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第1回読書会 パク・サンヨン『大都会の愛し方』報告

◆ごあいさつ

あんにょんパンドと申します。私たちは韓半島の文化を学びながら、みんなでソウル・クィア・パレードを歩こうという目的を掲げて、2020年3月に大阪のコミュニティーセンターdistaを借りて始まった交流イベントです。
4月からはコロナ禍でZOOM配信も立ち上げ、『在日コリアンのクィア』、『山縣真矢さんに聞くソウル・クィア ・パレード』、『日本と韓国、地方のクィア な若者たち』などの内容でオンライン開催をしてきました。
今回は初の試みとして、zoom読書会を企画しました。課題図書として選んだのは、パク・サンヨンさんの『大都会の愛し方』でした。選書の理由としては日本で最もクィアな本屋であるloneliness books さんの推薦があったからです。また、ソウルの大学院で文学を研究しているメンバーから著者のパク・サンヨンさんを紹介して頂けたので、日本の読者へのコメントをもらうことができました。
2か月間の準備を経て計15名の方の参加がありました。セクシュアリティやジェンダーも様々で、韓国からの参加も4名ありました。まず自己紹介をし、その中でサンヨンさんへの推し本を紹介し合いました。そして大学院生2人からこの本へのプレゼンをしてもらいました。その後に、5名ずつ3部屋に分かれて40分のディスカッションを、そして全体でトークをしました。最後は、みんなで記念撮影としてスクリーンショットを撮って終わりました。この記事では、ディスカッションの内容は割愛しています。

◆プレゼンテーション

2人の大学院生のプレゼン概要を載せます。ソウルの大学で韓国文学を研究している方からは、パク・サンヨンさんの小説家としての経歴、そしてクィア小説としてだけでなくもっと広い意味として読者に愛される理由について説明がありました。
続いて大阪の大学で経営学を研究している方からは、4つの短編集と読むか1つの長編として読むのかについて、時系列的に整理しながら考察を述べられました。話に登場するヨンは同一人物なのかを時間軸、また著者のあとがきからも考察していました。また、翻訳文学ならではの多義的な読み方の可能性=クィアについても話が及びました。例としては、「ジェヒ」が女性なのか男性なのか読んでいても途中まで分からなかったことなど、翻訳文学であり、その土地の文化や言語を理解しないことにより読み手によって意図せずクィアな読みが開かれている可能性について言及されていました。発表者は、最後にディスカッションテーマを3つ提示していたのですが、その中で一番印象的だったのは、「あなたは何者で、どう読みましたか?」という問いかけでした。発表者は、ヨンとほとんど同じ年齢であり、都会住みで共通点が多くあったことで、ヨンは〈私〉でありどこか別の世界に住む〈私〉の物語として読んだことを述べていました。セクシュアリティや経験、世代、文化の差異などの自身を振り返りながら、小説を通して、シェアしたい経験、シェアしたいけれどもできない経験がなぜ生じるのか、再帰的に考えてみて欲しい、と締めくくられていました。

◆パク・サンヨンさんへの推薦図書

三島由紀夫 仮面の告白
三島由紀夫 禁色
夏目漱石 こころ
中村珍 羣青
鳥野しの オハナホロホロ
永田カビ さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ
李琴峰 三日月が五つ数えれば
李琴峰 ポラリスが降り注ぐ夜
キム・ヘジン 娘について
王谷晶 完璧じゃない、あたしたち
藤野千夜 少年と少女のポルカ
カトリーヌ・カストロ ナタンと呼んで
橋本治 つばめの来る日
もちぎ 繋渡り
吉田修一 Water

◆次回予告

次回は、3月26日(金)20時からzoomにて開催します。韓国で美しい単行本になり、この度日本でも出版された野原くろさんのコミック『キミのセナカ』です。本書は地方都市で暮らす高校生のカミングアウトをテーマにした物語です。参加希望の方は、lonelinessbooksからメールを送ってください。あっという間に、残席僅かです。

#大都会の愛し方 #パク・サンヨン #オ・ヨンア #亜紀書房  #대도시의사랑법 
#박상영작가

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