赤いケツ

日本のサルはケツが赤い。
皮膚を通じて大量の血管が透けて見えているから赤く見えるのだ。
そんなサルのケツは仲間を見分ける時に便利なんだとか。あ、コイツもケツが赤いから仲間だ。ケツが赤いという極めて恥ずかしい特徴のお陰で友達ができるのである。
繁殖期になるとそのケツはますます赤みを帯びてきて雄は雌を引きつける。赤ければ赤いほど健康的で、より強いステータスとして認識される。要するに健康的な遺伝子を残せる個体として雌の眼球に映るのである。
ボスザルのケツなんて見てられないくらい赤い。無論、赤くないと玉座からズリ落とされるからだ。

私のケツは赤い。
沢山の人間に叩かれて赤く腫れ上がっている。内出血どころの騒ぎではない。まだ誰も到達したことのない領域にケツを踏み入れている。
怠け者の私は誰かにケツを叩かれないと動き出せない。化け物じみて優秀な人間に遥か上空から罵って頂いて、馬鹿にして頂いて、ケツを叩いて頂いて初めて足が前に進むのである。

サルはいいなって思う。
明らかにサルの進化系の私がサルに羨望の眼差しを送るのはダーウィンに失礼なのではないか。しかし、こればっかりは本心である。
自分の力で能動的にケツを赤くして、ハッスル一番、勇気を持って恋愛をする。そして情熱的に交尾をして遺伝子を残す。誰に叩かれた訳でもないのに真っ赤に染め上げられたケツはもはや芸術作品の類だ。なりふり構わない傍若無人なボスザルの生き様はまさに修羅。だからこそ私はサルに憧れる。

自分でケツを叩こう。紅葉がつくくらい強く。今までは大小様々なサイズの紅葉がケツについていた。以後は不細工な一種のみで埋められる。猿よりも立派に赤く染め上げたケツなら街でお披露目できる。
いつになったら自家製の赤いケツを提供することができるのだろうか。
こいつに関しては誰もわからない。



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