すごい羊羹

 数年前はネット掲示板に投稿されたSF色の強いSS(ショートショート)を読み漁っていました。匿名掲示板であっても話がおもしろいと自然と見に来る人が増えるし、「前に投稿されてたこういう話がおもしろくて覚えてるんだけどもしかしてあれも君が書いたのか?文体が似ている気がする」「そうだよ、読んでくれてありがとう」みたいなやりとりも微笑ましくて好きでした。いまは匿名掲示板に自作の小説などを投下する人は少なくなっており、各種創作サイトやある程度メンバーが限定されるコミュニティに活動の場を移しつつあると聞きます。昔読んだSSに、ゲテモノばかり作る和菓子職人が偶然すごい性能を持つ羊羹を作り出してしまったという内容のものがありました。その羊羹は調べたところ無限に電気エネルギーをうみだし続けるのでとんでもない利用価値があるぞということになるのですが、間もなくその羊羹を狙って怪しげな二人の人物が現れます。無限エネルギー生産装置である羊羹を奪って金儲けを企む悪人と、異常物質監視員の人です。結局悪人は排除されるのですが、異常物質監視員の人はトンデモ羊羹を作り出した和菓子職人に「こういう物質を偶然作ってしまう者が現れることがあって、昔は魔術師とか錬金術師とか呼ばれたそうですよ」「我々はこういった物質の出現を察知したら即座に回収し、これの扱いに慣れている宇宙の方々(人類より高位の存在らしい)に渡すことになっています。もう作らないでくださいね」「偶然に過ぎないのでそうそう再現できないとは思いますが」と言い残して去ります。あくまでも配合の妙で特別な現象がおきることがすごいのであって、たまたま作り手となってしまった者自体には特に価値がないとする描写がすごく良かったです。この人間がやらなくてもいずれ別の人間によって為されるであろう、誰がやるかではなくどのような現象が起きるのかが重要だとする視点はずっと持ちたいなと思います。個人が個人であることそのものに価値があるとする考えには無理があると思うようになったからです。

上記のSSがまとめサイトに掲載されておりリンクフリーとの断り書きを確認したのでリンクを貼っておきます
【SF】彡(゚)(゚)「このヨウカン……充電できる!?」 | 不思議.net (world-fusigi.net)

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