重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案の概要
経済安全保障版セキュリティ・クリアランス制度を創設するために、必要な重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案について伺います。
この法律案は、先週中に衆議院で可決され、参議院に送られました。
高市早苗代議士には、引き続き、参議院での国会答弁を頑張っていただきたいと思います。
先週、4月13日の高市早苗チャンネルでは、セキュリティ・クリアランス制度とは何なのか、なぜ経済安全保障版のセキュリティ・クリアランス制度が必要なのかについて教えていただきました。
今日は、重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案の具体的な内容を教えてください。
まず、左上の1なんですが、国は重要経済安保情報を指定する。
この重要経済安保情報とは何ぞやということなんですが、①②③で書いてあります。
最初の1番目は、我が国の経済活動を支える重要な基盤に関する一定の情報ということです。g
②なんですが、公になっていない情報であって、③その漏えいが我が国の安全保障に支障を与える恐れがあるため、特に秘匿することが必要ということで、この三要件を満たす情報を保有する行政機関が重要経済安保情報を指定するということになります。
概要の右上の2をご覧ください。
重要経済安保情報の管理と提供のルールを定めています。
ある行政機関が重要経済安保情報として指定した情報は、他の行政機関ですとか、同レベルの情報保全制度を整えている有効国などの外国、また政令で定める基準に適合する事業者、適合事業者といいます。
こういったところに対して提供することができます。
事業者に対しては契約に基づいて提供ができます。
国会に対する提供なんですが、政府から提出した原案では、今の法律を全く変えなくても存在する国会については秘密会に提供するということとしていたのですが、衆議院の内閣委員会でこの部分は修正されました。
現在特定秘密をチェックしている情報監視審査会というのが、衆議院にも参議院にも設置されています。
ちなみに私も情報監視審査会のメンバーでした。
そのような組織で、もしも重要経済安保情報をチェックしていただこうとすると、国会法を改正していただかなければなりません。
これは衆参議院運営委員会で国会法の改正案を作って出していただかなければなりませんので、政府の方から提出する法律案には、あえてそこは記入はしなかったのですが、衆議院の内閣委員会の修正の中で国会法を改正して、国会の中にも監視機関を作っていただくことが決まりました。
それから、同じように右上の2の下の方なんですけれども、重要経済安保情報に指定した情報を取り扱う必要がある人に対しては、ご本人の同意を前提として国が調査をして適性評価をするということになっています。
これがいわゆるセキュリティ・クリアランスです。
この適性評価を受けてクリアランス・ホルダーになった方は、行政機関が保有する重要経済安保情報を活用するお仕事や、外国から秘密指定で提供された情報を使う国際共同研究などに参加できることになります。
概要の左下3に罰則が定められています。
重要経済安保情報の漏洩と不正取得につきましては、5年以下の拘禁刑、もしくは500万円以下の罰金、またはこれを併科するとなっています。
5年以下の拘禁刑という言葉、皆さんもうご存知だと思うんですが、来年の6月から改正された刑法が施行されます。
懲役刑というものはなくなりまして、拘禁刑というものになります。
ですから前もってこれ拘禁刑と表現させていただきました。
それからその下にあるように国外犯、外国でやらかしても処罰をする。
それからその下に法人の業務に関して漏洩とありますが、会社ぐるみの漏洩や不正取得をした場合も罰金刑を課すという内容になっています。
特定秘密保護法は防衛、外交、スパイ防止、テロリズム防止の4分野に限定しており、トップシークレット級やシークレット級の情報を守っているわけですが、この法律案によって特定秘密保護法ではカバーできないコンフィデンシャル級の経済、技術などの情報類型がカバーできるようになることがイメージできました。
重要経済安保情報としては具体的にどのような情報が指定されますか?
重要経済安保情報の定義については先ほどの図で見ていただきましたが、法律案の第3条1項で重要経済基盤保護情報であって公になっていないもののうち、その漏洩が我が国の安全保障に支障を与える恐れがあるため、特に秘匿することが必要であるものという、この3要件に該当するものと規定をいたしています。
ここで出てくる重要経済基盤という言葉なんですけれども、これは我が国にとって重要なインフラとサプライチェーンのことです。
この法律によって私たちが守ろうとしている重要経済基盤保護情報というのは何かということについては第2条4項で規定をしています。
第一に外国から行われる行為に対する保護措置やこれに関する計画とか研究、これはいわゆる我が国の手の内に関する情報ですから、これが漏洩してしまうとそれを逆手に取った行為がなされる恐れがあります。
第2に重要経済基盤の脆弱性や革新的な技術ということです。
つまり日本のすごく重要なインフラがあると、電力やガスや水道もそうですけれども、航空とか鉄道とかいろいろあります。
これが例えばここに脆弱性があるとか、それを克服するための革新的な技術があるというようなこと。
こういったことというのはいわゆるターゲットとなる情報そのものになりますので、これが漏洩しますと脆弱性をついた行為がなされる恐れがあります。
第3に保護措置や計画や研究に関して収集した外国政府や国際機関からの情報。
外国政府や国際機関がそういう情報を提供してくださる場合もあるわけです。
これが漏洩してしまうと、我が国の情報保全に関する信頼は失われてしまいます。
その提供してくれた外国との信頼関係も損なわれる恐れがあります。
第4に我が国の情報収集能力に関する情報です。
これも漏洩すると、我が国の実力が明らかになってしまいます。
そんなにひどい実力という意味ではないのですけれども、どういう形で情報収集をしているのか、この能力に関する情報というのは非常に大切なものです。
さらに具体的に重要経済安保情報を指定していくということにつきましては、この法律案が可決して法律として成立した後で、政府全体の統一的な運用基準を作成します、ということを法律案の中に規定しています。
これは何でかと言ったら、それぞれの省庁がバラバラな基準で、これは重要経済安保情報ですと指定されちゃうと、あれもこれも指定されるということになったり、それから本当に必要なものが指定されないということが起きるので、こういうものをきちっとこういう形で指定しましょう、という統一的な運用基準を作成しますので、法律案が可決成立したらすぐにその作業にかかるんですけれども、運用基準で指定対象となる情報の範囲がかなり明らかになってまいります。
それでも今の時点でどういうものが想定されるのということ、これもよく聞かれます。
だからあくまでも現時点での想定でしかないですけれども、やはりサイバー脅威・サイバーアタックの脅威ですとか、それからそれをはね返すための対策に関する情報というのが入ってきます。
あと規制制度の審査に関する検討とか分析に関する情報も入ってきます。
このチャンネルでもこれまで経済安全保障の推進法について、基幹インフラ制度のご説明をしてまいりました。
基幹インフラの事業者、とっても私たちの暮らしや産業に必要な役務を提供してくださっている事業者が、新しい設備を導入しようとかいう時に、前もって国が審査をする制度、これが2024年の5月からスタートします、ということはお話をしました。
この審査をして新しく導入する設備のここに脆弱性があるというようなかなり具体的な詳細な情報、これはあまり外に出ない方がいいです。
その事業者に対してこの設備のこの部品は使わない方がいいと思いますとか、他のメーカーの設備の方がいいんじゃないかと思いますと、国の方から連絡をすることはあっても、国の中で政府が分析をしたその本当の脆弱性の肝になる部分、この情報というのはこれはやっぱり重要経済安保情報に入ってくるんだろうと私は想定しています。
それから産業技術戦略のかなり機微な部分であったり、サプライチェーン上の脆弱性に関する情報、これもかなり絞り込まれますけれども、サプライチェーン上の脆弱性に関してはこれまでもこの番組でどういう物資が今海外に依存してますよとか、そのためにどういうプロジェクトをスタートしてますよ、ということは皆様にお伝えをしています。
それ以上に機微な情報、サプライチェーン上ここがどうしてもという機微な情報というのが出てきますので、そういった情報は多分指定されていくんだろうと思います。
それからもう一つは国際的な共同研究、これはデュアルユース技術に関する研究に関する情報です。
こういったものが今のところ想定できると思っています。
特定秘密保護法が施行されて10年になりますが、当時は激しい反対運動があり、政府が都合の悪い情報を指定して隠すのではないかと批判されていたと聞きました。
今回の法律案ではそのようなことを防ぐ仕組みがあるのでしょうか?
施行されて10年ですけれども、当時は原子力発電所で事故が起きたときに、政府が特定秘密保護法を悪用して事故があった事実を隠蔽するのではないかというようなご批判までありましたが、結局10年間実際にそんなことは起きていません。
原子力発電所というのは民間事業者ですから、民間が持つ情報というのは対象にならないわけです。
あくまでも政府が保有する情報ということを前提に保全措置をかけていますので、そういうことは起きていないということです。
政府が都合の悪い情報を隠すのではないかということは、やはり情報保全制度というものを議論するときに絶対に出てくる疑念だと思います。
重要経済安保情報として指定できる三要件については先ほどお話をしたとおり、その三要件に該当しない限りは指定できないんです。
また法律になった場合にすぐに取り掛かる統一的な運用基準では、絶対に書き込もうと思っているのは、公益通報などを通じて発覚した行政機関による法令違反の事実を隠蔽を目的として重要経済安保情報に指定するということは明確に禁止する、その規定を入れ込む予定にしています。
さらにこの重要経済安保情報を一回指定したら、だいたい5年を超えない範囲で重要経済安保情報ですよということになって、その後も指定を続けて保全せずならない場合は5年ごとに延長するかどうかというのを判断していて、30年を超えてもまだ指定しておかないといけないときには、これは閣議で決めなければいけない、その理由についてもきちっと明確にせなければいけないということになります。
国際社会で常識的になっているのは、さらに60年ぐらい保全しておかないといけない情報というのもあるわけです。
どういうことかといったら、日本に情報を提供してくれている情報源の方がまだ生きてらっしゃるというときに、その方の身が危険にさらされるとか、あと海外から外国政府から、これは60年間絶対に秘密に指定しておいてくださいという条件付けで提供された情報とかいうのがありますので、そういう意味では指定期間についても法律上に細かく書き込みました。
でも、今もう技術の進歩ってむっちゃくちゃ早いので、5年を超えない範囲、まず5年で指定をしたとしても、2、3年経ったらわりともう皆知っている情報、つまりさっき言った三要件の公になっていないものというのを満たさないような情報になっている可能性もありますので、要件を書いたらすぐに行政機関の長は速やかにこれを解除するということになっています。
そういう指定とか解除というのをきちっと各行政機関がやっているかどうかというのは、独立公文書管理監が行う、チェックを独立した立場でやっていただく。
それでもダラダラと指定を続けているとか、要は解除をちゃんとしないとか、指定すべきものでもないような情報を指定しているような場合は、内閣総理大臣がその行政機関の長に対して説明を求め、ちゃんと改善を要求するというような仕組み、何重にも指定についてはチェックをかけていますので、そこはご心配いただかなくても大丈夫だと思っています。
この法律案について、民間事業者がいたずらに幅広く対象となるのではないか、と心配している企業もあると思いますが、大丈夫なのでしょうか?
この法律案では政府が保有する重要経済安保情報に触れるということを必要としている業務を行う事業者で、そのような情報の提供を受けるということについて、事業者が自分から意思を示して、政府と合意して、しかも契約に至ったものを対象としています。
ですから、割と手上げ方式です。
政府の調達に参加して、そこで重要経済安保情報が取り扱われるかもしれないと言う時に、私は重要経済安保情報を取り扱うような業務だけれども、国と一緒に仕事をしたいということで、手上げた事業者。
しかも、ちゃんと合意して契約をしますので、そういった事業者を対象にしています。
ですから、そのような情報に触れる必要がさらさらない事業者の方とか、情報提供を受ける意思のない民間事業者の方までが対象になるようなことがないので、いたずらに幅広く対象になるというご心配は不要です。
それからもう一点、民間事業者が独自に努力して開発して保有している先端技術があったとしても、ある日突然、国のお役人が訪ねてきて、御社の技術を重要経済安保情報に指定します、といったことも起こりません。
あくまでも国が保有する重要な情報でしたり、国が外国政府から秘密指定で受け取ったような情報などが対象になります。
例外があるとすれば、国から要請して民間企業が国と契約をして、調査分析の仕事をする。
例えば重要インフラの脆弱性について調査してほしいということで、国の仕事を受け負う、契約して分析をしていく。
その中で重要インフラの脆弱性が明らかになったような場合、明らかになるだろうということを前提に国は仕事を発注するわけですから、これはあらかじめ重要経済安保情報になります、ということをきちっと事業者に通知をする。
それをお知らせした上で仕事をしていただきますので、そういう情報は保全対象になる可能性はあります。
あくまでも国が保有する情報ということになります。
反対に積極的に重要経済安保情報を取り扱う各省庁の仕事をしたい企業や、政府間の国際共同研究開発に参加したい企業は、適合事業者になるためにどのような準備をする必要がありますか?
これもちゃんと法律案が可決成立して、法律が施行されるまでの間に様々な具体策を示していきますけれども、ただもう法律案にそもそも書き込んであることがいくつかあります。
つまり行政機関が事業者に重要経済安保情報を提供する場合に、契約で定めるべき事項というのを法律案の中に規定しているんです。
それは重要経済安保情報の取り扱いの業務を行わせる代表者ですとか従業者の範囲、これはもう最初から契約に書いておきましょうと。
Aという会社で3人ぐらい、この人とこの人とこの人が取り扱いの業務をしますというようなこと、その業務を行わせる方の範囲。
もう一つは、その情報の保護に関する業務を管理するものを指名しておくと。
ちゃんと社内できちっとした情報管理ができているか、それをチェックしていただく方、これも指名しておく。
それから情報の保護のために必要な施設整備を設置していただくということ。
それから従業者の方でクリアランスホルダーになって、この重要経済安保情報を取り扱う、そういう方に関して情報保護に関する教育をしていただくというようなこと。
それに加えてこの他、政令で定める事項という規定があるんです。
これが法律になった後、政令で定める。
国会で可決していただいた後、政令を定めないといけません。
その政令の中でまた細かくなっていくと思うんですが、現在、私が想定していることは、重要経済安保情報を取り扱う場所への立ち入りの制限とか、エリアに入るときに持ち込む機器の制限です。
これは大事だと思います。
それから重要経済安保情報を取り扱うために使用する電子計算機の使用制限というのは、これは特定秘密の方法でも同じようなものが書かれているんですけれども、これも必要だと思います。
それから緊急事態が発生した時、つまり情報が盗まれそうな機器がここまで迫っているような時には、もう書類ごと焼却してもらうとか、それから破砕してもらうということで廃棄していただくような、緊急事態が起きた時の廃棄方法ですとか、こういったことは定めていかなければと、私は想定しています。
特定秘密の保護法でも同じような立ち付けで、法律の中に細かく書いてあるんじゃないのですが、法律が成立した後に、やはり政令で細かくこういう要件を備えてくださいというのを書いていましたので、もうしばらく細かいことはお待ちいただきたいんですけれども、法律に契約で定めることと書いてある、こういったことについては是非ともチェックをしていただきたいなと思っています。
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