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NEJM 対 IOC

2021年5月25日付けで The New England journal of medicine (NEJM) のオンライン版に掲載された、International Olympic Committee (IOC) の Playbook Guidelines(プレイブック)を批判する記事(Perspective)が興味深い[1]。

1. Sparrow AK, Brosseau LM, Harrison RJ, Osterholm MT. Protecting Olympic Participants from Covid-19 - The Urgent Need for a Risk-Management Approach. The New England journal of medicine. 2021.

プレイブックの英語版は https://olympics.com/tokyo-2020/en/games/tokyo-2020-playbooks/ から参照できる。日本語版は https://olympics.com/tokyo-2020/ja/news/news-20210428-04-ja のニュース記事にリンクがあるだけ。

NEJM の記事の中身についてはほとんど報道されていないからか、この記事に基づく批判はあまり聞かない。意訳気味に、大まかな内容をまとめておく。

予防接種:全てのアスリートが予防接種を受けるわけではない。「アスリートの優先接種には倫理的な問題がある」と考えるアスリートもいるだろう。予防接種の対象年齢に満たない子供アスリートもいる。コロナが世界中に広まるかもね。

公衆衛生の重視:選手会、運営組織、専門家を含む COVID-19 諮問委員会を設置し、アウトブレイク(急速な感染拡大)に迅速に対応するためのプラン B(善後策)を用意するべき。

アスリートの保護:アスリートに自己責任での参加を求めるのは間違っている。トレーニング期間を含めて充分にカバーできるような保険を用意するべき。

明確に定義された責任:十分な入国前検査などで、安全な海外渡航を実現する。スポーツ毎の特性に応じた防護策を定めるべき。屋外か屋内か、接触があるかないかでリスクは変わってくるはずだ。

効果的な検査・接触追跡・隔離策:アスリートは、少なくとも 1 日 1 回、COVID-19 の PCR 検査を行うべき。えっスマホのアプリ?選手がスマホを常に持ち歩いてるとでも?スマートフォンではなくウェアラブル技術を用いた近接モニタリングを行うべき。きちんとしたホテル隔離施設を指定する。

適切な治療とケア:きめ細かい治療とリハビリテーションプログラム。心臓スクリーニング検査の義務化。現地でメンタルヘルス支援を受けられるようにする。

効果的な個人防護具への容易なアクセス:マスクは各自持参ではなく、医学的に承認されたマスクを配布する(バスなどハイリスクの場では N95 マスクも)。

アスリート教育:COVID-19 Liaison Officer (CLO) に教われとか寝言を言うな。選手会と協力し、わかりやすいインタラクティブな教材を開発するべき。

安心・安全な競技生活:選手には相部屋ではなく個室を用意するべき。交通手段の変更、カフェテリアを含む屋内の収容人数の資源などでソーシャル・ディスタンスを確保すべき。空調システムを調整し適切な換気を行う。

オリンピックの意義:オリンピックを中止するのが一番安全かもしれない。だけどオリンピックが持つ絆の力はとっても大切。だから急いで行動しましょう。

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