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経済安全保障版のセキュリティ・クリアランス制度が可決・公布

去る5月10日の参議院本会議で経済安全保障版セキュリティ・クリアランス制度を創設するための法律案が可決成立しました。
日本初の制度ができました。
今のお気持ちはいかがですか?

素直に嬉しいです。
2022年8月10日に経済安全保障の担当大臣になりまして、経済安全保障版のセキュリティ・クリアランス制度を日本にも創設するという決意を表明しました。
ところが当初はやはり政府内に私の発言を無謀だと考える空気が色濃くあり、また官邸・幹部官僚の一部がこれはダメだろうということで、反対しているということも聞いておりましたので、本格的な法律案作成作業に着手するまでには、かなり時間を要しました。
結果的には「作るぞ宣言」から約1年9ヶ月かかりましたけれども、それでも5月10日に新しい法律が成立し、そしてまた5月17日に交付されました。
とても喜んでいます。

以前法律案が重要広範議案となった場合、基本的には可決まで時間がかかる仕組みということをお伺いしました。
本会議では法律案の趣旨説明をされた後、本会議質疑で審議入りをして、内閣委員会で答弁、最後に本会議で採決というプロセスを衆議院と参議院の両院で繰り返されたので、とても大変だったと思います。
審議時間はどのくらいかかったんですか?

本会議での質疑答弁の時間を除きまして、衆参の内閣委員会でご審議いただいた時間というのが約44時間以上と聞いています。

これで一段落をして新しい法制度がスタートするのでしょうか?

一部の規定は交付日だった5月17日から施行されています。
その一部の部分というのは、これから運用基準などを作っていかなければいけませんから、そういった作業にかかるところだけで、新しい制度の主要部分というのは、交付の日から1年を超えない範囲内で、政令で定める日から施行するということですから、今から1年以内にこれが全ての効力を持つということになります。
ですから、むしろこれからが大変です。
法律の中に、これは政令で定める、また運用基準で定めると規定したこともいくつもありますし、まずは今月から有識者会議を設置して開催して、その上で政令案、また運用基準案を策定して、これを国民の皆様に見ていただく、ご意見をいただく、場合によってはそのご意見を見ながら修正する作業もありますが、パブリックコメントというのをした上で、最後は閣議決定するということになりますから、そこまで仕上げて初めてこの新しい法律が本格的に動き出すことになります。
1年以内となっていますけれども「1年もかけてられない」と思っていますので、もう少し早くということで、この歩みをスピードアップしていきたいなと思っています。

これから決める運用基準などには、どのようなことが盛り込まれるのでしょうか?

政府統一運用基準ということで、どの役所が重要経済安保情報を扱っても、またどの役所がそれを取り扱える方々の適性評価をするにしても、統一したやり方でしていただかないといけませんので、そのルールを定めていくということです。
ですから、まずは指定の対象となる重要経済安保情報、この細目を決めていく。
これはものすごく急いでやらなきゃいけないことです。
2つ目は、適性評価における評価対象者の権利をいかに保護していく。
特にプライバシーに関わることも調査の対象になりますので、そのための事項ですとか、それからこれまでもこのチャンネルで申し上げてまいりましたけれども、もしも適性評価を得られなかった、クリアランスホルダーになれなかったということをもって、会社の中で不利益の取り扱いを絶対に受けない、そういったルール、こういった細目をきちっと定めていきたいなと思っているんですが、いずれにしてもこれから有識者会議でご議論いただいて手順を踏んでいきますので、確定的なことはまだ申し上げられませんけれども、多くの国民の皆様にとって分かりやすいものにしたいなと思っています。

最後に改めて、法律が完成した経済安全保障版セキュリティ・クリアランス制度の効果として期待しておられることを教えてください。

おさらいになりますけれども、そもそもセキュリティ・クリアランス制度というのは国家における情報保全措置の一環です。
政府が保有する安全保障に関する重要情報を指定するということを前提に、当該情報を取り扱う必要があるものに対して政府が調査を実施して、信頼性の確認、つまり適性評価を行って、情報を漏らす恐れがないと認められたもの、つまりクリアランスホルダーになられた方が、当該重要情報を取り扱うという制度です。

情報の漏洩や不正取得をした場合には、罰則を課すということが通例です。
これも世界各国共通です。
日本では以前にも申し上げた通り、安倍内閣がまさに内閣の命運をかけて制定した特定秘密保護法が唯一のセキュリティ・クリアランス制度でした。
この特定秘密保護法ができて10年経つんですが、これが動き出してからやはりこの同志国・同盟国から、これまでとは全くレベルの違う確信に迫る非常に機微な情報が提供されるようになったという状態です。
ただし特定秘密保護法というのは、外交・防衛・特定有害活動の防止・テロリズムの防止、この4分野に限定されていましたので、この度いわゆるデュアルユース技術になるんですが、経済安全保障版のセキュリティ・クリアランス制度を作ったということなんです。

あくまでも諸外国と同じように保護対象というのは国が保有する情報です。
これを他所の国も一緒です。
サイバーセキュリティ対策とか重要なサプライチェーンの保護対策なんかも含む経済技術版の分野、そういった重要情報についても保護しながら民間事業者と力を合わせてこれを活用していけるという仕組みになったんです。

ですから考えられる効果としては、やはり第一にサイバー攻撃やサプライチェーン上の脅威といった機微な情報を、既にこの経済安全保障分野でもセキュリティ・クリアランス制度が定着している同盟国・同志国と共有をしながら一緒に対策を講ずることができる、これが1つ目の効果だと思います。
第2に、デュアルユース分野において民間事業者の参加する国際共同研究、この機会が増えていくというのが2つ目かなと思っています。
3つ目は日本政府のお墨付きともいえる信頼の証であるセキュリティ・クリアランスを保有することになる民間事業者の従業者の方々が、今後海外の政府調達にも参加できる道が開けること。
それからデュアルユース分野におけるB2B、海外の民間事業者同士の取引が可能になるだろうということ、それによって日本経済が成長するということを大きな効果として期待をいたしています。

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