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メールが送信できない理由は

 問い合わせで多いのは、「ネットに接続できない」の他には「メールが送信できない」だった。

 当時は「POP before SMTP」といって、スパムメール(不正なメール)の送信や中継を阻止するために、メール受信時の認証をして本人確認してから送信を許可する、というセキュリティ対策が取られていた。

 ユーザーから送信できないという問い合わせがあると、まずはアカウントを開いてもらって送信サーバー名を確認する。
 設定してあるサーバー名を読んでもらい、正しかったらアカウント名とパスワードも確認してもらう。

 これらがすべて正しく設定されていたら、
「1度受信して、それから送信してください。いきなり送受信ボタンを押すと送信エラーになりますけど、気にしないでもう1度押してください。エラーが出るのが嫌なら、『送受信』ではなく『すべて受信』を先に押してください」
 と案内する。

 たいていの場合はこれで送信できるが、送信できない原因は他にもいくつかあって、エラーメッセージが手掛かりになる。(本当は真っ先にエラーが出るかどうかを確認するべきなのだが、この頃はサポート要員として未熟だった)

 例えば、「サーバーまたはネットワークに問題があるか、またはアイドル時間が長過ぎた可能性があります。」というエラーメッセージが出た場合は、メールや添付ファイルの容量が大きくて送信に時間が掛かり過ぎ、タイムアウトしている可能性があるので、サーバーのタイムアウト時間を長く設定してもらう。

 メールはさほど長くないし添付ファイルも付けていないのにこのメッセージが出る場合は、何かセキュリティソフトを使っているかどうか、使っていたらそれに引っ掛かっている可能性があるので、いったんオフにして送信してみてもらう。

 あるとき、社員のHさんから、「さっきから何度も送信しているのに、メールが送れない」とお呼びが掛かった。

 確認しに行くと、「POP before SMTP」の設定もできているし、宛先のアドレスも正しく設定してあった。
 エラーメッセージは何も出ないとのこと。

 念のため、メールをいったん下書きに戻して、送信し直してもらったがダメ。新規に作成して送信してもダメだった。
 そこで、メールソフトを再起動してもらった。


 すると、空きディスク容量を増やすために最適化することを促すメッセージが出た。

 聞けば、半年ほど前からこれが出て、出るたびにキャンセルしていると言う。
「最適化すれば出なくなるのに」
 と言うと、
「だって最適化すると時間が掛かるんだもの」
 という返事。

 じゃあ、それはちょっと置いといて。
「Hさん、いらないメールを削除している?」
 と聞いてみた。

「している。ちゃんと[削除済みアイテム]に入っているわよ」
「削除すると[削除済みアイテム]に入るでしょ。それをもう1度削除している?」
「えーっ、[削除済みアイテム]に入っているのは削除されているんじゃないの?」

 Hさんの使っていたメールソフトOutlookは、大事なメールをうっかり削除してしまうことがないように、メールを2段階の操作で削除するようになっていた。
 [削除済みアイテム]に入れたメールをもう1度削除しなければ、メールはいつまでも[削除済みアイテム]に残っている。

 Hさんの[削除済みアイテム]を開くと、なんと、メールが17,000件も溜まっていた!

「Hさん、このメール、まだ全部残っているのよ」
「ええっ、そうなの? [削除済みアイテム]に入っているから、削除できているんだと思ってた」

 Hさんに、[削除済みアイテム]の中のメールを選択して、もう1度削除してもらった。
 1度に全部削除するとPCがフリーズしてしまうおそれがあるので、200件ぐらいずつ小分けにして。

 それが済んだらPCを最適化し、メールソフトを再起動してからメールを送信してもらった。
 今度は無事にメールが送信できた。めでたし、めでたし。


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