ハマスホイ8342-740x490

静謐の中に漂う気配  「ハマスホイとデンマーク絵画」東京都美術館

「ハマスホイとデンマーク絵画」2020.1.21~3.26【東京都美術館】

展覧会のタイトルは「ハマスホイとデンマーク絵画」。この副題のないシンプルなタイトルがすべてだ。この言葉に、テーマに誠実であるための構成は、まさに装飾を削ぎ落したデンマーク絵画のように洗練されている。

ハマスホイの名を題した展覧会でありながら、第3章までの展示には、ハマスホイの作品が登場しない。彼と同時代を過ごした作家や影響を受けた人物、デンマークの自然、人々の生活。それを丁寧に紡ぐかのように、第1章では19世紀前半のデンマーク絵画の「黄金期」を取り上げ、第2章では多くの芸術家が集ったデンマーク最北端の漁師町から生まれた「スケーイン派」が登場、第3章では国際化する新しい絵画が生まれる場としての「独立展」の存在に加え、家族の幸せな空間として描かれていた室内画が、空間そのものに重きを置くものへと変化していく様子を捉えている。

動物や人物のいる風景画、家族の日常を捉えた室内画。あえて主役とはしない小さく描いた命の体温が空間をじんわりと温めるように、決して強くない光の中にもささやかな幸福を感じるデンマーク絵画。その魅力を存分に味わったところで、鑑賞者は第4章の扉を開ける。

続きはこちら

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?