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【特定重要物資】永久磁石における中国との競争力

特定重要物資の現状と取り組みを順次伺っています。
今日は私たちに身近な製品の製造に必要な3つの物資について聞いてみたいと思います。
最初に蓄電池について教えてください。

蓄電池というのは5G基地局やデータセンターなどのバックアップ電源に使われたり、IT機器の電源になったり、電動自動車や電動バイクのバッテリーなどに使われます。
今後の電化・デジタル化社会にも絶対不可欠な基盤です。
海外依存度が高いんです。
車に積む車載用の蓄電池は63%、家庭用の蓄電池は82%です。
ご家庭で再生可能エネルギーを活用されている方も絶対に必要ですけど、すごく海外依存度が高いです。
ということで、去年の12月に特定需要物資に指定をしました。

今年の4月と6月に、なんと15件の供給確保計画が認定されました。
これらの認定事業によりまして、車載用と定置用のリチウムイオン電池の生産基盤を整備する。
生産技術の導入、開発、改良をする。
車載用の円筒形のリチウムイオン電池の生産技術の導入、開発、改良をする。
セパレーターとかバインダーの生産基盤を整備する。
生産技術の導入、開発、改良をする。
バインダー材料もそうですし、電解液・添加材の生産基盤も整備する。
セルケース、セルカバーの生産基盤も整備する。
進化した生産技術の導入、改良、開発。
こういったことが実現する見込みとなっています。

デジタル化社会とかデジタル製品とか非常に身近な言葉ではありますけれども、それの材料に着目するということは今まであまりなかったですし、それがしかも限られた国から届いているという実態も知れました。
そして、それをカバーするための対策がなされていることも知れて、大変よかったです。
続きまして、永久磁石について教えてください。

永久磁石って言っても割とピンとこないかもしれないんですけれども、自動車などの輸送機器とか、産業機器、風力発電、電子通信機器、家電製品なども非常に幅広い用途に使われる、要はモーターの性能を決定する機関部品です。
もしも、日本が省エネ性能に優れた永久磁石モーターを供給できなければ、日本の自動車産業は深刻な競争力低下に陥ってしまう可能性もあります。
永久磁石の世界市場における日本と中国のシェアを見ますと、最新の2021年のデータで、日本が15%、中国が84%ということで負けています。
海外依存度なんですけれども、永久磁石の原料にはレアースが必要なんです。
このレアース原料についてみると、中国の世界全体シェアはネオジウムが91%、ジスプロシウムが100%ということで、世界全体が中国に思いっきり依存しているという状態です。
だから原料のところから本当は考えないといけないのですけれども、永久磁石については今年の8月に一件、供給確保計画が認定されました。
この認定事業によって、まず省レアアース磁石を量産化する技術の開発。
レアアースをそんなに使わないで永久磁石を作ろうと、それも量産しようということになっています。
それから、永久磁石の製造設備の能力を増強するという取り組みが始まることになりました。

さまざまな製品の製造現場で必要な工作機械、産業用ロボットについて、最後に教えてください。

工作機械や産業用ロボットは工業製品の製造プロセスで不可欠です。
工作機械、産業用ロボットの活用が不可欠と想定されている工業製品や業種の割合というのは、製造業の名目GDPのうち約5割を占めているという統計があるので、半分の製造業では絶対に必要なものです。
今のところ世界市場における日本メーカーのシェアは、昔よりは下がってきてはいるんですが、工作機械は44%、産業用ロボットは45%ですから強いんです。特に産業用ロボットはファナックや安川電機が有名です。
世界のトップ2ということで、日本が誇るメーカーです。
だけど、中国が中国製造2025という計画の重点分野に、CNC工作機械・ロボットを掲げて官民一体の取り組みを進めて、急速にキャッチアップしてきています。
ファナックがあって安川電機があって3番目だったKUKA、ドイツの会社が中国に買収されました。
ものすごい中国は根性を入れてるということですから、日本のメーカーとしてはさらに高度な技術を開発して、しっかりと日本国内で増産して、世界市場を抑えていくという必要があります。

まだまだ需要が伸びる分野なんです。
産業用ロボットなんかでも、人と一緒に人がそばにいて働いても絶対に怪我しない、人を感知したらパッと止まる、とっても優しい産業用ロボットもありますし、お弁当屋さんで働いている産業用ロボットもありますし、さまざまなところで活躍しています。
今年の6月と7月に、供給確保計画がなんと5件認定されました。
これらの認定事業でCNCシステムの生産基盤、これもしっかりと国内で整備しよう、サーボ機構やPLC、減速機の生産基盤も整備しようということで、かなり取り組みが進んでいくと思います。
日本が強い分野だからと言って油断したらいけないということで、頑張っていきます。
中国でもこれまで日本のメーカーが作っていたんですよ。
やっぱり心臓部であるソフトまで中国でやれと言われたら、なかなか日本のメーカーも困っちゃいますので、国産でしっかりと作っていく、また、有志国、同志国と連携して世界市場に打って出ていく、こういう取り組みが重要な分野です。

工業機械に産業用ロボットは日本では比較的強いというようなお話ありましたが、中国も伸びていますし、プラスアルファまだまだ伸びていく可能性のある分野ということで、日本がこれから注力していくということが分かりました。
全体を通じまして、電動車であったり、家電製品であったり、5G基地局まで、身近な製品に必要な物資の供給確保は急ぐべき課題であることが分かりました。

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