脇道に憩う

 本を読んでいると本筋ではない箇所に妙にひっかかり、そこを起点に考えが広がることがあっておもしろい。

『スモールビジネスの教科書』著者・武田所長 実業之日本社
 普段の自分ならまず手に取ることはないだろうゴリゴリのビジネス書なのだが、以前twitterで引用されていた文がずっと気になり1年近く迷った末に買った。気になった文というのが、79ページ目にある
「私は社会人を対象とした習い事ビジネスに携わったことがあるが、面白いことに、上達が全く見られない受講者の多くが継続するのである。私は初めそれを不思議に思っていたが、あるとき顧客の目的は上達ではなかったと気づいたのである。暇で自尊心も持てずに生きており、仕事にもやりがいはなく、趣味もない、付き合う人も代わり映えしない。そんな自分が遊園地に来たようにいつもの自分ではない時間を過ごせる、そういう時間を提供していたのが習い事であった(抜粋)」
という内容のものである。ビジネスの計画を組み立てる時は顧客の心理状態をくわしく把握しどんな欲求を抱いているのか間違えないようにしないといけないという文脈で語られた経験談だが、これは消費者として生きざるを得ない私自身が「自分はいま何を求めてこの物品やサービスに金を払おうとしているのか」と内省するうえでも重要な視点だと思ったのだ。自分をある行動や方向に向かわせた要因を突き詰めて分析する姿勢は人生全般に役立つだろう。

『ロシア点描:まちかどから見るプーチン』著者・小泉悠 PHP研究所

https://note.com/anna12/n/n67a9ed3b53be

 本全体を通しての読書記録は上記リンクの日記に書いたが、そこでも触れたとおり「がっちりとした盟友関係を築いている国家というのは珍しくて、その場その場の状況に応じて協力したり、知らんぷりしたり、反目しあったりと流動的な関係性にある国家のほうが世界的に見て多いのではないか」という内容の箇所がすごく印象に残った。個人的な人間関係もそんな感じでいいんじゃないのかと思い至り、非の打ちどころのない友人関係を築くことが至高といった強迫観念から解放されてすごく気が楽になる感じがあったからだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?