思い入れのないリフレイン

既に読んで気に入った本を気晴らしに何冊か並行して漫然と読み返す癖があり、頭の隅に残っていた言い回しがふとした折に浮かんでくるのだが、どの本で目にしたフレーズだったかなかなか思い出せない。名言格言めいた重要そうなくだりではなく、なんということもない内容であることが多いのも我ながらおもしろい。

きょうは唐突に「うちの家系から学者が出たとあれば、町の皆さんの我が家に対する見方もまた違ったものになりましょう」というフレーズが浮かんできた。


細かい言い回しは違うだろうし、町じゃなくて村だったかもしれない。なにで目にしたのだろうか。そもそも本なのか、ゲームのセリフか、ネット記事かと考えたところでおそらく最近読んでた文庫本のどれかだろうと思った。現代日本が舞台のホラー短編集か、聊斎志異(古代中国の不思議な話ばかり集めた昔話集)のどちらかだろう。文脈だけはおぼろげに記憶していて、事業で財をなした資産家の総領息子が商売は継がず学者になるのだと言い出して現在トップの祖父だか父だかが苦りきっているところに、母親が執りなして口にしたセリフだったはず。代々続く名家ではなく一代で急激にお金持ちになった家ゆえ、まぁ有力者かもしれないけど教養とか由緒に乏しい成金でしょという見方をする雰囲気もその町だか村だかにはあったことを受けての発言だ。商売っ気だけの家じゃないぞ、学を尊ぶ素養もあるぞというアピールになり民から一目置かれて結果的にウチにプラスになるからいいじゃないですか、後継ぎなら次男坊も居ますし。というわけだ。ここまで自分で書いておいて思ったけどたぶんこれ大島清昭『赤虫村の怪談』だ。別に元ネタを突き止めることに固執していたわけではないが思い出せたらそれなりにスッキリする。

ホラーやミステリー系の創作って読んだり観たりしたら内容をすぐ忘れてしまうのだが、何故だろう。何度でも新鮮な気持ちで楽しめるからお得だし別にいいのだが。

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