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「経済安全保障版セキュリティ・クリアランス制度」を創設するための国会審議ダイジェスト④~衆議院内閣委員会~(3月27日審議入り)

住吉寛紀
対象者が中国籍の場合についてお尋ねいたします。

この中国には中国国家情報法や中国国防動員法といったかなり得意な法律が存在します。
この国家情報法は中国国内だけでなく中国国外でも適用され、第7条でいかなる組織及び個人も法律に従って国家の情報活動に協力し、国の情報活動の秘密を守らなければならない、国はそのような国民組織を保護すると定められています。
つまり中国国民・企業は政府の指示があれば情報を提出する義務があるということです。
そのような人物にクリアランスを付与すると本法案では当然情報を漏洩してはダメ、また国家情報法では情報を提供しないとダメというふうになり、対象者これはどちらに好んでも法律違反になり得るということです。
この評価の対象に国籍もありますが、このような事態を招く恐れがある中国籍の対象者にはクリアランスを付与しないという理解でよろしいでしょうか。
政府の見解をお伺いいたします。

高市早苗
この重要経済安保情報の取扱いの業務を行った場合にこれを漏らす恐れがないか否かは、第12条2項各号に掲げる事項の調査結果によって判断されます。
この適性評価は重要経済安保情報を漏らす恐れがないことについて行う評価ですから、適性評価の対象者が外国籍のものであるという事実は同項1号の重要経済基盤既存活動との関係に関わる事情として考慮要素の1つとなります。

委員御指摘の中国の国家情報法ですが、条文についてはご紹介いただきましたけれども、やはり自国民に対して国家の情報活動に対する支持や協力を義務づけている制度があると指摘されている制度があるということになりますと、適性評価に際しましてはこうしたことも考慮して情報漏洩の恐れの有無を判断することは必要だと考えています。

最終的には、調査結果に基づく総合評価によって判断をされます。

塩川鉄也
今回法改正でなく運用基準の見直しで経済安保分野を特定秘密に指定しようというのは、結果として法律によらず罰則の対象を広げるものになるのではありませんか。こういうことは認めることができないと思いますが、いかがですか。

高市早苗
今回特定秘密保護法の改正は行いませんので、特定秘密の範囲が拡大されることはございません。
特定秘密保護法の運用基準の見直しにつきましては、経済安全保障に関する個々の重要情報について特定秘密に該当するかどうかを各行政機関が的確に判断できるよう、現行の運用基準について法の別表に定める範囲内でより明確にすべき箇所や補足すべき箇所がないかを検討するものですので、何も行政の裁量で特定秘密の範囲を拡大するようなことではございません。

塩川鉄也
いやでも実際運用の見直しでやると言っているわけですから、秘密保護法の特定秘密の範囲を法改正はせずに運用見直しで拡大するということになれば政府の裁量で勝手に秘密の範囲を広げると言われても仕方がないと。
まさに何が秘密か、秘密という秘密保護法の危険性をはっきりと示すものではありませんか?

飯田政府参考人
お答えいたします。
ただいま大臣の方から答弁させていただいたとおり、今回特定秘密保護法、そしてその範囲を定めるものとして別表があるわけですけれども、それを改正するわけではございませんので、運用基準につきましてはあくまでも法の受検の範囲での検討ということだとは認識しています。

浅野哲
大臣にお伺いします。
適性評価の結果を事業者において重要経済安保情報の保護以外の目的に利用することを禁止するという法律のこの意図には賛同しておるんですけれども、いかにその実効性を担保するかというのがやはり重要だと思っています。
適性評価の結果に基づく従業員の不合理な不利益取扱いを禁止するというふうに大臣も仰っているんですが、この不合理な不利益取扱いって一体全体何なんだというところであります。
私もいろいろ同僚議員ですとか、あるいは産業界の方々とお話をしていますと、この不合理な不利益取扱いかどうかというものは、いわゆるこのある行為がハラスメント行為なのかどうかその判断が難しいのと非常に似た特性を持っているんじゃないかというふうに思います。
いわゆる主観的な判断が入ってくるという点でです。
ですので、この不合理な不利益取扱いの定義というものをもう少し具体的にイメージを持ちたいんですけれども、大臣が考えるこの不利益取扱いとは具体的にどのようなケースを想定しているのか教えていただきたいと思います。

高市早苗
まず前提として適性評価を受けることに同意しなかったことや適性評価の結果を重要経済音符情報の保護以外の目的で利用することは明確に第16条で禁止しています
今委員お尋ねの不合理でかつ不利益な取扱いといった表現は禁止されるこの目的外利用の代表例として挙げたのですが、具体的に申し上げますと不合理な解雇ですとか降格ですとか言及、それから自宅待機命令・配置転換などが考えられます。
ただこれを明確に判断していかなければなりませんので、従業者に対するどのような対応が禁止行為に当たるのかということについて、有識者のご意見を聞いた上で閣議決定もこの運用基準で明確に示してまいります。

浅野哲
今ありました目的外利用の禁止ということの実効性を担保するために、先ほど大臣答弁の中でも不利益取扱いについての通報相談窓口を設けるということを仰っていたかと思いますけれども、具体的にどこに設ける予定なのか、もう少し詳しく教えていただきたいと思います。

高市早苗
相談窓口ですけれども、まずは各行政機関に設けるということを考えていますが、この適合事業者の契約先である行政機関に相談するということに抵抗がある場合も想定いたしまして、制度所管である内閣府にも相談窓口を設けることを考えています。

浅野哲
ありがとうございます。
是非ここはこれから詳細な設計だと思いますけれども、是非そういった当事者の方がアクセスしやすい環境にしていただけるようにお願いをいたします。

続いての質問です。
個人でクリアランスを取得した方について、それ以降特定の行動を制約するというようなことは想定されるのか。
例えばSNSを利用しちゃいけないとか、この国に行ってはいけない、海外旅行のときには事前の許可制だとか。
私も特定機密保護法に基づいて情報の取扱をしている職場いくつかティアリングをさせていただいたところ、いくつかの職場ではそういったところも含めて配慮をした運営をしているという情報も聞きました。
本人達の自主的な取り組みなのかもしれませんけれども、政府としてこういった行動制限を求める可能性があるのかどうかその点について教えていただけますでしょうか。

高市早苗
適性評価を受けて情報を取り扱うことになった方に対して、SNSの安全な利用方法ですとか海外旅行に関しての注意事項についてお伝えすることは考えられますが、この法案の制度によって私生活上の自由を制限するということはございません。

浅野哲
ありがとうございます。

続いて組織を対象としたクリアランスについて伺っていきたいと思います。
先日の本会議の中では株主や株主取締役会などの組織的要件について、主要国の例や我が国の企業の実情・関係法例との整合性を踏まえながら現実的な制度を整備していくという答弁がありました。
諸外国の例であったり我が国の企業の歴史的な成り立ちであったり、こういったものを踏まえるということはそれはその通りなんだと思うんですけれども、じゃあ実際にどういった要件になっていくのかという具体的なイメージを持てる答弁ではありませんでしたので、今日の法案審議の中でもう少し具体的なイメージを持っていたらというふうに思っています。

高市早苗
適合事業者の認定のための基準の具体的な内容は今後検討することになります。
有識者会議でもここは議論になりました。
米国では組織的要件として社長や取締役会議長に個人のクリアランス取得を位置づけているんですが、こうしたことを日本にそのまま求めるのは相場感としては難しい、現在の防衛産業が置かれた実態などを踏まえるべきといったご議論もあり、結局最終取りまとめでは実効的かつ現実的な制度を整備するべきという記載になりました。
産業界から先日公表された提言でも、日本企業の実情においても留意しつつ諸外国に通用する制度設計のためにも官民での議論の継続を期待するということですので、引き続き検討しなければなりません。
具体的には事業ポートフォリオが日本と外国企業では違うということ、日本の方が大きいということですとか、あとはやっぱり会社法です。
会社法でアメリカのようにクリアランスホルダーのみで構成される特別な委員会を取締役会の下に設置してクラシファイド インフォメーションを管理しているというようなことは日本の会社法で考えますと、取締役会が経営の最高意思決定機関と位置づけられているので、他の委員会が取締役会の権限を超えるような感じで事業について意思決定することはできませんから、そうすると会社法を改正しなきゃいけないということになりますので、やはりこの日本の企業の特性とか実態も見ながら、しかも実効性のあるものということで、今しばらく検討をさせてください。

浅野哲
現状の課題意識も含め答弁いただきありがとうございます。
引き続き委員会の中でも議論を深めていきたいと思います。

緒方林太郎
最後よろしくお願いいたします。
重要経済安保情報の定義について、まずお伺いをしたいと思います。
先ほどから多くの議員の方々が政府が保有する書類だと情報だということを午前からずっと質問されておられるんですけど、私高市大臣の答弁を聞いても、だから当然のように行政機関が保有する情報に限定されるというふうに思えなかったんです。
大臣が挙げたのが第3条の1項の定義規定のところ、3要件が当てはまるということ。
そして第3条の2項で表示をすること、そして第5条の取扱いをする職員の範囲を定める保護措置、この3つを挙げられたわけですが、これをあえて全部聞いたとしても、それでも行政機関の保有の書類に限定されるというふうに思わなかったんです。
ただそうですね、と聞いてもまた同じ答弁が返ってくると思いますので少し聞き方を変えたいと思いますが、行政機関保有の書類であるということを法文に書き込んだら何か問題が生じるというふうに思われますか?

高市早苗
この法文で十分にこれは行政機関保有の情報であると読めると私は考えています。
今委員が仰っていただいたことに加えて、罰則の対象についても行政機関の職員のほか、当該行政機関か6条1項によって提供を受けた他の行政機関ですとか、それから10条1項により提供を受けた適合事業者等において取り扱いの業務に従事するものに限られ、例え行政機関の長が民間事業者から受け取って保有するに至った情報を指定したとしても罰則等の効果はもともとこれを保有していた民間事業者には及ばないということですので、これは行政機関が保有している情報ということが読めると考えています。

緒方林太郎
先日の鈴木英敬議員への質疑の答弁で、私は前々から問題意識として持っているものの中でこれは絶対おかしいと思っているものがあるんです。
それは先の経済安全保障法で特定重要技術、NEDOとJSTでファンドをつくって、そして研究をしていくというものですが、これの研究成果については独立行政法人の持っている情報ですので、この重要経済安保情報に当てはまらないという答弁がありました。
しかし、もともと特定重要技術の定義は将来の国民生活及び経済活動の維持にとって重要なものとなり得る先端的な技術であります。
これが漏洩する際に今の法律のままだと国家公務員法第100条における、一番軽いやつです。
1年以下50万円未満だったと思いますが、これの規制しかかからないというのは、私前回審議のときからこれおかしいと言っているんです、ずっと。
経済安全保障法の枠組みの中で今回の重要経済安保情報って位置づけられると思うんですけれども、その情報が特定重要技術の情報がこの重要経済安保情報にならないというのは、私これどう考えても語義矛盾だというふうに思うんですけれども、大臣いかがですか?

高市早苗
先ほど委員はこれは国が持つ情報であるということを明確にするようにという問題意識でいらしたと思います。
独立行政法人に関しましては、これは政府が保有する経済安全保障情報・重要情報を活用することを目的とする本法案の対象にはならないというふうにお答えをいたしています。
その情報を保護する必要がないのかといったら決してそうではなくて、どちらかといえばこれは独立行政法人が適合事業者として政府と契約を結んで、当該情報重要経済安保情報として保有させる、一緒に研究活動を行うというような場合は、むしろ適合事業者側と考えています。
そして独立行政法人がもともと持っていた独自の情報、これを保護するということになりますとやはり不正競争防止法、これは刑罰も10年以下の懲役というのもありますし、それからそれぞれの独立行政法人の設置法、これも設置法の中に職員もしくは退職した後もそうなんですが知り得た秘密を漏らした場合に1年以下の懲役というものもあります。
それから外為法もあります。
そういったもので、この情報の我が国の機微な技術の流出というものを抑えていくということとともに、現在研究インテグリティの確保に向けてかなり国立研究開発法人には厳しく依頼を申し上げており着実に対応が進んでいます。
そのような形で守っていくべきだと考えています。

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