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ハリケーン対応に見る政敵バイデン大統領と共和党知事


米南部フロリダ州からノースカロライナ州にかけて猛威を振るった大型ハリケーン「イアン」。7日時点での死者数は少なくとも119人に上り、予想される保険支払い額がフロリダ州だけで530憶ドル~740憶ドルに達するなど最大規模の被害をもたらした。一連の対応を巡りバイデン大統領は上陸前から政府の全面的な支援を約束、FEMA(米連邦緊急事態管理局)と連携し指揮にあたるなど非常時の指導力を印象付けた。

一方、フロリダ州のデサンティス知事は次期大統領選でトランプ氏と並び共和党の指名候補となる可能性が噂される保守の急先鋒で、政権批判の旗頭的存在。大統領にとりいわば政敵にあたる。これまで、コロナ禍におけるCDC(米疾病予防管理センター)のマスク着用義務に反発し州内の学校での着用を逆に禁止する州知事令を発令したり、低学年のクラスでLGBTQなど性的マイノリティーに関する話題を取り上げることを禁止する法を成立させるなど保守支持層を意識した政策を実施。直近では、政府の対移民問題の無策ぶりを示すためとして、ベネズエラからの越境移民約50人を東部マサチューセッツ州の島に移送。同島はオバマ前大統領も別荘を持つなど民主党の富裕層が多く暮らすことで知られ、わざわざテキサス州の移民を目的を告げずにチャーター機で移送したことから、人命を政治の駒に利用したとして問題となったばかりだった。

災害時に政治を持ち込まないのは暗黙のルールであり、バイデン大統領は「惨事において我々は分裂を超え一つになって互いを助け合う」などと度々発言し協調性をアピール。デサンティス知事と何度も電話で対応を協議したことを明かし、5日には実際に現地を訪問。被災状況を確認した後、知事と握手を交わし並んで記者会見を行った。この場で大統領は「これはアメリカ全体が一つになって乗り切るということだ」と話し、知事も「地元自治体から州政府、大統領までが一体となってのチームによる努力だ」と返すなど公的には共に協力体制を強調した。

しかし、同知事は2013年の元下院議員時代に、今回と同様大きな被害をもたらしたハリケーンの被災地が民主党が主流の東部ニューヨーク、ニュージャージー両州だったことから連邦政府の災害給付法案に反対を投じた経緯があり、自州の被災時には特別に災害給付金を要請する姿勢に民主党から揶揄する声が上がっている。また、フロリダ州選出の共和党議員らは民主党が主導するFEMAの予算付け自体に反対しており、両党の対立は災害時においても変わらない。さらに、知事はニュージャージー州をはじめ民主党の主流州からの救援ヘリコプターの派遣申し出を断ったとも伝えられる。公の場で一丸の体制を見せた大統領と知事だが、1カ月後に迫った中間選挙、2年後の大統領選を前に思惑が交差する。

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