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「経済安全保障版セキュリティ・クリアランス制度」を創設するための国会審議ダイジェスト①~衆議院本会議~(3月19日審議入り)

議長
この際内閣提出重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案及び経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律の一部を解説する法律案について趣旨の説明を求めます。

高市早苗
重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案及び経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律の一部を解説する法律案の趣旨について御説明申し上げます。

まず重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案についてその趣旨を御説明申し上げます。

この法律案は国際情勢の複雑化、社会経済構造の変化等に伴い経済活動に関して行われる国家及び国民の安全を害する行為を未然に防止する重要性が増大している中で、重要経済基盤に関する情報であって、我が国の安全保障を確保するために特に秘匿することが必要であるものについて、これを的確に保護する体制を確立した上で収集し整理し及び活用することが重要であることに鑑み、当該情報の保護及び活用に関し重要経済安保情報の指定、我が国の安全保障の確保に資する活動を行う事業者への重要経済安保情報の提供、重要経済安保情報の取扱い者の制限、その他の必要な事項を定めることにより、その漏えいの防止を図り、以って我が国及び国民の安全の確保に資することを目的とするものであります。

次に法律案の内容についてその概要を御説明申し上げます。

第一に行政機関の長は当該行政機関の所掌事務に係る重要経済基盤保護情報であって、公になっていないもののうち、その漏えいが我が国の安全保障に支障を与える恐れがあるため特に秘匿することが必要であるものを重要経済安保情報として指定することとしています。

第二に重要経済安保情報を保有する行政機関の長は我が国の安全保障の確保に資する活動の促進を図るために、一定の基準に適合する事業者に当該重要経済安保情報を利用させる必要があると認めたときは、当該適合事業者との契約に基づき当該重要経済安保情報を提供することができることとしています。

第三に重要経済安保情報の取扱いの業務は原則として適性評価において重要経済安保情報の取扱いの業務を行った場合にこれを漏らす恐れがないと認められたもので、なければ行ってはならないこととしています。

第四に適性評価は行政機関の長が当該行政機関の職員等について、当該者の同意を得て適性評価調査の結果に基づき実施することとし、適性評価調査は原則として適性評価を実施する行政機関の長の求めにより内閣総理大臣が一元的に行うこととしています。

第五にこの法律の適用に当たってはこれを拡張して解釈して国民の基本的人権を不当に侵害するようなことはあってはならず、国民の知る権利の保障に資する行動または取材の自由に十分に配慮しなければならないこととしています。

第六に重要経済安保情報の取扱いの業務により知り得た重要経済安保情報を漏らした者や重要経済安保情報を保有する者の管理を害する行為により重要経済安保情報を取得した者等に対する所要の罰則を設けることとしています。

以上のほか所要の規定の整備を行うこととしています。
なおこの法律案の施行期日は一部の規定を除き交付の日から帰算して一年を超えない範囲内において政令で定める日としています。

続きまして、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律の一部を改正する法律案についてその趣旨を御説明申し上げます。

この法律案は経済活動に関して行われる国家及び国民の安全を害する行為が多様化し、安全保障を取り巻く環境が変化していることを踏まえ、特定社会基盤事業として定めることができる事業に一般港湾運送事業を追加することで、特定社会基盤益務の安定的な提供を確保することを目的とするものであります。

次に法律案の内容についてその概要を御説明申し上げます。

特定社会基盤事業として定めることができる事業に一般港湾運送事業を追加することとしています。
なおこの法律案の施行期日は交付の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日としています。

以上が重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案及び経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨です。

冨樫博之
重要経済安保情報保護活用法案についてお尋ねいたします。
本制度については多くの与党が賛成した二年前の経済安保推進法の衆議院及び参議院の各内閣委員会における二重決議に記載されていました。
具体的には、国際共同研究の円滑な推進も念頭に我が国の技術的優位性を確保維持するため、情報を取り扱う者の適正について、民間人も含め認証を行う制度の構築を検討した上で、法制上の措置を含めて必要な措置を講ずるとの趣旨が明記されていました。
政府は令和4年12月に閣議決定された国家安全保障戦略においても、主要国の情報保全の在り方や産業界等のニーズも踏まえ、セキュリティ・クリアランスを含む我が国の情報保全の強化に向け検討を進めるとの方針を示し、令和5年2月には経済安全保障分野におけるセキュリティ・クリアランス制度等に関する有識者会議を立ち上げ、約1年間にわたる議論を行ってきたと承知しています。
並行して自民党としても累次の提言により一貫して制度措置を講じることを訴えてまいりました。

他方で本法律案をめぐっては対象となる情報の範囲が明確でなく、情報指定が再現なく広がってしまうのではないかといった声があります。
こうした懸念に対する本法律案の考え方を高市大臣にお伺いいたします。

高市早苗
冨樫博之議員からは対象となる情報の範囲についてお尋ねがございました。
まず本法案で保護すべき対象は重要経済基盤保護情報であって公になっていない者のうち、その老英が我が国の安全保障に支障を与える恐れがあるため特に秘匿することが必要であるという三つの要件に該当するものに限ることとしています。
ここでいう重要経済基盤保護情報については、我が国にとって重要なインフラと重要な物資のサプライチェーンの二つを重要経済基盤と定義した上でその保護に関わる四つの情報類型を明示し対象を絞り込んでいます。
さらに重要経済安保情報の指定などに関して統一的な運用を図っていくため、有識者に意見を聞いた上で作成した運用基準を閣議決定することとしており、こうした基準を通じて一層の明確化に努めてまいります。

冨樫博之
2023年7月の名古屋港におけるサイバー攻撃事案を踏まえ、政府内で検討が行われ法案の物流機能の安定的な提供に向けて本改正法案が提出されたものと承知しています。
速やかに本事案の対応がなされたことを評価いたしますが、改めて本改正法案の重要性について高市大臣にお伺いいたします。

高市早苗
また経済安全保障推進法の改正法案の重要性についてのお尋ねがございました。
我が国の貿易の99.5%は港湾を通じた海上輸送により行われており、港湾は国民生活及び経済活動を支える重要な役割を果たしています。
経済安全保障推進法の改正法案は2023年7月大規模のサイバー攻撃により、名古屋港においてコンテナの搬入搬出作業が一時停止する事案が発生したことも踏まえ、基幹インフラ制度の対象に一般港湾運送事業を追加するものであり、港湾における物流機能の安定的な提供の確保を図る観点から重要であると考えています。

堀場幸子
経済安全保障担当大臣にお尋ねします。
日本では本制度導入後クリアランス保有者数はどのような規模になると想定されていますか?
御答弁をお願いします。
資格の更新、資格の喪失、罰則の具体的運用及び身辺調査や資格付与を行う組織のありさま、例えば人数・予算・年間調査可能人数・外部委託の有無について可能な限り具体的にお示しください。
また申請や評価・方針といった手続きのデジタル化とその個人情報保護についてはどのようにお考えですか?

高市早苗
堀場幸子議員からはクリアランス保有者数の見込み、施行組織のあり方の詳細、個人情報保護やデジタル化に関する考え方についてお尋ねがございました。
適性評価の対象者数につきましては、今後の制度の詳細設計の中で各行政機関が指定する重要経済安保情報の件数、民間事業者への情報提供の方針、既存制度でクリアランスを受けている者との重複などを精査する必要がございます。
現時点で厳密な数字をお示しすることは困難です。
また法案の施行につきましては、内閣府と各行政機関が分担して担うことになります。
内閣府においては制度全体の運用や適性評価のための調査の実施などを担当し、各行政機関は情報の指定・解除・適性評価・適合事業者の認定などを担当します。
これらの業務を着実に実施するために必要となる体制・予算などについては施行準備を進める中で具体的な内容をしっかりと検討してまいります。
また適性評価にあたって収集する個人情報は、個人情報保護法などに基づいて厳重に管理することが非常に重要であり、データ管理をどのように行うかも含め適切に検討してまいります。

庄子賢一
我が国で特定秘密保護の取扱業務ができる人数は約13万2,000人と主要国のクリアランス保有者と大きな開きがあり、また保有者の比率では官が97%民が3%と民間事業者では情報保全の仕組みが定着していない現状があります。
そうした中にあって適性評価の実施、適合事業者の認定に関する統一的な運用を図るための基準を定めることが第18条に規定されていますが、施行にあたっては事業者、そして国民に対してのこの基準の明確かつ丁寧で分かりやすい説明と情報提供は極めて重要と考えます。
政府としてどのように対応されるか、高市内閣府特命担当大臣に御答弁をお願いします。

高市早苗
庄子賢一議員からは、まず適性評価の実施等に関する運用基準の説明等の必要性についてお尋ねがございました。
運用基準につきましては有識者の御意見を聞いて案を作成し閣議決定することとしていますが、適切な内容を定めた上で明確かつ丁寧に分かりやすく説明をするとともに情報提供をしっかりと行ってまいります。

庄子賢一
また日進月歩とも言うべき技術開発の進展など経済安全保障分野における変化の早さを踏まえ、新たに必要となる情報を柔軟に指定できるような制度設計が必要ではないでしょうか。
情報の柔軟な指定、そして解除の必要性と手法について高市大臣より方針をお聞かせ願います。

高市早苗
次に対処情報の柔軟な指定解除の必要性と手法についてお尋ねをいただきました。
本法案では本日の本会議で幾度か答弁を申し上げているとおり、三つの要件を満たせば重要経済安保情報に指定することとしています。
他方でこれらの要件のいずれかを満たさなくなった場合は速やかに指定を解除することとしています。
御指摘のとおり情報の指定解除に当たっては新たな技術開発の進展など経済安全保障分野における変化の速さを踏まえる必要がございます。
運用基準を策定するに当たっては有識者の御意見を聞いた上で柔軟な指定及び解除の必要性も考慮してまいります。

庄子賢一
さらには技術分野によってはスタートアップも制度に関わる可能性があり、イノベーションを加速させる意味からそうした企業に門戸を広げる視点が必要ではないかと思います。
企業のキャパシティによらず制度に参画できる支援をどう考えていらっしゃるか高市大臣に伺います。

高市早苗
最後にスタートアップ企業等に対する制度参画のための支援についてお尋ねがございました。
スタートアップなどの中小企業を含め民間事業者にとって適合事業者の基準を満たすということが少なからず負担になり得るという点は有識者会議の最終取りまとめでも指摘されておりました。
経緯や実態も踏まえて民間事業者等における保全の取組に対する支援の在り方について合理的な範囲内で検討していく必要があるとされています。
事業者支援の在り方についてはこうした指摘も踏まえて検討してまいります。

浅野哲
令和4年国民民主党も賛成する中で経済安保推進法が成立し、国家の保全対象情報として重要経済基盤に関する情報が追加されました。
これを受けて情報保全体制を強化する必要性が生まれ、今次国会において情報を保全できる人物を評価認定する制度の創設に至ったものと認識しています。
他方我が国には既に特定秘密保護制度があり、この制度が扱う対象情報の拡大や対象情報の重要度に応じた認定基準の多段階化など既存制度を拡充することで十分に実現できたのではないかとも考えますが、新法としなければならなかった理由について伺います。

高市早苗
浅野哲議員からはまず重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案に関して、既存制度の拡充ではなく新法とした理由についてお尋ねがございました。
官民での共同連携が重要となる経済安全保障という分野の特色を踏まえますと、重要な情報を政府内で取得するのみならず情報保全に関し信頼できる民間事業者にその情報を共有して活用することが重要であることに鑑み、特定秘密保護法とは別の法律によることとしたものです。

浅野哲
また民間人が重要経済安保情報を取り扱えるようになることで、どのような効果が新たに生じることが期待できるのでしょうか?

高市早苗
次に民間人が重要経済安保情報を取り扱えるようになることで、新たに生じる効果についてお尋ねがありました。
経済活動に関して行われる国家及び国民の安全を害する行為を未然に防止する重要性が増大している中で、例えば重要な物資に関するサプライチェーン上の脆弱性の解消に関する情報や機関的なインフラのサイバー脅威に関する情報などを必要に応じ事業者に共有した上で対策を進めていくことが必要です。
このため本法案によりまして、これらの情報の保全措置を講じた上で事業者に提供し共有することで我が国の安全保障の確保に資する活動を、より円滑かつ実効的に行えるようになることが期待されます。
また諸外国におきましてはセキュリティ・クリアランスを保有していることがいわば信頼性の証として認識されているような事例もあると指摘されており、例えばクリアランスを保有する我が国の民間事業者と外国の民間事業者との間で一定の情報のやりとりが円滑になることも期待されます。

浅野哲
重要経済安保情報及び特定秘密は当該情報の漏えいが我が国の安全保障に支障又は著しい支障を与える恐れがあり秘匿することを要する情報とされています。
この支障及び著しい支障とは、それぞれ政府内でどのような定義のもと扱われているのか伺います。

高市早苗
次に支障及び著しい支障がそれぞれ政府内でどのような定義のもとで扱われているのかについてお尋ねがありました。
安全保障に著しい支障を与える恐れとは、例えば安全保障のために我が国が実施する措置等の詳細やそのための能力が露見した場合、その間隙をついたり対抗措置を講ずるなど我が国に対する攻撃が著しく容易となるような場合や外国の政府などからの信用が著しく損なわれ今後の情報提供などが滞ることとなる場合を指します。
一方安全保障に支障を与える恐れとは、そのような著しいとまでは言えない程度の支障も含め安全保障の確保に支障が生じ得る場合を指しています。

浅野哲
経済安保推進法に基づき企業が国に回答した重要物資のサプライチェーンに関する情報や基幹インフラに関する情報が重要経済安保情報に指定されることはありますか?
また指定された場合政府は当該企業に対し何らかの情報保全行為を求めることはありますでしょうか?

高市早苗
次に経済安全安保推進法に基づき企業が国に回答した情報に関するお尋ねがありました。

民間事業者から提供され政府が保有することとなった情報を仮に重要経済安保情報に指定してもその指定の効果は当該民間事業者がもともと保有している情報には及びません。
一般的に政府が各事業者から提供された情報を集約したり分析するなどして作成した情報を重要経済安保情報として指定することが考えられます。
そのような場合におきましても、情報指定の法的効果が情報を提供した民間事業者に及ぶのは政府と秘密保持契約を結んだ上で政府が指定した情報を当該事業者が重要経済安保情報として保有するに至った場合に限定されます。

浅野哲
また経済団体等からは重要経済安保情報の対象範囲が広がりすぎることへの懸念や国際的な連携の可能性がある情報と国外への提供を避けるべき情報等を明確に整理することを求める声などが聞かれます。
これらの意見に対する政府の見解を伺います。

高市早苗
次に経済団体などからの情報の対象範囲に関する意見に対する政府の見解についてお尋ねがありました。
本法案で保護すべき対象は重要経済基盤保護情報であって公になっていないもののうち、その漏えいが我が国の安全保障に支障を与える恐れがあるため、特に秘匿することが必要であるという三つの要件に該当するものに限ることとしています。
ここでいう重要経済基盤保護情報については我が国にとって重要なインフラと重要な物資のサプライチェーンの2つを重要経済基盤と定義した上で、その保護に関わる4つの情報類型を明示し対象を絞り込んでいます。
さらに重要経済安保情報の指定などに関して統一的な運用を図っていくため有識者に意見を聞いた上で作成した運用基準を閣議決定することとしており、こうした基準を通じて一層の明確化に努めてまいります。
外国政府等への情報提供につきましては各行政機関の長が自らの所掌事務のうち我が国の安全保障に関するものを遂行するために必要があると認めたときに限って行うことができることとしており、重要経済安保情報を民間事業者から直接外国政府などに提供することは制度上想定しておりません。

浅野哲
第十二条二の一では調査事項について評価対象者の家族や同居人の氏名・生年月日・住所・国籍などが例示されていますが、その合理性には疑問があります。
国際結婚や海外渡航頻度の増加などを踏まえれば国籍や住所で一概に判断できるものではなく、またハニートラップなどのリスク評価の必要性についても指摘がされる中、米国では調査事項とされている性的行動・セクシャルビヘイビアなどは含まれず、条文中にこのような限定例示をした意図について説明を求めます。
また適性評価の有効期間が十年とされている理由も教えてください。

高市早苗
次に適性評価の調査事項及び有効期間に関するお尋ねがありました。
家族同居人に係る調査事項については重要経済基盤既存活動との関係を知る手がかりとして、家族同居人についても最小限の事項は一律に調査することを明示したものであり、特定秘密保護法と同様の規定としています。
なお適性評価は各項目の調査結果を総合して判断するものですので、ある一つの事項のみをもって判断するわけではございません。
また本法案で適性評価の再実施が不要となる期間を十年といたしましたのは、特定秘密保護法における同様の期間が五年であることを参考に、情報保全上のリスクと適性評価による評価対象者への負担との比較考慮により決定したものです。

浅野哲
行政機関の長や国務大臣、副大臣、大臣政務官官、房副長官、総理補佐官について適性評価を受けなくとも重要経済安保情報を取り扱うことができるとされている法的根拠はありますでしょうか?
この根拠の有無によらずそのような取扱いとした理由を教えてください。
いずれも総理が任命する役職です。
これらの人物が万が一にも重要経済安保情報を漏らした場合、第二十二条第一項に基づき五年以下の拘禁刑、もしくは500万円以下の罰金に処されますが、任命者である総理にも責任があることを明確にすべきです。
さもなくば政務の役職に任用する時点で適性評価同等のクリアランスを実施しておくべきと考えますが総理の見解を伺います。

岸田文雄
浅野哲議員の御質問にお答えいたします。
国務大臣等に対する適性評価についてお尋ねがありました。
議員御指摘のとおり本法律案においては国務大臣等も漏えいを行った場合には、最大五年以下の拘禁刑などの罰則が及ぶこととなります。
現行の特定秘密保護法において国務大臣等は特定秘密の取扱いの業務を行うことが当然前提とされることから、内閣総理大臣がその任命を行うに当たり必要な考慮がなされるとの考えに基づき国務大臣等を適性評価の対象外とされています。
本法律案においても特定秘密保護法と同様に、国務大臣等については内閣総理大臣がその任命を行うに当たり、必要な考慮がなされるとの考えに基づき適性評価の対象外としています。
なお国務大臣等の任命責任が総理大臣にあるということ、これは言うまでもないことであります。

浅野哲
個人の適性評価について事業者側の誰が結果を知るべきかという問題があります。
適性評価が受けられなかった場合に、その後の人事や評価、処遇などに悪影響を及ぼすことのないよう適性評価の情報や手続を一元的に担う専門部署を設けるなど公的な適性評価と会社の人事評価を切り分けるための社内体制整備が必要と考えますが見解をお聞かせください。

高市早苗
次に適性評価と会社の人事評価を切り分けるための社内体制整備についてお尋ねがございました。
適合事業者の従業者についての適性評価の結果については重要経済安保情報の取扱いの業務を担当できる従業者の範囲を明確にするために、適性評価を行った行政機関の長から当該事業者に通知することとしています。
通知された適性評価の結果をどの部署で管理するかは適合事業者により異なると思われますが、本法案では適性評価の結果を事業者において重要経済安保情報の保護以外の目的、すなわち一般的な人事評価などに利用することを禁止しています。
これが担保されるよう体制整備の在り方を含めしっかりと検討してまいります。

浅野哲
株主や取締役会の多国籍化が進んでいます。
株主や取締役会の構成も適性評価の調査事項となると伺っていますが、これに対しては情報が少なく事業者から不安の声も聞かれています。
事業者に対するクリアランスではどのような観点から調査評価を行うのか具体的に教えてください。

高市早苗
株主や取締役会の構成も含む事業者に対するクリアランスについてお尋ねがございました。
適合事業者の判断のための基準の具体的な内容は今後検討していくことになりますが、特定秘密保護法、施行令と同様に重要経済安保情報を取り扱う場所への立ち入り及び機器の持ち込みの制限、従業員に対する重要経済安保情報の保護に関する教育などの措置の実施に関する規定を政令で定めることを想定しています。
また第18条において有識者に意見を聞いた上で作成する運用基準には、適合事業者の認定に関する統一的な運用を図るための基準を盛り込むことを明記しており、民間事業者からの予見可能性にも範囲した運用を図っていくこととしています。
ご指摘の株主や取締役会などの組織的要件につきましては、有識者会議の最終取りまとめにおいて主要国の例も参照しつつ我が国の企業の実情や関係法例との整合性も踏まえながら、実効的かつ現実的な制度を整備していくべきとされていることなどを踏まえて検討してまいります。

浅野哲
本法案は既存のセキュリティ・クリアランス制度とのシームレスな運用を図ることを目的として制度全体を設計していると聞いていますが、政府が考えるシームレスな運用とは具体的にどのような効果として発露してくることを想定しているのでしょうか?
また将来的には、特定秘密保護法や特別防衛秘密に関する法律との一元化を図るべきではないでしょうか?
見解を伺います。

高市早苗
次にシームレスな運用の効果及び特定秘密保護法や特別防衛秘密に関する法律との一元化についてお尋ねがございました。
本法律案をお認めいただきましたら経済安全保障分野の情報保全制度は特定秘密保護法と本法律案との2つの制度に基づき運用されることとなりますことから、他国の理解を得る上でも情報保全を実効あるものにするためにも、両制度がシームレスに運用されることが重要だと考えています。
そのため制度的な仕組みとして、例えば特定秘密保護法に基づく適性評価において特定秘密を漏らすおそれがないと認められたものに関しては、本法案に基づく適性評価を受けずとも重要経済安保情報の取扱いが可能としています。
また本法律案が成立すれば施行に向けた準備を進める中で、必要に応じて特定秘密保護法の運用基準の見直しの検討を行うなど両制度のシームレスな運用を図ってまいります。
なお本法律案は経済安全保障に関する重要な情報のうち、一定の機微度のものについては民間事業者にも積極的に提供し活用するという考え方に基づき特定秘密保護法とは別の新法として制定しようとするものであり、今後特定秘密保護法や特別防衛秘密に関する法律との一元化を図ることは考えておりません。

浅野哲
また適性評価を受けた者の資格はその者が異なる業務分野に移動した後でも有効となることとされていますが、適性評価に一定の期間を要することなどを踏まえれば有資格者となった者が繰り返し登用されることが予想されます。
一方適性評価を受ける意思がありながら取得の機会に恵まれないものとの公平性にも目を向けなければなりません。
重要経済安保情報を取り扱う環境にいない者が適性評価を受けることを望んだ場合、事業者はこれにどのように答えるべきか政府の見解を伺います。

高市早苗
最後に適性評価を受ける従業者の範囲についてお尋ねがございました。
従業者に対する適性評価は適合事業者が政府との間で秘密法事契約を締結した後、重要経済安保情報の取扱いの業務を行うことが見込まれる従業者について行われることになります。
適性評価を受ける従業者の範囲については一義的には当該適合事業者に判断していただくものですが、その際個々の従業者についてご指摘のご本人の希望も含めてその必要性について判断いただくことはあり得ると考えています。
その結果従業者に新たに適性評価を受けていただく必要があれば、ご本人の同意を得た上で適性評価を実施することとなります。

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