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サガニ (Sagani) をやっていく話

Uwe Rosenberg 作のパズルゲームに「サガニ」という作品があります。私が Board Game Arena のアリーナで3期連続チャンピオンを獲っているのでそろそろ新キャラが出てこないかと思いテキストを残しておきます。
なお以下の記載は2人戦を前提としています(3人以上のゲームやったことないです)。

イエーイ

タイルリスト

既にタイルの一覧を作成されている方がいるので詳細はこちらをご確認いただければと思いますが、まず最初に覚えるべきは1点と6点タイルの構成です。1点タイルは自分と同色タスクを垂直方向もしくは斜め方向に持っていて、6点タイルは自分以外の3色のタスクを垂直方向およびその両脇の斜めに横並びで持っています。たとえば、青6点であれば白赤緑の3色が横並びになっています。構成として、3!=6 通りのすべてが存在していることも覚えておくべきでしょう。1点タイルと6点タイルにはある種の規則性が見て取れます。

対して、3点・10点タイルは循環しながらも不規則性な構成となっています。これらの構成を記憶しておくべきだとは思いませんが、最低限、3点タイルが自分と同色のタスクを1つ持っていることと、10点タイルが自分と同色のタスクを1つまたは2つ持っていることは把握しておくべきでしょう。なお、垂直4方向にタスクを持つ10点タイルは、数学的には 4!/4=6 通りの構成を取りえますが、どの色についてもそのうちの1通りしか存在していない点には注意が必要です。

ゲームの速度

BGA の統計では、このゲームの勝者の平均ターン数は 23~24 ターンとされていますが、ELO >500 のプレイヤーの平均ターン数を見るとおおむね 20 ターンを切っています。体感ではほとんどのゲームが18~21ターンの間で終わり、17ターンで終わると高速展開、21を超えるとかなりもたついているという印象になります。16は見たことないです。

18ターンを目標と考えた時、1ターンあたりの点数は約4点が目安となります。したがって、3点のタイルが置いた瞬間に完成するとしても、これが他のタスクに寄与しないのであればこの3点を取ることは基本的には強くありません。逆に、置いて瞬間に6点出るタイルは取り得であることがわかります。

また、タイルは4色あることから、平均すると1色あたりゲーム内で獲得できる枚数は5枚未満であるということになります。

何を取るべきか

10点のタイルは、4つのタスクを持っているため、それ自体を置くことを含めると5手で完成します。この場合、1手あたり2点獲得しています。一方、6点のタイルは4手で完成するので、1手あたりの点数は1.5点です。このように、点数の高いタイルの方が基本的には得点効率は高くなります。

そのため、ゲーム序盤においては特に、10点のタイルを積極的に取っていくべきです。ディスクの余りは基本的に減少していくため、ディスク不足による減点の確率はゲームの進行とともにどんどん上がっていくこと、また後半になるほど10点タイルの完成確率が下がっていくこと、などがその理由として挙げられます。(ただし、互いにシナジーのない10点を2枚となるとちょっとリスクが高すぎて取るかは微妙なところです)

裏を返せば、自分に完成の見込みはないが、相手にも完成の見込みがない、もしくは相手に減点をもたらす10点タイルはわざわざ取りにいく必要がない、ということになります。相手に減点をもたらすが、こちらの完成も近い、という場合は取りに行くかやや微妙です。どちらにしてもアドバンテージを取れることは確かですが、ディスク不足による減点にはたいてい底がある(使えるディスクが増えていくので)ことから、思ったよりも減点が伸びないことがほとんどであるためです。相手の大量失点が確実ならまだしも、相手がディスク1枚足りない程度で済むのであれば、多くの場合、10点タイルを自分で取ってしまった方がよいでしょう。

もっと重要なこと

このゲームにおいて、10点タイルを取るよりももっと重要なことがあります。タイル同士のシナジーを生むことです。ここで具体的な例を見てみましょう。

たとえばこのようなゲームの開始は最強の形のひとつです。赤・緑・白の3手で10点タイルと6点タイルの両方をクリアすることができ、手数を大幅に圧縮することができます。手数を変えずに6点が追加されるので、実質的には空から6点が降ってきたのと同じです。ここでさらに「緑色6点・左から赤・青・白の矢印のタイル」を左に置けたとしたら、ほぼ負けることはないでしょう。

このように、矢印の向く先を別方向から合わせるか、もしくは同じ色の矢印をその後ろから向けることによって、1枚のタイルで多数のタスクをクリアできる体制を整えておくことは時に10点のタイルを取るよりも重要です。その理由として、ディスク不足の可能性が減ること(およびそれにより選択のフレキシビリティが上がること)、短手数で点数を稼げること、タイル枚数不足でタスクが死ぬ可能性が下がること、などが挙げられます。

最後の点について少し補足すると、このゲームにおいてタイル1色あたり5枚未満しか獲得できないため、たとえば「白が4枚必要」という状況になると全部のタスクを完了させられる確率は大幅に下がり、捨てるタスクを見極める必要が出てきます。

翻って考えれば、上の画像のような状況を相手に与えない、ということはこのゲームにおいて必須のスキルであり、そのためにはどのタイルを相手に渡すとどうなるか、というシミュレーションを全タイルについて行うことが必要です。

一点注意が必要となるのは、先ほどタイル同士のシナジーを生むことが重要と書いていますが、とはいえ3点タイル同士でシナジーを生み続けたとしても動きとしてはあまり強くありません。理論上、一手あたりの平均得点は選んだタイルの得点によってキャップされるので、毎回3点タイルを取り続けるとどんなにシナジーを生み続けたところで75点まで最低25ターンかかります。つまり弱い。

ディスク管理

このゲームにおいて、ディスク不足は1枚あたり2点のペナルティを受けます。では、ディスク不足のリスクをどう引き受けるべきでしょうか。

その前に、タスク完成におけるディスクの動きについて考えてみましょう。
このゲームの処理として、タイルを配置して既にあるタイルのタスクが完成する場合には、そのタイルのディスクを回収してから、配置したタイルにディスクが置かれます。配置前後のディスクの増減は、完成したタイルのディスク枚数から今置いたタイルのディスク枚数を差し引いた分となります。たとえば、6点タイルを獲得するために10点タイルを置いたとすれば、ディスクの増減は 3-4=-1 となります。

*ただし、残りディスク0枚の状態から6点のタイルを置いて、そのタイルを完成させた場合は -2x3 = -6点の処理が発生した後で6点の獲得となり、差し引き0点になります。

このことを考慮に入れると、どれだけリスクを取れるか、というのはどれだけ完成直前のタイルが存在するか、に直結します。たとえば場の残りタイルが2枚の状況で、次の5枚は自分から最初に選べるというとき、もし赤でも緑でも白でも6点タイルが完成するという状況であればある程度リスクテイクすることができます。4色中3色について、ワーストケースでもディスクの増減が-1枚で済むからです。

逆に、たとえば次の5枚は相手が最初に選び、かつこちらは白以外ではタイルが完成しない、というような場合には残りディスク枚数を高めに保った方がよいでしょう。このとき5枚のうち白が1枚しか出なければ(もしくは0枚であれば)、その1枚をカットされると自分の手番2回はディスクの残りが単調減少していく、という可能性も大いにあるからです。

実践譜

前の期のアリーナの最後の試合で、進行を振り返ってみます。

私が先手を取りました。山の上は青6点。ここはノータイムで青10を選択します。初手に垂直4方向10点を置けるのがまず強く、さらに緑6が残れば最高のスタートです。

0-0. ディスク21-17。以下、右が私です

そんなうまい話があるわけもなく、緑6はカットされました。残当。赤6点を取られるのが嫌だったのでとりあえず赤と青で向かい合わせにしておきましたが、ここの赤6は、青矢印を左に向ける形にして、白の手数を省略しに行く形の方がよかったかもしれません。この時のプランとしては、赤は不要なので2枚のうちどちらが残っても山から青6点を引き、青10点を先に完成させ、下の赤6点は手が空いたら、という感じで考えていました。ただしこの通りに進むと下の赤6点の完成がかなり遅くなります。

0-0. ディスク19-14

ただ、ここで引いた青6点が下の赤6点とシナジーの強いタイルだったので、赤6と青6を先に完成する形にプランを変更します。青10→赤6の順で完成させようとすると、赤6の緑と白を置くのに土台が必要となり時間がかかるのですが、赤6→青10の順だと余計な手数がかかりません。そもそも2手で12点+ディスク6枚回収できるのでこっちの方が圧倒的に得です。青6を上ではなく右に置くと、赤6も青6も白タスクが1手で置けない位置になるのでちょっと完成が遠い感じがします。

相手はその前のターンで引いた3点を、白矢印の先を重ねる形で置いています。これ以外に手数を省略する置き方がなさそう。今のところこっちが圧倒的に有利を取っています。

次のラウンド、山の上は緑3点です。緑2枚、白2枚があるので一応、相手の動きによらず上下の6点は完成できます。問題は、ここで来た白がどちらもそんなに嬉しくないこと。青10点の右に白を置くとなると、下手をするとどっちを取っても未完成で終わる可能性もあります。

0-0. ディスク16-10

相手のチョイスは白6点。青の必要枚数は増えますが妥当でしょう。白10をそこに置いてもタスクが一つも埋まりません。こちらは青1から入ることも考えましたが、相手に白10を取られると即座にタスクが2つクリアされ、それはそれで嫌なので白10でタスクを埋めに行きます。この時点で白3枚要求されているので、よほど白に恵まれない限り無理して白10を完成させに行く必要はないと考えています。

6-12, ディスク18-15

相手は青1で6点獲得。こちらは緑1で6点x2を獲得します。緑3点を取らないのは白4枚要求されても無理だし、それで相手の得点が1から3になっても問題ないだろという判断です。緑3あげるから山から緑3を引かないで、という祈りもこめて。

9-12, ディスク18-15

当然山から引かれました。初手緑6といい、結構ちゃんと見られています。私が緑を多めに欲しがっているのを見て取ってカットしに来られました。3点を即座に取る動きですが、ただこれで青6の完成が少し遠のいています。とはいえいい置き場がないのでやむ無しではありますが。ここで何を取るべきか。山の上は白6点。

9-12, ディスク14-12

相手が欲しそうな青6(左から赤白緑)をカットして、緑を上に置いたら白と赤のどちらでも点が出るようになるという形を取りました。すると相手は白10点を取ります。向こうは赤でタスク2つ取れるという形ですが、直接赤が置けない&相手にとっても完成が遅いので、あまり良い手ではないように思います。たぶん青6取った方がいい。とはいえ、白10のせいでこちらは相手に青6(緑白赤)を与えにくい形になってしまいました。相手からすると青6の完成があと一手になるうえ、赤が置けるようになってしまいます。そのため、これをカットしにいきます。

9-12, ディスク12-9

カット目的で取った左端青6がいい感じに右端青6や中央青10とタスクが重なっています。向こうが取ったのは緑3。緑の方がこちらの優先度が高い(青のタスクを潰せるうえ、赤と白両方でタイルが完成するようになる)のでカットされたのだろうと思いますが、赤が間奏曲に回される可能性を見越したのかもしれません。この瞬間赤いらないから。

こちらは山の白6には触らず、とりあえず完成させる気はありませんが赤3を取ります。白6取ったところで、白10の上に置くとしても左端に置くとしても、6通りのうちどの組み合わせでもあんまり嬉しくないんですよね。

9-12, ディスク12-7

山の上は緑6。ちょっと不穏な空気が漂っています。

9-12, ディスク9-5

相手は白6から入りました。これはあまりよくない気がします。白6緑6白10で青が最低3枚必要になっているので、右斜め上に置いて赤で完成する形にした方がよいでしょう。
一方私は白3をとって青10点のタスクを潰しに行きます。緑10点を取っても一生完成しなさそうだったことや、白3の白タスクが白10点の左上方向白タスクと重ねられること、あとはもし相手にラスト1枚で緑6点をカットされても、間奏曲スペースが3枚になるので仮に次のラウンドに緑がなくても間奏曲が埋めればそこから緑が取れるだろう、というようなことを考えていました。
あと相手が緑10置くとしたら右下だと思ってたんですよね。ちょっと完成が遠いと勘違いしました。いずれにしてもおとなしく緑10点でよかった気がします。

9-12, ディスク5-1

相手は当然の緑10カット。白10のタスクを潰せるうえに形も悪くありません。こちらはしぶしぶ赤10を取って2手で完成の形にします。

9-12, ディスク2-1

案の定、山から緑6を引かれました。相手は青矢印の先を右下緑6と重ねながら、緑10の餌にしています。右上に置いて赤で6点完成する形でもいいんじゃないかと思いますけども。どうせ白10死んでるし。

それはそれとしてこちらはちょっとよくない形になりました。山の上は白6。

16-13, ディスク2-2

とりあえず赤3で差し引き+1点とりながら赤10点を完成に近づけます。相手は青10で6点+1点獲得。青10の完成が左下緑6と競合してちょっと苦しそうですが、おそらくもう1枚の青10は私の盤面とシナジーが強いことを見ての選択でしょう。

間奏曲スペース

今、間奏曲3枚のうち緑が1枚だけ入っていて、この緑1枚に22点のバリューがあります。ここで青10を取って赤10を完成させると16-23。向こうに完成できるタスクがないため、間奏曲の緑は確実に持っていかれます。しかも次のラウンドも相手が先手なので緑が1枚以下ならまず取れません。相手目線だと、この瞬間緑をひたすらカットし続ける以外の選択肢がないはずです。

20-9, ディスク3-0

とりあえず減点を引いてでも間奏曲の緑を確定させた方がよいと判断し、青10をあと1手で完成の位置に持ってきました。ディスク2枚不足でマイナス4点です。相手の動きによっては山から引いた白6で左側白3点を完成させ、さらに減点2をくらう必要がありましたが、相手が6点を即座に完成させるムーブを選び11点差になったので、山の上から引いた白で青10を完成させることで間奏曲の先手をキープしながらさらなる減点も回避できました。

この動きで相手は青10も完成が厳しくなっています。かといって他にそんないい手もないんですが。

20-41. ディスク2-9。リプレイのバグで3点タイルの向きが変。

間奏曲の後です。山の上は赤10。相手の手番です。

23-44, ディスク0-9

相手の手番、青6がカットされるのはまあそうだろうなという感じですが、6点ではなく3点を完成させてきました。青6が左下緑6と競合するのを避けたかったのでしょうが、これで2点減点を引くのであればおとなしく6点取るのでよかったのでは、と思います。かたやこちらは赤3。白10が残るだろうという読みだったと思います。

34-44, ディスク4-5

白1を相手が持って行ったので白10を取りました。あと白1枚で13点出る形です。こちらは残り31点、そのうち29点(白1で13点、青1で10点、緑1で6点)は見えています。相手はまあ白とって緑6埋めて差を詰めるのかな、と思っていました。

37-44, ディスク2-5

相手は山から赤10点を引いてきました。確かにこれだと白赤青2で28点が見える、けど手数考えたら6点取った方がよい気もします。

間奏曲スペース、山

間奏曲スペースを見ると、赤が絶対取れるようになっています。これでプランが決まります。白6を取ると白10と白3が埋まり、赤がもう1枚あればこの白6が取れるようになります。なのであとは青1枚、山から緑1枚、間奏曲スペースから赤1枚で32点です。その場合、相手の加点は青青赤で22点+場のタイルから6点、となります。65-79になるのでラストターンで相手が白6点(赤緑青 or 青赤緑)を引いても2点足りません。

49-57, ディスク5-9

と思ったら私自身が違うルートを見ていました。+3点あればよいから、と青3で3点出しながら10点を確保。相手は青6で6点完成させながら6点即座に獲得。たぶん私はこの12点を見ていなかったと思う。

55-60, ディスク5-9

さらに青3カット。ここで間奏曲が白2枚になることが確定するので、緑と白であと19点取る算段です。相手は白置いて6点。

55-79, ディスク1-14

最後の間奏曲は赤10を上部に置いてあと1手で埋める形に。6点取った方がマシではと思いましたが、いずれにしても1手で17点取る方法がおそらくないので相手に勝ち筋はありません。結果65-79でした。
最初の方で「未完成で終わりそう」と思った白10点は案の定討ち死にしました。

ゲームを振り返ってみると、私の序盤の引きはかなりよかったのですが、やはり緑10を後回しにしたことでやや苦しくなってしまった印象があります。教訓としては明らかにリードしている試合でリスクを取る必要はなく、安定して得点を積むことに集中した方がよい、というあたりになりそうです。


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