かしこく生きる奴

私は外資で業務を担当する人間だ。
50過ぎている。
一人36で頭が良い男が営業でいる。
裏表があるヤツだ。

子供が若いのに4人もいる。
子供の為にももっと真直ぐ生きろ!と年上の私からしてみれば
そう思う。しかし、この会社に来て3年。
裏表のある人間は、そういう人間なのかもしれないと言うことに
最近気が付いた。

やつの上司は60近い。もうすぐ定年。
昔流の男で『俺の時代の頃は何々』と昔の自分を自慢するタイプ
女性ひいきで、他のできないぶっさいくな女営業と出来ている噂だ。
だからヤツは昇進がしにくいと言われている。
しかし、周りはヤツの方が仕事が出来ると認めている。

そんな中、ある時ヤツが女営業の悪口を言っていた。
酒の入った席で『ほんとうですよ、ぶん殴ってやりたいですよ。』って
この女営業は質が悪く、絶対に絡みたくない人間である。
ヒステリックで、被害妄想で、何か反する事を言うと、すぐに上司を
CCに入れてきたりする。忙しい上司はふつう出てこないが、この女営業が
文句を垂れるとCCに入ると速攻で我々を攻撃してくる。尋常じゃないくらい。その語り口が女営業にも受け継がれているのか、人がいらっとするような意見を毎回のように言ってくる。
だから周りからも嫌われているし、厄介者だと思われている。
空気が読めないタイプで、人を傷つけるタイプだ。

一見そんなカップルたちの横にいるヤツはそれ程悪くは見えなかった。
入社したばかりの私はそんなヤツを救おうと人事に女営業と上司に対する周りから出ている数々のクレームを伝えた。私が初めてじゃない。何度かクレームされている二人だ。
しかし、権力のある上司はそれらを握りつぶしてきたらしい。
今回もその上司が握りつぶそうとヤツを呼び出して犯人探しのような事を伝えたらしい。
その翌日、ヤツはその状況を伝えてきた。そして、『私を一切あなたたちのグループに加えないでください。』という。

逃げたのだ。上司が怖くなって逃げたのだ。
まぁ子どもが多いし、生活がかかっている。しょうがない。

別の日、我々が忙しくヤツが頼んでくる仕事が中々出来ない。と伝えると
別の仕事に携わる30年勤務の先輩に頼めばいいじゃないですか?と言ってくる。私としては先輩には中々頼みづらい。技術肌で聞く分には教えてはくれるが、彼からは決して教えてこようとはしない。こちらがバタバタと忙しくしていても、何か手伝おうか?などとは一切言ってこない。
にも拘らず、小声で聞こえない声で話しかけてくる。それが聞こえないから
こっちは忙しいのだけれども、『えッ?何ですか?』と何度か聞き直して
面白いはずの話が全く面白くない。
で、こちらは忙しいからイライラしてくる。
経験豊富で、知識も人一倍多い先輩は自分の範囲でない仕事を余裕で出来るにも拘わらず、忙しい我々に回してくる。『先輩、ちょっとその件直接客先に連絡してくれますか?』というとしぶしぶやってくれる。
そんな先輩には中々仕事は頼み辛い。

しかし、年下の営業のヤツは先輩に頼めばいいという。
先輩に頼む難しさを伝えるとヤツは『そんなの、おだててで下手に出て
やってもらえばいいんですよ。私なんかいつもそうしてますよ。』という。
今まででの礼儀正しい姿勢はそれだったのか!と気づかされる。

営業というのは口達者で相手への気遣いが重要と聞く。
しかし、『豚もおだてりゃ木に登る』という思考であるヤツにとって
信頼できる人間は会社にいるのであろうか?
業務の人間は彼に表裏がある事は皆知られている。
あの女営業でさえ『性格が悪い』と言っていたと言う。

ろくな人間がいないこの会社をもうすぐ去ろうと思う。
こういう理不尽な人間たちの中にいる。それをおかしいと思わない人間たちがいる。会社の色に染まってしまう人間たちがいる。
給料という見返りに自分を捨ててしまうのだろうか?
自分を見失ってしまうのだろうか?

長いことこの会社にいたら自分を失うのでないか?と危機を感じる今日この頃である。













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