去年の今頃

ちょうど一年前のこのぐらいの時期に今の職場で働き始めた。その頃は上司にあたる人が多忙過ぎたのと元々部下を持って仕事をふって使うということに慣れておらず、とりあえずテキトーに机上作業をして過ごしておいてくれという日が続いた。信じられないくらいユルい職場なので本当にのんびり過ごしていて良いよ〜という感じだったのだが、前職がかなりギチギチに仕事を詰めて働かないといけないところだったので最初のうちは「ホントに?ホントにこんなにのんびりしていていいの?」と、前飼い主から苛烈な待遇を受けていた犬がメチャクチャ優しい大富豪のうちで飼われることになったときみたいにしばらく猜疑心に満ちた目であたりをオドオド、キョロキョロと窺っていた。

どのくらい暇だったかというと、暇すぎて部署の居室で育てている木耳の世話を任されたぐらいである。1日3回水やりするだけだけど。あとはラボ川柳(研究の仕事してる人向けのサラリーマン川柳みたいなやつ)の冊子を渡されて読んだり、科学書を読んだりとかしてた。上司の人は変わっていて、特に一日中振るべき仕事がないので今日はのんびりテキトーに過ごしてくれ、と伝える時に
「きょうは人生について考えていてください」「きょうは詩でも作っていてください」などと真顔で言ってくる。ある時、休憩中の部署のねえさま方と話していて「上司さんはああ言ってるけど、真に受けたていで本当に詩を作って提出したり人生というテーマでレポート書いて渡したら面白いんじゃない?」と軽口を言われた。それはちょっと面白いと思って、でも本当に書き物を提出するほどのガッツは無かったから上司に雑談でこういう話したんですよ〜と伝えたら、私がマジで詩や論文を書いてきたら困ると思ったのか、翌日から「きょうは仕事がないので、伸びたり縮んだりしていてください」と言ってくるようになった。

終わり

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