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ミッドナイトスワンは愛の話


ミッドナイトスワン感想
(映画の内容を含みますので鑑賞前の方はご注意ください)

トランスジェンダーとして心と身体の葛藤を抱える凪沙(草彅剛)と育児放棄にあっていた一果(服部樹咲)が出会い、一緒に暮らすことで孤独だった二人がお互いにとってのかけがえのない存在になっていく。

公式サイトには「ラブストーリー」とあった。
これはまぎれもない愛の話だ。


初めはテレビとかの予告で草彅剛が演じる姿を見て単純に「きれいだな」と思って興味を持った。長風呂をしながらお風呂で見た。2時間を超える作品だったけれどずっと見入ってしまった。(お風呂を上がる頃には手足がしわっしわだった。)私は集中力がなくて途中で飽きてしまうことが多いから長い映画は普段あまり見ないのだけれど、ミッドナイトスワンはストーリーのテンポが良かったのと映像がどの場面も綺麗で最後まで飽きなかった。凪沙が金魚を見つめているシーンや二人が一緒にご飯を食べるシーン、挙げればきりがないけどそのほかの印象的な赤や水色の使い方が綺麗だなと思った。音楽も良くて、ピアノの音が綺麗だった。(鑑賞後すぐSpotifyで検索してお気に入りにした。渋谷慶一郎さん。)
草彅剛さんや服部樹咲さんをはじめとした俳優さんたちの演技がとても素晴らしかった。特に服部樹咲さんは新人ということが衝撃だった。

好きなシーンは凪沙が一果にポークジンジャーソテーを作って一緒に食べるところ。二人がポークジンジャーソテーかはちみつの生姜焼きかを言い合うシーンが微笑ましかった。一果のほうはお肉が2枚あって「こういうのって愛だよなぁ」と思った。ラストのシーンで一果がお肉を焦がしながら凪沙のために同じメニューを作るところも良かった。そうやって母の愛は受け継がれていくんだ。

あともう一つ好きなシーンは夜にふたりでオデットを踊るシーン。「わたしにも教えなさいよ」と凪沙が言ったり、「違うそうじゃない」と凪沙の振りを直す一果が本当に楽しそうで幸せだった。それを見た老人が「お姫様がた」と声をかけるのも良かった。

あとで調べて分かったけど、『白鳥の湖』ではオデットが白鳥の姿になってしまって夜だけ人間の姿に戻れる呪いにかけられてしまう。その秘密を知った王子が呪いを解こうとするが、悪魔ロットバルトとその娘オディールに邪魔をされてしまい、オデットは最後湖に身を投げてしまう。ミッドナイトスワンで二人が夜に踊る場面は、現実にある様々な困難と関係なく、本当のありのままの姿になれている時間だったなと思う。最後一果が海に入っていくシーンは湖に身を投げたオデットと重ねているのか?(ラストで一果が死んでしまった説もあるけど、わたしは生きて夢を叶えていると思ってます。)


鑑賞後にいろいろな人のレビューとか記事を見る中で、トランスジェンダーの役をシスジェンダーの草彅くんが演じることの違和感や、誇張した悲劇的な結末を迎えるトランスジェンダーを涙を誘うための道具として消費しているという批判的な文を見た。なるほどと思う部分も多かったが、わたしはこの映画を「トランスジェンダーだから」という観点であまり見ていなくて人間と人間の愛の話だなと感じていたのでそういう見方の人が多いんだなというのは発見だったし、わたしが知らない世界は本当にまだまだたくさんあるのを感じた。ミッドナイトスワンはトランスジェンダーの問題だけではなく、貧困や育児放棄の問題、りんのように裕福だからといって幸せではない家庭、いろいろなことが絡み合っていて考えさせられることが多かった。LGBTQへの差別やその生きづらさをしっかりと考えるきっかけになった。
わたしのように世の中をあまり知らない人間が、世の中の問題の深刻さに気づいたり考えたりするきっかけになるような映画だと思った。


とても心に残る映画でした。
観ていない方にもぜひ観てほしい。愛の話です。

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