読書日記_4『カラマーゾフの兄弟』

ストーリーとしては、カラマーゾフ家のごたごた(主に財産の分配や女性関係のもつれ。特に、父フョードルと長男ミーチャが両方ともグルーシェニカという女に惚れて取り合っているが、ミーチャには本来カテリーナという婚約者がいる)を解決すべく修道院で話し合いがもたれたのだが、遅刻した長男ミーチャが登場した途端あっという間に話がこじれて何もかもめちゃくちゃになって散会したところである。この小説のすごいところは、なにげない挿話や描写がいちいち緻密に交錯していておもしろいところである。ゾシマ長老が信者の女たちに祝福をあたえて諭す話の内容や、登場人物たちの神学的な議論、来客の一部が修道院というものの営みに抱く反感、ちょっと出てくる神学生ラキーチンの不遜で鼻持ちならない人物像などいちいち言及していたらマジでこの読書記録が10000ぐらいまでいってしまう。あと、これは別の人が話していたことだがドストエフスキーはこの小説に限らずシリアスな場面にいきなり滑稽さをぶっ込んでくるのでそこもおもしろい。ミウーソフとフョードルのいがみあい、次男イワンがマクシーモフを馬車から蹴り落とすくだりは読んでいて思わず声を出して笑ってしまった。

特に印象に残ったのが、父フョードルが想い人のグルーシェニカを妖婦・ふしだらと評されたのに取り乱して恥知らずな言葉を色々口走ってしまい、その後の修道院長をまじえた会食には「あんな恥をさらした後でさすがにノコノコ参加できないだろう」といったん欠席しようとするのだが、「こうなったらとことん醜悪に振る舞ってやる」と会食の席に乗り込み完膚なきまでに会をめちゃくちゃにして恥の上塗りをするシーンである。フョードルには恥の意識はあるが、もっと恥をさらしてやれとばかりに坂道を転がり落ちる勢いで恥さらしに振る舞うことをやめられない、フョードル自身もおのれの衝動を制御できないところがあって、そこをちゃんと自覚しているというのがおもしろい。私は今のところちょっとフョードル贔屓だな。今後話が進展したら他の登場人物たちのおもしろさも前面に出てくるであろう。

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