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もうすぐ四十九日なので「100日後に死ぬワニ」の話をしたい。

*この文章は「100日後に死ぬワニ」及び「BANANA FISH」のネタバレを含みます。両作品の結末を知りたくない方は、ブラウザバック推奨です。*

3月20日の夜、ワニは死んだ。死んだあともグッズ販売やら電通やらで世間を騒がせたワニだった。ただ、僕がしたいのはそういった「世間でのごたごた話」ではない。ぶっちゃけ、ワニくんの話でもない。僕が話したいのはワニくんの相棒、ねずみくんのことだ。

いや、ワニくんの話はもういいよ!アイツは死ぬ直前まで幸せだっただろうし、最期も「誰かをかばって死ぬ」っていうワニくんらしい死に方だったわけだからさ。でもさ、残されたねずみくんはどうなのって話ですよ?親友に先立たれたねずみくんの人生、割と地獄じゃないですか?

ここで改めてねずみくんの性格をおさらいすると(みんな知ってるので不要かもしれないが)、彼は非常にワニくん想いで、ピュアすぎるが故にしばしば落ち込んでしまうワニくんをラーメン屋に連れて行ったり、バイク乗せたり、ゲームしたりで常にワニくんをサポートしてて、あまりの甲斐性ぶりに「ねずみくん、タイムループしてワニくんの死を防いでる説」もTwitterで浮上するほどでした。周りがリア充だらけになろうが、妬みもせずにワニくんの幸せを喜ぶねずみくん、間違いなく超いいやつじゃないですか?そんなねずみくんに待ち受けてるラストがあれって、ちょっとむごすぎません?

(219万いいねってなんだよ、化け物じゃん…)

最終日の何が残酷かって、ねずみくんだけワニくんの死に関わっているんですよ。しかもねずみくんは事故現場をおそらく見てる。つまり、何がワニくんに死をもたらしたかを、ねずみくんは認識せざるを得ないんですよ。自分が送ったLINEがワニくんの死を招いたという「罪の意識」をねずみくんは一生背負っていくんですよ、なかなか辛くないですか?

作品自体はワニくんの死を以てフィナーレを迎えたが、僕の中ではねずみくんはまだ生きているんですよ!!(ワニは死んでるけど)個人的にはねずみくんの話がまだ見たい。ワニくんが死んだ後のねずみくんの人生をちゃんと描いてほしい、そう思うんです。

なぜ僕がそこまで「ねずみくんの今後」にこだわるのか。それは間違いなく僕が「BANANA FISH」を読んだからだ。正確に言うとワニくん亡き後のねずみくんと、アッシュを亡くした英二とシンの関係に似たところを感じたからだ。

「BANANA FISH」の最終巻で、アッシュはすべての敵を倒した。彼は解放され、自由になれるはずだった。しかしながらアッシュは最後、シンの義兄であるラオに刺され命を落としてしまう。作中では無敵に近い存在であったアッシュがあっけなく死んでしまった理由、それは英二がアッシュに向けて書いた手紙が関係していた…

とまあ、「BANANA FISH」も「100日後に死ぬワニ」と同じく主人公の死によって作品が終幕を迎える。ただし、「BANANA FISH」には後日譚がある。あの超超超超大名作である「光の庭」だ。「光の庭」ではアッシュを失った英二とシンの「鎮魂と再生の物語」が描かれる。心に傷を負った両者がアッシュの死を受け入れ、両者の心のなかでアッシュが成仏していく様子はただひたすたに美しく、神々しかった。

光の庭2

もちろん「BANANA FISH」と「100日後に死ぬワニ」じゃ作風も作者の考えも違うだろうし、ここまで緻密な後日譚を期待するのはおこがましくもあるだろう。それでもだ。ねずみくんにも丁寧な後日譚が欲しい。それが残された者に対するせめてもの手向けじゃないだろうか。

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