2人は‘‘愛’’をどう受け止めたのか

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最後の最後まで読んでくださった方なら分かると思いますが、タイトルは「名のなき感情。」です。

この漫画を描き終える直前、このまま投稿すると見てくださった方のうち8割くらいが「???」のまま終わってしまうのではないかと危惧したので、私も含む解釈難民の方を救済するために解説ページをつくりました。

2人の人間的な部分に触れ、私なりの解釈や妄想で描いた"二次創作"になります。
中にはこういう作品は考察することが醍醐味やろがい!という方もいるでしょうし、自分の考察と全然違った…なんて人が出てくると私としても悲しいので、ここまで読んでやっぱり自分の解釈までに留めておきたいと判断した方は今すぐブラウザバックしてください。
また、途中で自分と考え方が合わないと感じた場合も、同様にスッと閉じていただけると幸いです。

流石に全て読むにはあまりにも長い(短編小説一本が余裕で書ける文字数です)ので、
解説を知りたいページやコマが定まっている方は、下の目次から飛んだ方が断然早いし楽だと思います。
ページの数字をそのまんま目次にしています。

全て知りたいよ!暇を潰したいよ!都瑠葉さんの作品を全身で受け止めたいよ!って方はこのまま読み進めてください!対よろ


設定、あらすじ

霊夢→幻想郷の外から来た人間。博麗の巫女になる前の全ての記憶を消されている。覚えている最初の記憶は誰かに手を引かれて神社にやって来た時のこと。

魔理沙→幻想郷で生まれた人間。家族との関係が険悪で、1人森に逃げてきた。今は家族と離れて1人暮らしをしている。

偶然出会い、仲良くなり、魔理沙が霊夢の住む神社によく足を運ぶようになり、霊夢もそれを受け入れるようになった時期。
人を愛すこと、人に愛されることを知らない2人。
そんな彼女らが、自身の心にある知らない感情に葛藤し、それらをどのように捉えるのかを考えた話。

追記
念の為伝えておくのですが、2人に恋愛感情はありません。あくまでもこの作品内での「愛」は、パートナーに対する恋慕というよりは、家族や友人、ペットなど、対象を大切なものとして慕い、愛おしむ気持ちを指しています。
レイマリは百合!とお考えの方は私の解釈と合わないと思いますのでお帰りいただけると幸いです。


2&3、ただの魔法使い

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いつものように神社前で騒いでいる妖怪を追い払う霊夢とそれを眺める魔理沙。

普段なら霊夢以上に積極的に異変解決や妖怪退治に出向く魔理沙ですが、この時は自分の過去について思い出してます。霊夢とちっこい妖怪ちゃんたちとの争いを見て「親子喧嘩みたいだなー」とか思ったんでしょうか。

「妖怪を恐れない私に近づく者はいなかった」

このセリフなのですが、これは魔理沙の幼少期のことになります。

魔理沙は幻想郷で生まれ、幻想郷で育った存在。そんなただの人間であるはずの彼女が現在それなりに魔法を操れ、馬鹿みたいな火力の弾幕を披露できるのは常識の範疇から外れています。その上好奇心旺盛で怖いもの知らずな性格ゆえ、幼い頃から妖怪に近づくことを恐れなかった。
家族や里に住む人間から変な目で見られていたのではないか…?という解釈です。

幻想郷に住まう人間は妖怪を恐れていないといけないので。

また、「生まれ持った才能」「博麗の名に相応しい実力」とありますが、魔理沙はまず霊夢の過去(2人が出会う前)をあまり知りません。
霊夢は自分の生まれた時のことを話さないのです。もちろん、魔理沙も霊夢に聞くこともなかった。

魔理沙はきっと、“霊夢は博麗の血筋を引いている”と考えているのでしょう。

ですが実際のところは…。設定にある通りです。

「決して恋ではない」という部分なのですが、恋と愛の感情が似ているという点からほんの少しの瞬間でも勘違いをしていたら…!?という思いで入れてます。そこまで深い意味はないです。
世に出ているレイマリは、2人が
恋だと認識→恋愛関係
愛だと認識→恋人以上の親友•相棒としての信頼関係
になるものだろうなと勝手に考えています。
私的には2人が恋愛関係になるのは解釈と違うな…って思っている側の人間ですが、もしここで恋愛的に好きだと認識したら皆さんが描かれてるいわゆる百合ルートになっていくのかなとか思ったり。


4、不釣り合いな自分

人差し指の絆創膏、手を覆うように巻かれた包帯。
霊夢が天才型なのに対し、魔理沙は努力で力を伸ばしてきました。
ですが、どんなに頑張っても、どんなに研究や実験をしても、霊夢には敵わなかった。
霊夢と比べてばかりの自分が醜い、みっともない。でも、霊夢のそばにいたい、霊夢の心の支えになりたいという気持ちもどこかにあるのでしょう。

憧れ、尊敬、劣等感、自己嫌悪。そんな感情がドロドロと混じり、正体が分からなくなっています。そのため名前をつける事もできない。
邪魔してしまってうまく結論を出す事ができない。その複雑な心情を消化できない。腑に落ちる答えが見つからない。

魔理沙にとって霊夢に対する「愛」は、非常に複雑なものなのかなと思います。きっと一時的だとしても家族から愛を与えられたでしょうし、幼馴染である霖之助が長いこと世話を焼いてくれた。なので愛という感情自体は認識していますが、霊夢が相手だとその一言では説明できないのではないでしょうか。


5&6、忘れ物

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普段はお昼前後に遊びに行く魔理沙ですが、研究に必要な物(貴重な薬草などの類かな)を忘れていたことに気づき、神社に足を運びます。

魔理沙はなんとなく睡眠時間が短く、早起きであって欲しい、霊夢は可能な限り寝ててほしい。そんな真逆な生活スタイルを時間で表現するならいつかなって思ったところ、朝7時になりました。(早朝5時とかでもよかったです)

戸を開けるといつもより苦しそうな顔で眠っている霊夢がいました。ですがこの時の魔理沙は自分の忘れ物を見つけ出すことが最優先なので気づいていません。

そんな時、霊夢の腕に刻まれた傷や、机いっぱいに広がった殴り書きが目に入ります。
もちろん、魔理沙は困惑。適当で大雑把だと思っていた霊夢の知らない一面を見てしまい、色々と脳内で渦巻いているのでしょう。
霊夢に怪我を負わせるほどの異変はなかったし、神社に住むのは霊夢のみなので、メモを放置する人なんてのもいない。霊夢がやった以外あり得ない。

6ページ目からは1ページ目が完成してからかなり時間が経ってから描いたものなので、私の白黒絵に対する苦手意識がなくなり作画も向上している気がします。


7&8、霊夢の警戒心

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7ページ目の【霊夢が魔理沙を襲うシーン】なのですが、このシーンのために続きを描いたと言っても過言ではありません!!!
枕元から札を取り出し、相手の位置を的確に捉え、自分が有利になるよう相手を倒し押さえ込む。

霊夢は寝起きです。

寝起きなくせにこの強さかよ!という圧倒的主人公感が演出されるシーンですが、「うなされており深い眠りでなかった」、「眠っている時間帯ですら警戒心を解かない用心深さ(どゆこと?)」みたいなものが伝わるシーンでもあります。いい意味でも悪い意味でも周りに興味を示さず、信頼していなかったのでしょう。そして勘が非常に鋭い。
霊夢はいつもぐーたらしていて危機感に欠けているという描写が多いですが、周りが知らないだけで実は人の気配に敏感で、警戒心が強かったらいいなぁって思います。

友人の知らない一面を見た直後にその友人に退治されかけるのですから、魔理沙は思考が追いついていません。冷や汗ドバドバです。
霊夢は魔理沙の忘れ物を把握しており、貴重なもの、もしくは危険なものだと判断して別室にて保管していました。
ようやく知らなかった一面身体の傷や殴り書きをなんとか受け止められた魔理沙ですが、結局どれだけ考えたところで納得のいく答えは出せません。
このモヤモヤは今後霊夢と関わる上で一生付き纏うことになります。

霊夢の口から語られない限り。


9&10 、霊夢の回想

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ここから霊夢視点になります。

回想シーンとして描いたつもりですが伝わっているか不安です。
なんとなく霊夢が心配になった魔理沙は、「悩みはないのか」と霊夢に問いかけます。
霊夢は、こういう自分に関する質問だけははぐらかして正直に答えてくれないんだろうなぁ…と1人モヤモヤしながら描いていました。どれだけ辛くても、苦しくても、それを他人に見せることはしない。

魔理沙の顔があまりにも切ない…。霊夢もそれに気づきましたが、それでも自分の想いを吐き出さずに見て見ぬ振りをします。
でも自分を気にかけてくれること自体は悪く思ってないので、相手に悟られない程度に喜んでいるといいな、という妄想がモリモリと詰め込まれています。

困り眉+潤んだ瞳+きゅっと結んだ口
この組み合わせ最強です。一生こういう表情ばっか描いていたい。


11、あの巫女は「バケモノ」

コマ割りや雰囲気はこれと13が好き。

周りに興味なんてないですが、周りの自分に対する評価については嫌でも耳に入って来ます。人間ってそういうもんだよなぁって思いながら描いていました。見たくないものや聞きたくないことばかりを知ってしまう。
霊夢に対する否定的な意見をモブたちに喋らせるこのページなのですが、あまりにも思いつかず、一番考えるのに時間がかかりました。

「神社に妖怪が居座っている」という点はどの作品においても揺らぐことのない事実ですし、人間離れした実力を持つ霊夢に恐怖を感じる点についても、良くも悪くも人間だなぁって感じです。なんとなく想像はできるよなぁとは思います。


12、努力をしない理由

“私がここに来た時・・・・・・からそうだった”

設定でも触れましたが、霊夢は博麗の巫女候補として外から連れてこられた人間と解釈しています。当時の年齢は年長〜小2くらいにあたるのかな。
幻想郷の外、つまり日本人として生きていた時の記憶は幻想郷にとって不都合でしかないのでもちろん消されるのでしょう。ですが、霊夢は自分が幻想郷で生まれたのではないと理解している。

幻想郷内に親が住んでいないこと、博麗霊夢という名前が後からつけられたこと、既に物心がついているであろう幼少期の記憶が抜けていること。

神社の立ち位置が特殊なのもあり、結界について博麗の巫女に就く際に紫から説明を受けるでしょうし、(管理は行なっていないでしょうが)その時に幻想郷の外が存在することも認識しているのでしょう。

「努力が報われるなんてありえない」
「この世界は綺麗なものだけじゃない」
「結果や答えが存在しないものに価値はない」

このセリフ、自分が書いておいてなんですがあまりにも博麗霊夢すぎて震えました。


13、ノイズ

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文章量が多ければ多いほど映えるのですが、内容がモロ被りしないように打ち込むの大変でした。

自分の過去について知らない霊夢。それを知ろうとする度に、思い出すのを邪魔するかのようにノイズが走り、酷い頭痛がする。
幻想郷で生きている中で、周りにいる知り合いの妖怪たちからそれとなく霊夢自身について聞かれる機会はあったのかもしれません。
それに対し、霊夢はもちろんはぐらかします。

理由は自分も知らないから

魔理沙が見つけた殴り書きのようなメモは、自分がここに連れてこられた理由や、幻想郷や博麗が生み出された歴史なんかを探していた際の副産物なのでしょう。もしくは、自分の過去について思い出しかけたや疑問を急いで書き出したとか。
魔理沙がくる前日も、過去に投げかけられた言葉や記憶がフラッシュバックしていた。
魔理沙が忘れ物を取りに神社に来ることは想定していても、まさかこんな朝っぱらに取りに来るとは思ってなかったのでしょう。それほどにフラッシュバックや頭痛は霊夢の足枷になっています。

何度も何度も答えを探して、努力してみたけど、それでも結果はわからない。
そして、その答えを誰も教えてくれない。
だったら、今の私が探し求めてるものなんてその程度の価値しかないのだろう。
それに時間の無駄だ。こんなことしてても意味がない。
それなら、こんなこと知らないままでいい。

霊夢の根本的な価値観はこういうところから来てるんじゃないかなぁと思います。
それでも自分の過去を知らない、何者でもない自分が恐ろしいのです。
自分は博麗霊夢だ!と割り切れてしまえばそれまでですが、年齢的にそういうわけにもいかないのでしょう。
自分がいつ、どこで、誰の元から生まれたか分からないまま生きるなんて、想像ができない寂しさや恐ろしさがあります。
“知らない”ことに

いつからかそれ過去を知ることが怖くなるのです。


14&15、愛おしさ

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この辺りから霊夢は魔理沙のことどう思ってるんだろー!って所に触れます。

「知らない方がいい事だってある」と心得た霊夢は、なおさら人の気持ちを知ろうとしたり、考える事をやめるようになります。そして、より一層自分のことを話さなくなる。

一方で魔理沙は、彼女なりに自分の想いを伝え続けます。劣等感や尊敬などが混ざり、複雑化した感情を抱えながらも、自分なりに消化するため思った事は全てバカ正直に真正面からぶつけます。

こっちの気持ちなんて知らないで、自分に真っ直ぐに気持ちを伝えてくる。
純粋な魔理沙がどうしても愛おしく感じてしまう。

“永遠”という言葉がここで出てきますが、霊夢は永遠とか一生とかを信じていません。
自分に出会いと別れの記憶がなくても、周りを見てれば嫌でも分かるのでしょう。
霊夢は現実主義者であってほしいなぁっていう私の願望が表れています。


16、怖いもの、求めるもの

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“これ以上何もいらないから もう何も求めないでほしい。”

怖いもの知らずでどんな相手でも対峙するためなら突っ込んでいく霊夢ですが、物体がないものに対する耐性はなかったらいいなとか思って描いてました。
何かを失ったり、忘れてしまったりすることが怖い。それは自分の出生、博麗神社と自身の関係や幻想郷の理について何も知らない自分への嫌悪感から来るもの。
そして、それを知ることによって何かを失ったり、大切なものが崩れてしまうのではないかと恐れているのです。

これ以上何も得たくないし、これ以上何も失いたくない。
右にも左にもいきたくない。上にも下にもいきたくない。

霊夢は無意識にその場に停滞することを望んでいます。

“永遠なんてない。”なんて言っておきながら、
無意識に永遠を望んでしまっているのですね。

運命などないと知りながら、どうしてもあの人と結ばれる未来を願ってしまう。
神などいないとわかっておきながら、どうしても架空の存在に縋り付いてしまう。

人間とはそういうものです。矛盾を抱え、歪んだ世界で生きていく。そんな醜さが美しかったりします。


17&18、その名前

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“愛を知っている”のに、自分と相手を比べて気持ちの整理がつかないほど複雑化し、自分が相手に向けている感情の名前が“わからない”魔理沙。

“愛を知らない”けど、相手に向けた感情が愛であると気づき、それでも失うことを恐れ“あえて”名前をつけないことにした霊夢。


【名のなき感情。】



以上です!
ここまでお付き合いいただきありがとうございます。


あとがき、余談

ここからは読んでも読まなくてもいい話になるので暇な方のみ楽しんでくださいね

こちらの解説ページ、実は漫画を投稿する前から書いていたものです。

まとめるのが下手くそすぎるのと、ブログなんてやったことないのでちゃっかり5時間とかかかってたりします。
いいね数3桁だったらダセェから消すぜ!とかほざいていましたが、東方やレイマリが有名なので大体3000いいねくらいはいくだろうなと想定しておりました。

ですが2月10日15時時点(あとがきを書いてる今の時間)で1.1万いいねをいただいておりどうなってんだ???って感じです。私のツイートの中で一番伸びたのが2年前のレイマリの絵なのですが、ちゃっかり超えようとしています。というか多分もう超えてます。ありがとうございます。
ありえん数のリプや引用での感想もありがとうございます。
「傑作やん」「エグすぎ」「天才かよ」など、そんな褒めてくれるなよ照れちゃうって感じです。
楽しんでいただけたようでよかった!
そしてフォロワー数も8000を突破しました。ありがとうございます。

私のストーリー構成が下手すぎて皆様にちゃんと伝わったかずっっっっっと不安でしたが、反響を見た感じ思ったよりちゃんと内容をわかっているというか、描いた私より深いところまで理解しているようでした。思っていたよりみなさんの想像力が凄まじかったです。

もともとコマ割りや、トーンを用いたモノクロイラストの練習として最初の1ページだけを描いて投稿したのですが、妄想力が収まらずにやり切った結果こうなりました。
なんと最初の数ページは半年以上前のものになります。半年かけて18ページ描いたせいで、キャラの顔や影、セリフやトーンの使い方なんかがコロコロ変わっています。
(最近は逆に白黒の方が増えました。もっとがんばります…)
何度もお蔵入りさせようとしていたのですが、せっかく始めたのなら拙くてもいいから完結させたかったのと、一気にまとめてレイマリ供給をぶち込んだ方が面白いかなと思いまして、全てを描き切り、まとめて掲載する方法を選びました。


2人の幼少期についての設定(魔理沙と実家の件や、霊夢の出生など)は、実は機会があったら出したいなと考えていたいくつかの漫画(同人誌)の共通の設定になります。
この話や【名のなき感情。】というタイトルも、元々メモ帳に書き起こしていた話のひとつで、本当は同人活動が可能になったら本として出そうかなと思っていました。
本になっていたらもっとページ数も多かったでしょうし、解説なんてなくても伝わるような構成が作りやすかったのでしょうが、そうしなかった理由はシンプルに「同人活動をするには力不足」だと判断したためです。
あまりにも私が小さすぎます。
ここで全てバラすと私的にも皆様的にも一ミリも面白くないのでここでは軽い説明のみにしましたが、いつか2人の幼少期をしっかりと深掘りした話やシリアス系、現代パロなんかをモリモリ描きたいです。(願望)
まずはイベントに参戦するところから………。

もし漫画や解説を読んだ上で、「ここどういうこと?」「このコマの意味は?」とかがあったらマシュマロくださるとお答えします。(An仁茶は私の別名義です!)

感想もぜひぜひお待ちしています。


以上です!あとがきも含めて読んでくださりありがとうございます!!!!!