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初心者のためのカタンガイド

はじめに

 最近カタンをはじめたという人が周囲に多くなってきたので、初心者のためのテキストを書いてみます。異常なプレイヤーが多いのでトラウマを持つ方も多いボードゲームですが、皆さんも一緒に異常なプレイヤーになりましょう。

基本的なこと

 今更ですが、カタンの目的は誰よりも早く 10 点を取ることです。ここで一度、カタンにおける得点行動を整理してみましょう。

最長交易路(道賞): 2 点
最大騎士力(騎士賞): 2 点
開拓地(家):最大 5 軒 = 5 点
都市:最大 4 軒 = 8 点
発展カードの得点:最大 5 点

 家を建てるには木、土、羊、麦が必要で、カードを引くには鉄、麦、羊が必要です。また、都市化には鉄と麦がいります。つまり、道賞以外の得点にはすべて麦が関わっていることがわかります。

 したがって、カタンにおいて麦は最も重要な資源です。海外 Youtuber の動画をみていると、よく "No wheat = Defeat" と言っています。「麦がないと死ぬ」のです(最近は "No ore = 7点", "No port = マイナス2点" という変型もあるようですが…)。

カタンにおける「戦略」

 こちらの動画では勝率の統計が紹介されていますが、すべての試合のうち、勝者が道賞を獲得している試合は約 50%、勝者が騎士賞を獲得している試合も約 50% を占めています (0:38~, なお勝者が両方獲得した試合は 14%)。逆に、両方とも獲得していない人間が勝った試合は 14% しかありません。

 つまり、7 試合のうち 6 試合は道賞 and/or 騎士賞を獲得した人間が勝っているのです。したがって、戦略として「発展カード(騎士)を取りに行く」「道を取りに行く」のどちらかを決める必要があるということになります。両方とれるケースもありますが、多くの場合は一時的な上振れによるものなので、本線は決めておいた方がよいでしょう。

 どちらも取れなくても 1/7 は勝てるんでしょ、と思われるかもしれませんが、1/7 のうち多くの試合ではカードからの点数を取得しているでしょうから、カードも道も無視して勝つ可能性はさらに低いものと考えられます。

 なお、一般にカード戦略よりも道戦略の方が高いプレイングスキルを要求される点については注意が必要です。慣れないうちは鉄麦羊へのアクセスが可能であればカード戦略の方がやりやすいでしょう。

 戦略によっては以下の点に留意すべきです(今からだるい話をするのでここから初期配置の項の前まで読み飛ばしてもOKです)。

・道賞狙いであれば、家は最大 5 軒までしか立てられないので、都市がないと最大 7 点で止まる(家 5 点 + 道賞 2 点)。したがって都市 2 軒が必要 = 鉄 6 枚が必要。

・騎士賞狙いは家が建てにくい場合があるが、発展カードからの取得ポイントにより必要な家の数が決まる。ポイントが4点あれば家を建てる必要がない(4 点 + 騎士賞 2 点 + 都市 4 点)。一方、ポイントが 2 点しかなければ家を1軒建てることが絶対必要になる。

・道・騎士・カードをすべて捨てて 10 点到達することも可能だが、都市は4軒までしか立てられないので、建造物を建てる場所が最低6か所必要になる(都市 4 軒 8 点 + 家 2 軒 2 点)。

 自分がどこから何点取る必要があるのか?というのはゲームの締めを見据える上で重要です。ここを見極めないと、途中までは調子が良くてもなぜか勝ちきれない、という事態が起こりがちです。

 そして、他人がどこから何点取ろうとしているのか?の見極めもまた重要です。詳しくは後述しますが、誰が一番ゴールに近いのかを分析することがこのゲームにおいて必須の作業となるためです。

初期配置

 このゲームにおいて最も重要な行動が初期配置の決定です。ゲームの半分以上が初期配置によって決まると言ってもよいでしょう。まず、前項の戦略を踏まえた上で、初期配置を考えるときに必要な要素を挙げてみます。

1. 数字

 当たり前ですが、6, 8 が強く 2, 12 が弱い。6, 8 は 2, 12 の 5 倍出やすいのです。それぞれの数字が出る確率を X/36 として、下記のように定量化することが可能です。

 6, 8: 5p
 5, 9: 4p
 4, 10: 3p
 3, 11: 2p
 2, 12: 1p

 要は、6, 8 は 5/36 の確率で出るよ、という話です。この文章の最後に紹介する書籍では、このポイントと以下に示す要素によって強さを定量化することを推奨しています。なお数字だけ見る場合は 5-6(8)-9 が最強の組み合わせです。

2. 資源の組み合わせ、バランス

 相性の良い資源の組み合わせ、というものがあります。木と土、麦と鉄(と羊)です。これらは必ずセットで使用されるためです。

 資源のバランスもまた重要です。たとえば木 6 と土 3 を持っているとすると、木と土が 1:1 で消費される関係上、絶対に木が余ります。そうなるともう一軒土が出る土地がほしいな、となります。カード材の組み合わせは、鉄:麦:羊の比率が最終的に 10 : 9 : 8 くらいの生産量になるのが望ましいです。鉄と麦は都市化で多く消費されるためですね。

3. 資源のレア度

 カタン島の 19 枚のパネルのうち、木と麦と羊は 4 枚あるのに対し、鉄と土は 3 枚しかありません。したがって、一般的に土と鉄は不足しがちです。さらに鉄 3 枚の数字が 2, 8, 11 だったりすると、鉄 8 にアクセスできないプレイヤーは鉄を入手する手段が極めて限られることになります。

 そういう島では、鉄の価値が上がります。希少な資源を持つことで交渉を優位に進めることができるので、そのような資源を入手しておくことが望ましいといえます。なお、ゲーム後半には他のプレイヤーが港を入手する関係上、資源の希少性の重要度が下がっていくことには注意が必要です。

4. 港

 基本的に 3:1 港は強いです。どんなにバランスの良い配置でも、短期スパンで見れば必ず偏りが発生します。余剰資源の処分手段として 3:1 港があるとないとでは速度が大きく変わります。したがって、初期配置で港へのアクセスが不能な配置はそれだけで減点要素です。初期配置で 1 軒目を中心部に置く時は特に要注意です。あと、過剰な資源がある場合は専門港も視野に入れましょう。

5. かぶり目

 たとえば、木と土は 1:1 で消費されます。家を建てるにしても、道を伸ばすにしても、木と土は 1 枚ずつ用いられます。こういう資材の出目が揃っていると幸せになることができます。

 木 5 と土 5 が取れたら 5 が出るだけで道が伸びるというように、同じ数字の資源が重なると、交渉手段として使えなくなるものの必要なときに必要な分だけあるのが強いのです。麦と鉄も、必ず 1:1 で消費されるというわけではないですが、家の建設以外ではセットで使用される資源なので、出目が揃っていると幸せになれます。

 逆に、たとえば木と羊の出目が揃っていると強いかというと、専門港があれば別ですが、等量で必要とされない資材が 1:1 で入ってきて嬉しいんか、分散が上がるしバーストリスク高めるだけじゃん、とか個人的には思います。とはいえここは意見が分かれるところかもしれません。

6. トレードパートナー

 たとえば木が大量に出るが土が出ない人がいる場合、土を大量に入手できるように配置すれば、別に木がなくても交渉で入手できるので道材には困らなくなります。

7. 次に家を建てられる場所

 初期配置の 1 軒目で鉄 6、麦 5 にアクセスできたとします。2 軒目で羊 3 にしか触れられないとしたら、そこに置くべきでしょうか?必ずしもそうとは限りません。初手で羊に置けなくても、そこから道を伸ばして家を建てることで羊を取ることができれば、カード戦略に行くことが可能です。道戦略の場合は、さらにその先の土地まで見たほうがいいこともあります。

8. すべての資源に触れるか

 一応要素として挙げてはいますが、5 色へのアクセスは必ずしも重要ではありません。自活できることは重要ですが、ゲームプランが立つのであれば必ずしもすべての資源を押さえる必要はありません。

 たくさん挙げましたが、慣れると無意識にできるようになります。以上は一般論ですが、手番によっては下記の点をさらに考慮します。

1 番手

 1 番手でまず重要なことは、とにかく強い場所を取ることです。いちばん強い場所を押さえないと 2 番手が強くなりすぎるという問題があります。

 また、「今しかアクセスできない資源」も考慮する必要があります。出にくい資源は2軒めの配置ではまず残らないので、その資源にアクセスする必要が本当にないのか?ということを考えなければいけません。

 逆に、2 軒目の配置で絶対にとれる資源を後回しにすることも考慮する必要があります。鉄が潤沢に出る島で、絶対に 2 軒目で鉄をとれると踏むのであれば、1 軒目では羊と麦の強い場所をとった方が良いかもしれません。

 なお、1 番手が道戦略を選ぶと不利になりがちです。2 軒目に道戦略をとりやすい場所が残っているとは限らないので。ただし、1 番手しか土に触れない、といった島だと話は変わります。

2 番手

 2 番手も強い場所を取ることが基本ですが、3, 4 番手の動きが1番手に比べてわずかに把握しやすいので、2 軒目としてどこが空いているかについてはより強く意識する必要があります。

 なお、たとえばまともに鉄が出るのが鉄 8 だけだというような場合に、1 番手が鉄 8 を取っていたら、鉄 8 上で 1 番手のちょうど反対側(3 マス離れた対面)を取ると 3 番手も 4 番手も永久に鉄 8 にはアクセス不能になります。ただし、こういったやり方が本当に強いかどうかは盤面ごとの検討が必要です。強い資源は 2 人でシェアするよりも 3 人でシェアした方が防御が強くなる(盗賊を置かれにくい)という利点もあるためです。

3 番手

 4 番手がどこに置くかを当然意識するのですが、1, 2 番手の戦略を考慮に入れる必要があります。たとえば、1 番手, 2 番手がカード戦略に寄っており、かつ配置が強い、となるとカード戦略で対抗するのは難しいため、道戦略に寄せていく方が強い場合もあります。

4 番手

 自分の置く場所によって 1~3 番手の 2 軒目の動きはほぼ確定するので、相対的に自分が強くなる場所を選びます。こちらも戦略のバッティングを避けるのが有効な場合があります。

 2 軒とも自分で好きなように選べるので、道戦略を一番やりやすいのが4 番手だったりします。道戦略ができる場所がそもそも残っていない、というのもよくある話なのですが。

海岸から 1 マス目 vs 2 マス目

 その他、細かい話にはなりますが、海岸から 2 マス離れた場所よりも、1 マス離れた場所に配置する方が多くの場合は安全です。理由は下記の 2 点です。

 ・ぶっ込み(港の直上など、資源が2枚しか接していない土地にダイレクトに配置してくる)を避けることができる。端から2マス離れるところに置くと港の直上などに置かれる可能性が残る。
 ・初期配置のあとに最初の家を建ててから、もう 1 軒が道 1 本で建つ(端から 2 マス離れると、多くの場合 2 軒目は道 2 本ないと建たない)。

 ただし、たとえば鉄 6 の 4 時・6 時・8 時の方向が海岸で、2 時と 12 時と 10 時の方向が強い、という場合、12 時の方向に配置することで 2 時と 10 時の位置を両方置けなくする、という戦術がありえます。このような時、道を 2 時に向けると 4 時方向へのぶっ込みをされやすい、という点には注意が必要です(人は他人の道を 1 本潰すことをアドバンテージと見てしまうので)。

どっちに道を伸ばす?欲張るか、安定か

 また、初期配置で道を伸ばす方向については、中心部よりも海岸または砂漠の方向に道を伸ばす方が安全です。中心部に向けると道が無駄になる可能性が高いためです。特に、カード戦略では道が貴重になりがちなので欲張らない方が安定します。ただし、1 番手の 2 軒目の家配置時に真ん中が誰も道を向けない空洞になっている、など道を中心部に向けたほうがいい場面ももちろん存在します。

道戦略固有の配置

 道戦略では、家同士のあいだを 2 マスあける配置が強かったりします。間に家を建てることができず、後手番の選択肢も少なくなるためです。まれに他プレイヤーが間を縫うような道の配置をする、という大事故が起こる可能性については注意が必要ですが。

プレイング

 基本的に拡大再生産のゲームなので、序盤は生産力を上げ、中盤~後半はエンドゲームを見据えた行動をとります。戦略ごとのムーブは下記のようになります。

道戦略 - 全体の流れ

 基本的には道と家を増やして、都市を建てるのに十分な生産力ができたら都市を建てて家を追加して、という流れになります。道賞 2 点 + 都市 2 軒 + 家 4 軒が 10 点の目安になります。都市化が一番のハードルになりがちなので、初期配置の時点で鉄の入手手段については気にかける必要があります。

 道戦略の難しいところですが、まずカードとは違い手順のブレが発生しにくいので、初期配置の時点で 10 点のプランを見ておく必要があります。したがって、ゲームプランに対する解像度の高い人間とそうでない人間の間には歴然とした差が発生します。カード戦略はやることがある程度明確であり、かつカード運が発生することから道戦略ほどの差が発生しにくいのです。

道戦略 - 序盤

 序盤では、いま道を確保しないと絶対に道賞を取れない、という場合を除いて道賞を取りに行く必要はありません。初心者に睨まれるだけですし、何より生産力向上の方が優先です。道賞をいつ確保するのかが重要ですが、「誰かが道を最大瞬間風速で獲得したら終わる可能性がある」となる前には最優先で確保します。突然死して 4~5 点で終わるリスクを防ぎましょう。

道戦略 - 中盤以降

 7 点までは最初に到達できる場合も多いので、初心者が点数だけ見て殴ってくる、というパターンが発生しがちです(盤面によっては正しいのですが)。これについては現在の点数ではなく、10 点までの速度に基づいてテーブルトークを展開することが重要だと考えます。鉄の出ない配置だと、3:1 港を使っても都市 2 軒 + 家 + 道 2 本で資源が 30 枚必要ですが、カードプレイヤーは多くの場合そんなに資源を必要としていないはずです。

 また、道戦略 2 人 : カード戦略 2 人、または道戦略 1 人 : カード戦略 3 人とわかれている場合には、カード戦略側で一番弱い人間(都市がない、など)にカードを引かせに行くことが重要です。カードを引くべきなのに引かない人間がいれば引きに行くよう仕向ける必要もあります。カード独走はこのゲームにおいて一番の脅威となるためです。

道戦略 - カード、買っとく?(内容を全面的に変更しました (2/11))

 なお、道戦略においてカードは必要か?というのは一つ問題となります。特に、序盤に(盗賊が持ってきてしまった、など)鉄が一枚浮いている、というような状況でカードを引くべきか否か。

 この文章の最後に紹介している書籍においてはこう書かれています。「いかなるプレイヤーも家 + 都市が 5 点になればカードを買うべき。ただし、騎士賞を絶対に取れないとわかっているのであればその限りではない」 また、とあるカタンの有名プレイヤーもどこかで「資材が家 0.5 軒、都市 0.5 軒分と考えると安易にカードを買うべきではない」という内容の記事を書かれていた記憶があります(申し訳ないのですがちょっとうろ覚えです)。

道戦略 - 何がほしくてカードを買うのか

 個人的には、カードを買うかどうかは場合による、としか言いようがないのではないかと考えています。

 ここでひとつ仮定をおいてみます。もしあなたの土地に鉄がまったく出ないのであればカードを引くべきかどうか。この場合、将来的に都市化が一番のボトルネックになることが予測されます。カードを引かない場合、都市化は2軒必要です。

 ここで引くとうれしいカードは何でしょうか。まず、点数があれば都市化は1軒でよくなります(道賞 2 点 + 家 5 軒 + 1 点 + 都市 1 軒で 10 点)。その他、独占も結果的に都市化に寄与します。そう考えると、25 枚中 7 枚はスコアのみを見れば少なくとも鉄 3 枚分の働きをするわけです。

道戦略 - カードを確率とリスクで考える

 したがって、カードを引くかどうかというのは、鉄を 3 枚消費して確実にゴールに近づくか、7/25 = 3.6 分の 1 の確率でゴールに近づくかの選択である、ということになります。独占を使えば鉄 3 どころではないので、2/25 = 12.5 分の 1 の確率で鉄 3 枚以上の働きをすることを考えると、賭けとしてはそこまで悪くないようにも思えます。

 また、鉄のソースが 4:1 交換しかない場合、その鉄が活用されるまでには時間がかかることになります。すぐ家を建てるというのであれば資材を取っておくべきですが、もし、直近で家を建てることができず、かつ羊・麦が手札に重複しているのであれば、1 枚浮いた鉄でカードガチャをやることはそこまで悪い手でもないように感じられます。

 逆に、2 : 1 交換等により鉄を入手する手段があるのであれば、都市化に向かったほうが安定します。カードを引くリスクは、鉄を消費したあげく騎士が中途半端に入手されることです。特に、自分の方が 10 点に早く到達できると考えるのであれば、不必要にリスクをとる必要はありません。

 なお、後半になるとさらに話は変わります。カードの山に点数またはキーカードの濃度が高くなっている場合、あるいは他人の 10 点到達が近づいているためにこちらの詰めが間に合わない場合など、リスクを取るべき場面もあるでしょう。

道戦略 - ポテンシャルを比較する

 最後に、道賞の確保に重要な点として、自分と相手は最大何本まで伸ばせるか?とその経路について考える必要があります。最大で伸ばせる本数が相手の方が多ければ、必然的に短期決戦を強いられ、時にリスクを取ることを余儀なくされる点には注意が必要です。いま道賞を奪われると一生取り返せないという場面がいつか発生するため、そこで勝ちに届かないのであればカードを引きに行くなどの選択肢を考慮する必要があります。

道プレイヤーを相手にする

 逆に、相手が道を伸ばしている場合ですが、道戦略がひとりしかいない、かつ鉄麦のソースがあるとなるともうこれは全人類の敵です。カードで競っているときですら、最優先で盗賊を置く必要性を考慮すべきです。道戦略の対抗馬がいれば、道材をガンガン支給しましょう。逆に、鉄のソースがなく、港もないような相手がひとりで道をやっているのであれば、トップを走っていても放置という選択肢がありえます。

カード戦略 - 全体の流れ

 ゲームの流れとしてはさっさと都市化してカードを無限に引きに行くだけですが、都市化すると交渉が難しくなることや、睨まれて盗賊を置かれがちになることから、まず家を 1 軒建ててから都市化する方が良い場合もあります。2 軒目の都市化については、それが本当に必要なのか検討が必要です。都市化 2 軒はさすがに多くの場合に殴られの対象になってしまうので、騎士を引いてからのほうが良いかもしれません。特に、鉄麦羊ぜんぶ触っている都市がある場合には、2 軒目の都市化の優先度は下がります。

 理論上、最小の枚数で 10 点に到達できるのはカード戦略なのですが、上振れすることがある一方で事故が起きる可能性もあります。とはいえ、プレイングスキルが比較的要求されないため、まずはカード戦略で戦えるようになることが上達の第一歩です。なお、先に挙げた Youtube の動画では、鉄がよく出る盤面、木や土が薄い盤面においてカード戦略の勝率が高いと示されています。また注意点として、初期配置で鉄麦羊にリソースを全振りすると、木や土が入る場合と比べて勝率が割と下がるようです。おそらく家が建たない=港が手に入らないことによるものかと思います。

カード戦略 - 序盤

 カードをいつ引きに行くのか?逆にいつ都市化するのか?というのが難問ですが、相手よりカード生産力が明らかに高いと踏めばすぐに引きに行きましょう。生産力を無限に高めている間に騎士が 2 枚 3 枚とめくられて追いつけない、というのはよくある光景です。逆に、カード生産力で負けているのであれば、やるべきは都市化です。

カード戦略 - 中盤

 これはよくある事故ですが、都市化は 2 軒できている、家がまだ立っていない、騎士はもう 4 枚引けている、点数もないしカードを引き続けるか…と思っていると騎士がトータル 7 枚になった上に得点も増えず家も建たず…このような事態を防ぐために、騎士賞が確定したら多少無理してでも家を建てに行った方がいい場合もあります。残りカードの山に何が入っているのかについては大まかに計算ができるので、街道建設や点数を引ける可能性が高いと踏んだなら引き続けるのもありですが。

 周りのプレイヤーは、あなたの伏せカードを 1 点として計算します。そのため、戦略に関係ないカード(街道建設など)は早くめくってしまって自分の脅威度を下げた方が身のためです。

カード戦略 - 余談

 余談ですが、ある日、都市がない状態で鉄麦羊が 4 枚ずつ揃っているプレイヤーがいました。周りはそれほどカードを引けていません。何をするべきでしょうか。そのプレイヤーはカード 4 枚購入を行っていましたが、個人的には多くの場合に都市+カード 1 枚の方が強いと思っています。4 枚あっても 1 ターン 1 枚しかめくれないので、当分ターゲットが自分に向かうこと、そしてまずは生産力の向上が至上命題になることがその理由です。

 余談その 2 ですが、ターン内でカード購入+建設ができる場合はまずカード購入からです。TCG における先ドロー警察みたいなことを言ってますが、たとえば道伸ばしてから街道建設引いたらどうすんのとか、その 3:1 交換はカードの内容によっては不要かもとかそういう話です。前段のプレイヤーはカード 4 枚を一気に引いていましたが、これも 1 枚ずつ内容を確認してから次を買う、の方がベターです。内容によっては、次のカードを買わない、という選択肢が出ないとも限りません。

 余談その 3 です。発展カードに騎士が 14 枚入っているため、7 枚使用すると騎士賞を取られる可能性はなくなります。3 人目のプレイヤーが 2 枚引いたりすると、騎士賞のロックに必要な枚数はさらに減ります。

道もカードもなしで戦えるのか

 木・道は多少出る、初期配置が分断されている、羊が出ない、といった配置だと道・カード両方放置で盤上 10 点を目指すのが一番早い可能性があります。

 ただし、この場合は他のプレイヤーが道 2 点と騎士 2 点を持っていってしまうので、それよりも本当に早いのか?については慎重に検討しなければいけません。また、道の対抗馬がいなかったりカードの対抗馬がいなかったりすると、道・カードのプレイヤーは本当に楽をしてしまい、他プレイヤーを加速する効果が生まれます(騎士 3 枚めくったけど、騎士 2 枚の人間がいるからもう 1 枚買っとくか…をやらなくてよい)。また、この戦略も目立つと殴られの標的になりがちです。

どの戦略を選んだとしても

 いずれの戦略においても一番重要なことは、このゲームは 10 点までのタイムを競うレースであるため、誰が 10 点に一番近いかを意識することです。誰が一番得点を取っているか、ではありません。データの出どころは伏せますが、「現在の点数」基準で考える人間は勝率が 4 割を超えない印象があります。

誰が 10 点に一番近いのか?を考える

 一番わかりやすいのは道だけでやっていっているプレイヤーです。家が 5 軒建っていて、道賞があるのであれば、あとやるべきことは都市化 → 家 → 都市化(またはカードから 1 点)となりますし、資源や港の状態から都市化のしやすさもだいたい判断できます。

 一方で、わかりにくいのは未使用のカードを持っている人間です。昔から持っているのであればおそらく1点である可能性は高いのですが、その他に独占や街道建設(による一時的な道賞取得による勝利)といった可能性を考えなければいけません。わからなければ一番高く見積もって、たとえばあと2点必要だとしたら家は必要なのか、都市化だけでいけるのか、カードは何枚必要なのか、家や都市は簡単に建つのか、と考えます。

 なお、盤面分析は毎ターン更新しなければいけません。あの人が勝っている、で思考を固定させると別プレイヤーにぽっと追い抜かれることがよくあるのがこのゲームです。

テーブルトーク

 相手を見てやりましょう、の一言に尽きます。私のようにガタガタ言われるとうっせえ盗賊置くぞとなるプレイヤーもいれば、強めに押されると言うことを聞いてしまうプレイヤーもいます。基本的には勝っているときは黙っている方が得ですが、事実と異なるトークによって不利な状況に追い込まれるのであれば反論すべきです。「誰が 10 点に一番近いか」という考え方は、議論のためにも必要です。

交渉

 まずこのゲームは基本が 4 人戦なので、交渉を達成するほど交渉外プレイヤーに差がつくことは認識すべき点となります。また、その交渉によって相手は何を達成するのか?を常に考えなければいけません。単に自力で出ない資源を将来のためにキープしておきたいのか、このターンで都市を建てたいのか、etc.

 それと同時にレースゲームである以上、交渉を受けるかどうかの基準は「他プレイヤーと自分のどちらが 10 点への距離を縮められるか」です。もし仮に自分の方が早いのであれば、二人とも同じ距離を進むような交渉は受けるべき、となります。逆に、相手は都市が建つが自分は道一本、という交渉は受けない方が得です(自分が受けなくても他人が受けてしまう場合があるのが悲しいところですが)。ただし、こちらにとって道がクリティカルであったり、向こうに都市が建ってもそれほど驚異ではない、という場合など、それでも受けた方が良い交渉は存在します。

 もう一つ注意が必要な点として、カードをたくさん持っているプレイヤーとの交渉は慎重になるべきでしょう。カードが多ければ選択肢も多く、1 ターンで多くの成果を与えがちです。家にしてすぐ都市にしますしあとカードも買います、とかやられたくないですよね。また、手番プレイヤーの方が非手番プレイヤーよりも交渉後の資源利用にリスクがないため(バーストしたり奪われる危険がない)、交渉レートに反映させるべきです。相手の手番において、こちらが 2 枚、相手が 1 枚というような交渉は基本的には避けたほうがよいでしょう。

お前の言っていることは正しいがお前の言い方が気に食わない

 あと言い回しの話なんですが、「〇〇出せる人いますか?」より「〇〇いる人いますか?」の方が強い交渉ができます。カタンの交渉に限らず、こっちの弱みを見せると立場が弱くなります。強気の 2:1 交換を仕掛けましょう。  

交渉の順番

 最後にもう一点、交渉において重要なことは、必ず購入の前に交渉を行うことです。たとえば、手の中に木 1 枚、土 3 枚、羊 1 枚、麦 1 枚があったとします。道を 1 本のばすと手の中が土 2 枚、羊 1 枚、麦 1 枚になるので、土と木を交換すれば家が建ちます。ただ、ここで交渉を行おうとすると「は?家建てたいんでしょ?誰が交換するかよ」となるので、道を伸ばす前に土と木を交換してから、道 + 家ムーブをかます方が成功率が高いのです。

4:1 交換

 手札が 8 枚で自分のターンを終えた場合、次の自分のターンまで 7 が出ず無事に切り抜けられる可能性は (5/6)^4 = 48% なので、5 割の確率で破滅することがわかります。目安としては 7 枚以上資源があれば使ってしまうのが良いでしょう。

 というのが一般的に言われる話ではありますが、じゃあ 4:1 交換で潰すのか、というとそれもまた一考の余地があります。たとえば 8 枚ある時に 4:1 交換すると 5 枚になります。5 割の確率で 4 枚減るのと、確実に 3 枚減るのとどっちが偉いのか、という話です。しかも、1:4 交換したあとは必要なカードが濃縮されるため、盗賊で抜かれる可能性も上がるのです。

 自力で出せない資源を 4:1 交換で出すのは良いとしても(交渉で出ないかどうかはまず確認すべきですが)、自力で容易に出るような資源を 4:1 交換で捻出するのは慎重になるべきでしょう。バーストによる精神的ダメージは回避できても、期待値的には損である場合も多いのです。

盗賊配置

絶対に置くべき場所、置くべきタイミング

 第一の原則として、盗賊を置くことで勝ちが確定する場所があるのならば、絶対にそこに置くべきです。あと家 1 軒で勝利、しかし木と土と羊はあるが麦 1 枚足りない、という時に手札がすべて麦のプレーヤーがいれば、そこに置かない理由はありません。

 応用として、上記の状況で麦しか持ってないことがわかっているプレーヤーがいて、かつ騎士を持っている場合は必ずサイコロを振る前に麦を奪いましょう。仮に資源が7枚でも、です。サイコロを振った後では必ずその資源が奪えるかどうか確定しませんし、木と土と羊と麦が揃っていれば、バーストしても4枚とも残ります。

 このケースをもう少し応用すると、手元に資源が8枚あり、鉄3枚と麦2枚がある、というケースでも、もしこのターンの都市化が必須なのであればサイコロを振る前に騎士を使うべきです。8枚からバーストすると手札が4枚になりますが、9枚からバーストすると手札が5枚になるので都市化用の資材を残すことができます。

騎士カード、振らずに打つか、打たずに振るか

 さらに細かいことを言うと、私は手札が 8 枚以上の時、奇数枚なら手番前に騎士は打たず、偶数枚なら手番前に騎士を打つことが多いです。小数点以下切り上げのルールを考えると、バースト時に 1 枚得するためです(得するのは奇数のときだけで、偶数枚のときはどっちで打っても変わらないんですが、8 枚中 4 枚廃棄するよりも 9 枚中 4 枚廃棄する選択肢の広さを見てます)。

 ただしこれも絶対のルールではなく、たとえばクリティカルなところが押さえられているときにわざわざ盗賊を動かしてやる義理はありません。なお、この文章の最後に紹介している書籍では「騎士はサイコロの後に打つべき」とあります。7 が出た時にいちばん重要な場所を押さえられなくなる、というのがその理由ですが、特に盗賊が自陣にいるのであればこのターンにおける機会損失と天秤にかけるべきでしょう。

盗賊で止めるべき資源、止めるべき人間

 もう少し実践的な例として、次のケースを考えてみましょう。

 あなたは木がたくさん出ますが、土は出ません。土が欲しいので、土がたくさん出るプレイヤーの土を盗賊で止めることにしました。

 実はこれは不正解です。土を止めると土の交渉レートが上がります。運良く相手から土を抜けるかもしれませんが、そのために土を止める必要はありません。止めるべきは木です。木を止めれば木の交渉レートが上がります。そして、市場に土が余るようになるので土の交渉レートが下がります。もしほしい資源があるなら、その相補的な資源を止めるべきです。

 誰を止めるか、については、欲しい資源があるからといって下位プレーヤーを止めるのは基本的にはおすすめしません。一言でいえば徳が低い、またはカルマが貯まります。不必要にヘイトを買わないことがこのゲームにおいては重要であり、また同時にトップの独走を許さないことも必要です。

 止めるべき候補は主に2つです。トップ目、もしくは騎士または道の対抗馬です。そのどちらを止めるべきかは盤面にもよるため、一概に言うことができませんが、とりあえず早すぎるプレイヤーがいれば最優先で止めることになるでしょう。

人の嫌がることを進んでやろう

 それでは、たとえばトップ目に盗賊を置く時には何を考えるべきでしょうか。相手が何をほしいのか、何で得点しようとしているのかを考慮する必要があります。「今日は 5 がたくさん出てるから 5 を止めよ~」とか「今回は 6 羊 がぜんぜん出ないから放置でいいや~」とかそういう話ではありません。逆です。

 たとえば鉄が連続して出ていたら、相手がほしいのは麦ですね。あるいは、鉄と麦が大量に出ていたら羊がほしいかもしれません。止めるべきはそういう資源です。もし相手が道をどうしても必要としているのなら、まずは木や土を止める必要があります。脳死で麦や鉄を止めるのはやめて、人の嫌がることを進んで行いましょう。

宗教上の理由で

 なお、序盤においては「嫌われたくないので、平等に盗賊を置いていく」という宗派があるのですが、個人的にはおすすめできません。それは単に初期配置の強い人間が得をするだけなので。嫌われたくないからという理由でデッドプレイヤーに盗賊を置くとか何考えてるんだ?ポジショントークだろ?とか思います。序盤は資源でなにかできそうな人間または明らかに強い人間を全力で叩いていく必要があり、拡大再生産のゲームで序盤のリードを許すのは即負け筋に繋がります。

 あとはジャスト 8 枚のプレーヤーに置くのもデメリットがあります。次ターンのバースト可能性がなくなるんですね。

騎士以外のカードの使い方

街道建設

 序盤に引きたいカードナンバー 1。家材が揃ってから使う方が吉。先に使うとみんな交渉を受けてくれなくなります。発見あるなら別ですが。

発見

 資源 3 枚で購入したあげく 2 枚しか資源が出ないので一般的にハズレと言われがちなかわいそうなカード。道材出ないプレイヤーだと言うほどハズレでもないんじゃないかと思う。あとバースト危機の時に影響受けないの割と偉いと思ってます。

 価値の高い資材を必要な時に出すのに使えばいいんじゃないかと思いますが、後半は早めに吐いた方がいいかもしれません。それ 1 点だろハーけしからん、みたいに見られるのダルいので。

独占

 当たりです。後半なら 1.5-2 点に相当します。独占 2 枚引いて負けたら逆に恥ずかしいレベルです。

 序盤でも生産力でアドバンテージを取られているのであれば使うべきでしょう。重要なのは相手のカードのトラッキングです。ちゃんと意識していないと、独占羊!羊 2 枚ゲット!みたいなことになります。そして独占した後に何ができるのか、を考えることが重要です。

 もし独占したい資材があったら盗賊で止めないようにしましょう。相補的な資源を止めると独占したい資源が余ってくるので有効です。交渉で鉄を吐いたあとに鉄独占、は一応ルール上認められる振る舞いですが、徳が低いので私はやりません。二度と会わない相手ならやるかも。

独占(打たれる側として)

 こいつ独占使おうとしてるな、という仕草があります。たとえば資源の山の厚みを確認しだすとか、資源のトラッキングを始めだすとかです。その他にも、カードが売り切れ寸前になっていて独占を打たれていないのだとしたら誰かが独占を持っていることになります。こういう場合は、余剰の資源をあまり多く持たないように意識する必要があります。独占のケアは一応可能なのです。

得点

 序盤に引くとハズレ、後半に引くとラッキー。使い方ではないんですが、伏せたカードの内容を確認する時に 3 枚中 2 枚だけ確認する、とかやめた方が良くて、残り 1 枚が得点だとわかっていてもそれも確認したほうがいいです。あ、確認しないんだな、得点だなってばれる可能性があります。

さらなる学習のために

 日本語で良質な Youtube のコンテンツを探すのが難しいため、英語のプログラムになりますが、"DyLighted" がおすすめです。特に、"CATAN CLASS" (1, 2, 3, 4) は一見の価値があります。自動字幕でもだいたいの内容は把握できるはず。

 書籍では Charles Tetrault "Catan: Winning Strategies and Tactics: How I learned to stop worrying and love the 'Robber.'" が名著です(日本語の書籍がそもそも存在しないんですよね。私の調査が甘いだけかもしれませんが)。

 とはいえやはり一番重要なのは実戦経験を積むことです。オンラインだと交渉やテーブルトークに限りがあるので、可能であればオフラインでプレイしましょう。

おわりに

 こんなクソ長い文章を最後まで読んでいただいて本当にありがとうございました。この文章によって一人でも異常者が増えれば望外の喜びです。

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