2019年インダストリアルミュージック年間ベスト20選

初投稿です。(200円は投げ銭用で全文が無料範囲です)

並び順は A to Z

Agonal Lust - "Hideous Salvation" [Self-Released]

現行US地下インダストリアルシーン最注目株 Agonal Lust の3rdアルバム。
長尺垂れ流し族では決して到達できない的確な構成と完成度を持った暗澹のインダストリアルパワエレ10曲。
これに続いて片割れのMeatpackerが Endangered Species からリリースさした"Negative Impact"も素晴らしかったので同じく必聴です。




Blood Ov Thee Christ - "Masterbio Syphilitica - Dokuments 2005-2011" [Styggelse]

スウェーデン史上初のパワエレユニット(らしい) Sachsenhausen Industriale を前身に持ち1989年に活動停止したインダストリアルグループB.O.T.C.の2005年に復活してからの6年間に蓄えられた録音の再構築集。
凶悪トラック22曲を満載したC90カセットに24ページのアートワーク冊子の大満足過ぎる逸品。

ちなみに復活以降の中心メンバーの Kristian Olsson 氏 (Styggelse / Survival Unit / Alfarmania / RJF) は2020-21年あたりで Proiekt Hat と一緒に日本に来る(B.O.T.C.は無理だけど)つもりだそうで、詳細は不明だが来日公演に期待しておきましょう。




Bocksholm - "Ironic Discomfort And Cheesy Manners" [Yantra Atmospheres]

ダークアンビエント系インダストリアルの二大巨頭 Raison D'etre と Deutsch Nepal によるコラボプロジェクト(混同されがちな同姓同名の2人のPeter Anderssonがタッグを組んだ企画)久しぶりの新作。期待を裏切らず鉄分MAXな空間に老朽化した機械がのたうっているのを眺めているような文字通りの意味での直球Industrialの世界で最高なやつ。

ところで前作のハイライトだった金属打撃音/金属摩擦音の塊のような名曲"Forging Hammers"が今作でもまた収録されていて、後述する Phage Tapes からのコンピにもそのまま提出されてて、お気に入り過ぎでしょと笑顔になりました(実際すこぶる秀逸な曲だから全然良いと思いますが)




Dead Normal - "There Is Nothing Left But The Enjoyment Of Senseless Destruction" [Harbinger Sound]

公式の紹介に「初期 SPK と90年代の Whitehouse に歪ませた Scorn や JFK 」みたいなことが書いてあったけど正しくそんな感じな2016年結成バンドの会心作。
ストレートで嫌味が無いパンクサウンドで日本にも早くから盤が入って売られてたしSNSでの評判もすこぶる良くて、自分の観測範囲では今年の新人賞という印象。

DISるつもりは全く無いですがこういうの出してきてしかもBandcampにも置くとは Harbinger も変化してきたのかなと思いました。




Distortion Six - "Norze" [Ant-Zen]

遅れてやってきたパワーノイズインダストリアルの使者、ゲストVoを導入してよりやんちゃにキメてきました。今回は北斗の拳を堂々サンプリング。
Ant-Zenは物作りと流通をやめてネットレーベルになってしまったけれどこういうのをリリースする心意気を今も持ってるのは嬉しいところ。
こういうパワーノイズはEBMの影響を受けながらゴストランスに行かなかったインダストリアルの流れを示す上で大事な存在なのでもっと大暴れして活躍して欲しい。いつか日本にも来て欲しい。




Folkstorm - "Nihil Total" [Old Europa Cafe]

スウェーデンのインダストリアル巨神 Henrik N. Björkk のこの名義では8年ぶりの待望の新アルバム。無駄な時間の無い曲構成にノイズ/ボイス/ビートの完璧なミキシングで「これは流石ですわ」と思わされる熟練ハーシュインダストリアル。Mz.412とかも良いけどやっぱりこの名義が一番好きですね。




GRIM - "Factory Ritual" [Tesco Organisation]

今年のGRIMはSteinklang IndustriesとTescoからアルバムをリリースして無論どちらも良かったわけですが個人的にはこのLPの方がお気に入りでした。
インダストリアル的にもGRIM的にもオールドスクールを指向した曲群というか「Tescoからの決定盤」を作ろうとした心意気のようなものを勝手に感じました。
ここのところは海外からのリリースが続いていましたが2020年は本拠地の Eskimo Records に動きがあるらしいので楽しみにしておきましょう。




HIDE - "Hell is here" [Dais Records]

シカゴのナウな2人組インダストリアルデュオの2nd。必要な音が必要なだけ鳴っているパーカッシブなインダストリアルダークウェイヴ。
自分達のスタイルを完全に確立していて誤魔化しの無い格好良い音楽をやってるしアルバムの始め方と終わり方も最高に好み。
要チェックな最新世代を的確に拾ってきつつそれらの祖先と言える古典の再発もこなす Dais Records さんはつくづく立派なレーベルでございます。




Iron Sight - "Chapter Two, The Broken Son" [Strange Therapy] 

これは面白いと感心したリリース。前々からテクノの周波数のトラックにパワエレじみたVoを入れたりしてて注目してたのですが今回は感情の起伏がハチャメチャ激しい感じ。綺麗系のエモいアンビエンスとリズミックノイズ的ビートとパワエレ的Voが交差しつつ時折ガバキックなんか飛んできてOyaarssみたいになったり。リリース元のレーベル選択を含めて、どれくらいインダストリアルを踏まえてやってるのかはともかく、めっちゃ新文脈で面白いやんけとなりました。




Justified Rape - "Feminism/Femicide" [OMM]

チリの暗黒最深部 OMM から女性の悲鳴と金属音と暴虐ノイズが主成分の鬼畜系インダストリアルハーシュノイズ。これのB3 "Resistance As Pleasure" はオールタイムベスト級のお気に入りで今年最後のDJでも使って大好評でした。
明確な作品テーマと巧みにマニピュレートされたトラックそして独自の手作り特殊ケースにカセットテープと一緒に突っ込まれた血塗れのブロンド髪の束。何から何までバッチリな傑作。
ちなみに同 OMM から出た Summary Of Hatred と Algor Mortis も秀逸だったので要チェックです(そっちは第三帝国の切手と人骨が入ってました)




LINEKRAFT - "SUBHUMAN PRINCIPLE" [Tesco Organisation]

今年の優勝作品。現行インダストリアル日本代表 LINEKRAFT 渾身のLP。
人間という動物の度し難さの一つの象徴としてポル・ポト政権の惨劇をテーマに置いて最高純度・最高強度のインダストリアルノイズで絶望と諦観を顕した傑作。今年のライブパフォーマンスも最高でした




Metgumbnerbone - "Anthropological Field Recordings For The Dispossessed" [Self-Released]

流通が遅くてまだ手に入ってないけどこれについては聴くまでもなく入るでしょと言える2019年の事件的リリース。80年代から再発を拒み続けてきた伝説のリチュアルインダストリアル集団("Ligeliahorn"は一瞬CD-Rが出たのでありがたく回収したけど)の過去曲秘蔵曲を2時間収録した2CD回顧録。
10年代前半にHarbingerが"The Curfew Recordings"を出して日本のSirenが Sir Ashleigh Grove の音源を発掘して Steinklang がリリース予告を出して完全に流れが来てたのにいつの間にかフェードアウトして消沈していましたが、このよくわからないタイミングでようやく来てくれました。




Nvrs - "Soulsuck" [hexx 9 records]

USの女声スポークンワード系ダークインダストリアル。エクスペリメンタルかつIDMチックに制御されたインダストリアルノイズビートに官能的な声を刺し込むスタイルが最高にクールで超気入ってます。もっと評価されて良いのでは。




Sutcliffe Jugend - "Relentless" [Death Continues Records]

活動終了宣言後に出されたCD4枚組の超大作最終アルバム。。個人的に大好きなSJは最初期から1999年までで再結成(2005年)以降のリリースは正直なところあまりSJに求めているものではなかったのですが、2018年に Maschinenfest でライブを観て重厚感とプリミティブなパワエレスタイルの使い分けに色々と納得するものがあり、この最終アルバムからは彼らの集大成を素直に感じました。ちなみに体力とかを理由にSJを終了したけど結局新しいユニットを始めるっぽいです。(それはそれで良いけども出すと叫んでたWDC883030の再発を何とかして欲しい)




Terror Cell Unit - "You Will Be Excluded From The Kingdom Of Heaven" [Nil By Mouth]

近年絶好調of絶好調なUSの地下インダストリアルデュオ(Koufar + Crawl Of Time)。昨年に続いて2019年も秀逸な作品を強力なレーベルから連発してきましたが個人的にはこの Nil By Mouth からのアルバムが表現物として一番尖ってて好きでした(当人的にもお気に入りらしい)。これに限らず場所が場所だと揉めそうなメッセージを叫びまくってるけど地下の小規模リリースにこもらずSpotifyとかでも展開していく気らしく、アナログフォーマット第一ながらもデジタルみのある音処理も合わさって良い意味でラジカルさを発揮していて大好きです




Various feat. 16Pad Noise Terrorist - "EUNOIA reMIXTAPE"

インダストリアルビート老舗HANDSが実に25年ぶりにリリースしたカセットテープ(DLコード付き)。HANDSを代表するインダストリアルDnB/ブレイクコアアーティスト16PNTの楽曲をHANDS周辺アーティストそれぞれが持ち味を活かした形に作り替えた豪華リミックス集。Ant-Zenはフィジカルリリースをやめてしまったがこちらはやっていってくれるのか。やっていって欲しい。




Various - "Metalchemy" [Phage Tapes]

メタルジャンクを使用したインダストリアル/ノイズ音響を集めた豪華メンツのコンピレーション。実験的なものから元気いっぱいのハーシュノイズまで音密度の幅がかなりあります。メタルジャンクの演奏者はまだまだ世界中に居るのだしこれは是非シリーズ化して欲しいところ。




Various - "UNO" [Prehensible?]

フランスの地下レーベルからアブストラクト/リズミックノイズ系インダストリアルのコンピ。Submechanical が参加してるということで飛びついたのですが、これは良い発見でした。




Various - "神風連史話" [Slave Chandelier]

USの新進気鋭地下インダストリアルレーベルから三島由紀夫の『奔馬』を出発点に1876年熊本の神風連の乱を題材にしたコンピレーション。その精神性を読み取るための数少ないであろう英語資料の抜粋と、通底すると思われた概念を持ち寄った36ページのブックレットが添えられていて、その辺のアメリカ人がハラキリとか言って遊んでるような類のものとは断じて違うことが示されています。参加者各自がコンセプトを汲んだ音遣いと高いクオリティの仕事をしていてこれは傑作と言えるコンピ。三島由紀夫の命日に合わせて発売され、通知メールから8時間も経たずに完売していました。





Various - "Industrial Aktions - Oakland" [Syzmic Records]

今年からUSで始まったインダストリアルフェスのコンピレーション。
インダストリアルオタクの夢と情熱と感じる豪華ラインナップとケース内側に書かれた「16年くらい妄想しててついに実現したんだ」という語りが熱い。是非とも続いて行って欲しい。アメリカでならきっとできるはず。



後記

最近はアメリカとスウェーデン勢が魅力的で注目してて、それがかなり反映された感じになりました。
ちなみにエレクトロ/ロック/メタルについては特段これはすごいと思える作品に出会えなかったですが Hocico - Dark Sunday は労働帰りの退勤テーマとしてめちゃくちゃ聴いてました🔪

今年はイベント運営と蒐集・鑑賞と色々な物事にかまけて制作活動を派手にサボってしまいましたが来年からはなんとか気合入れてやっていきたいと思います。2020年もインダストリアル音楽やっていきましょう👊

[追記] 2020年春のM3に出展(M-09b"FALLONDEAFEARS")してセルフスプリットを出しました


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