何というか何ともいえない気持ち

久しぶりに夜飲みにいこうという話になった
もともとそうそう飲みには出ないのだがコロナ禍でぷっつり切れていた

久しぶりの夜の外出に気持ちはちょっと浮き立つ
まぁ行き先は庶民的居酒屋なんだけど足取り弾む

店が近づいてきて、視界に入って、看板が見えて
「あれ?」
なんかシャッターが下りているように見える
「今日休みになったのかな?」

店に着いて、その脇に小さな張り紙を見つける
「○月○日を持って閉店いたしました」

えーっ、そうだったの!?

ほんの2週間ほど前の閉店だったようで、コロナの影響にしては遅いようにも感じたけれど
とにもかくにも休業でもなく移転でもなく閉店

仕方なく別の店に向かう

頻度こそ多くはなかったものの、通った年数でいくともう10年以上は経っている

寂しいとか悲しいとか感傷的な気持ちが湧き起こるほどの存在ではないけど

何というか何ともいえない気持ち

県内に数店あるその店は個人店より間口が広く、大チェーン店のように無個性でもなく、地元の食材取り入れたりして、なかなかメニューも好ましかった

その立地と早い時間から飲める店ということもあいまって、意外な曜日と時間帯に行ってもけっこう混んでたりした

あんなに混んでたのに閉まっちゃうなんて、と連れは言う

確かに換気はよくなさそうなテナントではあった

コロナがなかったら今もやっていただろう

代わりになる店探さなくちゃ、と連れは言う

可哀想でも残念でもなく

何というか何ともいえない気持ち


別の店で飲んで
帰り道

行きに通った時は営業していなかった、とある店に灯りがついていた

「あ、ここ、営業してる」

焼き鳥、の文字がある、それこそ個人店っぽい店

「そういえばここ、昔、入ろうとしたことがあったな」

そう、若かりし頃、会社員だった頃

取引先の営業さんがここで飲んだと聞いて、後輩と行ってみることにした
渋そうな店への憧れもあった
けれど
店の引き戸を開けた途端、溢れんばかりの年配サラリーマン
スーツの山に圧倒され、私は即座に戸を閉めた
混んでいたというのもあるけど、明らかに自分たちは場違いであった
とてもあの中に混ざれる気がしなかった

若かった

そして今

入り口には各種キャッシュレス決済可能のお知らせもあって
時の流れを感じる

よし、次の店の候補にしよう、と連れが言う

なんかちょっと笑えた
なんかちょっとほっとした

昔は入れなかったけど
今なら余裕で入れそう

無くなっていくものもあるけど
できるようになることもあるね

必要な変化
変化は必要

変わらないように見えても
変わらないものはないから

その店に行ってみるの楽しみだな

美味しいといいな

焼き鳥は好きなんだよ

ちょっと明るい気分になる

何というか、何とも、いえない気持ち。

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