスの試合でのことだ。ディバラ、イグアイン、マテュイディの復帰という朗報があった一方で、長期離脱を強いられているクアドラードに加えて、マンジュキッチ、ベルナルデスキまでもが新たに故障者リストに名を連ねることになり、敵地での勝利が絶対に必要なこの大一番を、FWの交代枠が1枚もない中で挑むことになった。となると、ユヴェントスは必ず先制点を取り、守備的な交代カードを切っていく戦いを進めるしかないのだが、やはりそれも思い通りには行かず前半に先制点を奪われ、絶体絶命の状況に陥る。しかしここでアッレグリは、アサモア、リヒトシュタイナーという2人の”DF”の投入により、立て続けに2点を取ることに成功し、この試合を勝利に収めたのである。

このカラクリがどうなってるのか、個人的にすごく気になったので、改めて時間をかけてトッテナム対ユヴェントスの試合を見てみた。

まず、スターティングメンバーについて。一般的に報道されているラインナップがこちらとなる。

今シーズン、11月頃から使っている4−3−3である。負傷により試合に出られないデ・シリオに代わって、バルツァーリを右サイドバックにコンバートさせた。MFは今季のベストメンバーと言えるケディラ、ピアニッチ、マテュイディの3枚、FWは本来であれば左ウイングにマンジュキッチを置きたいところだが、今回は数日前のラツィオ戦で久々にスタメン復帰をしたディバラを起用。

とあるが、実はこの試合、この形になった瞬間はほとんどない。ディバラは左サイドに全く顔を出さず、むしろ得意な右サイドをメインにイグアインの数メートル後方をふらふらと動き回っていた。コスタの方は、能力的にも運動量的にも一般的なサイドバックのような上下運動を期待できないバルツァーリを補完するため、普段よりはかなり低めのポジション取りをし、FWというよりはMFとしてプレイをした。もしもベルナルデスキが起用可能であれば、コスタよりはもう少し守備的貢献が高い彼がスタメンだったかもしれない。案の定、ここはソンフンミンの独壇場となり、本来はアレックスサンドロとマッチアップするべきエリクセンも頻繁に、ユーヴェから見て右サイド方面に顔を出すことにもなった。

ということで、実際のユヴェントスの立ち上がりの基本ラインナップはこちらである。


アッレグリのサッカーでは、遅攻するときは目一杯、選手がサイドに張ってそこからサイド攻撃をしていく特徴がある。ボヌッチからの一撃必殺のロングフィードがあった昨季まではこの傾向もそこまで強くはなかったが、今季は特にこれが顕著である。「偽サイドバック?なにそれ?」状態の攻撃である。とはいえ、バルツァーリがサイドに張って崩すというのもあまりできないので、ケディラがそこに行く。左側に開くのはマテュイディであったり、アレックスサンドロであったり、その辺は状況に応じて。

しかし、これがトッテナムのハイプレスもあって、なかなか上手くいかない。そもそもケディラのパスコースはピアニッチ・バルツァーリにセーフティに出すか、コスタ・ディバラに無理やり出して取られるかしかなく(バルツァーリ・ピアニッチ向けのパスもソンフンミン・アリが積極的に来るのであまり簡単に処理できない)、アレックスサンドロもマンジュキッチがいないため、いつものように上手くオーバーラップができない。サンドロとマテュイディ、お互いがお互いのチャンスを生かせず、長所を殺し合ってるような状況である。マテュイディが復帰直後であるせいか、ここの相性は本当に悪かった。マンジュキッチがいないなら、ディバラかピアニッチがここの仲介をすればいいところ、ディバラは右サイドをなかなか離れないし、ピアニッチの方も、自分がそこを離れたら、守備時の生命線とも言えるバイタルエリアを埋めてくれそうな選手が誰もいないので、行きづらい。ちなみに、たった一度だけ、この空気に嫌気が刺したピアニッチがケディラ・ベナティアにバイタルエリアを託して左サイド前線に出向いたのだが、その20秒後にこの生命線を突かれる形であの失点シーンが生まれている。


ユヴェントスでは、コンテの時代からMFが前線にオーバーラップをする。二列目から裏に飛び出す、とかではなく、遅攻が上手くいって前線までボールを運べた瞬間にセントラルMFの選手が一列目まで上がり、そのままイグアインと同じ高さに並んでFWとしてプレイする。特にケディラは長い頭を生かしたヘディングが得意なので、こういう場面ではかなり活躍ができる。トッテナム戦も同様で、点を取りに行く場面ではケディラがFWになる。加えて、いつもならマンジュキッチが左ウイングで反応するが、この試合ではそこをマテュイディに入ったりした。クロスはコスタかアレックスサンドロが上げる。ディバラはここでもふらふらとしていた。また、この攻撃をしているときに、バルツァーリやキエッリーニなどがピアニッチの横について、ケディラ・マテュイディが上がった分、守備的MFとしてプレイをしたりもする。この攻撃によって何度かチャンスは作っていたが、そもそも前述の問題でここまで運べることがなかなかなく、苦戦していた。


後半の立ち上がりも同様にこの攻撃を繰り返していたが、相手の守備をこじ開けることができずアッレグリは交代策を講じる。遅攻パターンを見ると、やはりキエッリーニ、バルツァーリ、ベナティアの3人は本格的に攻撃参加はできないし、コスタのポジションが低く、それに応じてディバラのポジションもはっきりせず、中途半端になったりもしていた。そもそもディバラは長距離のドリブルをする選手ではなく、近くにいる右ウイングのコスタ、クアドラード、ベルナルデスキなんかを使うのが上手い選手であるから、その良さを生かせていなかった。

交代には主に、疲労などにより能力が不十分な選手を下げる「技術的」な交代と、勝ち逃げるためにFWを下げてDFを入れるといったような「戦術的」な交代の二種類がある。今回の、マテュイディからアサモア、ベナティアからリヒトシュタイナーの交代は、どちらも「戦術的」交代のように語られているように思えるが、個人的意見としては、アサモア投入は技術的交代、リヒトシュタイナーは戦術的交代であったと思う。

マテュイディに代わったアサモアは左サイドバックに入り、アレックスサンドロを左ウイングに上げた。リヒトシュタイナーが右サイドの広範囲をカバーできるようになったことで、コスタは前半よりもかなり中央に切り込んでいくことができるようになり、またポジション取りもFWに近いところへ移っていく。ディバラも、これはアッレグリの指示が別であったのかもしれないが、中途半端に一列目と二列目の間を気まずそうにフラフラすることがなくなり、いつも通りの場所でプレイできるようになった。この形にして早速チャンスを演出し、その後一気に2点を取った。


ここから先はあんまり話すこともなくなったのと、録画が途切れてしまってたので割愛します。。。

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