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経済安全保障版セキュリティ・クリアランス制度とは?

セキュリティ・クリアランス制度についていろいろと伺っていきます。
高市早苗代議士は一昨年の8月に経済安全保障担当大臣に就任されたときに、経済安全保障版のセキュリティ・クリアランス制度を創設すると宣言されていました。
今週の衆議院本会議では制度創設に必要な重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案が、賛成多数で可決されました。

ありがとうございます。
しかしまだ衆議院の方で可決をしていただいたという段階です。
この重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案ですが、2024年2月27日の早朝に閣議決定をして、同じ日の夕方5時17時に衆議院に提出をされました。
3月19日に衆議院の本会議場で私から法律案の趣旨説明を行いました。
あと総理と私に対して各会派からご質問をいただいて答弁をして、そこから審議入りをしたということです。
その後は衆議院の内閣委員会に付託されましたので、内閣委員会で質疑と答弁がずっと続きまして、先週4月5日の内閣委員会で一部修正の上可決をしていただき、今週の衆議院本会議で多くの与野党議員の皆様のご賛同をいただきました。
同僚の衆議院議員の皆様、そしてまた徹夜続きで苦労してくださった役所の職員の皆様、またこの法律案づくりに大変なお力添えをいただいた有識者の皆様に心から感謝を申し上げます。
また視聴者の皆様からも応援のお声をたくさん頂戴しました。
ありがとうございました。
衆議院の本会議では可決をしたんですけれども、法律として成立するまでにはまだこれから参議院で始まる審議を経て可決していただくということが必要です。
加えてこの法律案は重要広範議案とされましたので、審議には一定の期間が必要ですので、参議院の可決成立というのはまだ少し先になると思っています。

先ほどお話に出ていた重要広範議案について教えてください。

重要広範議案というのは登壇議案、つまり衆議院だったら衆議院の本会議場に登壇して説明を始めるような登壇議案のうち、その内容が重要かつ広範で内閣総理大臣もこの本会議及び付託委員会で答弁すべきものとして、議院運営委員会理事会の合意に基づいて指定されるものです。
ですから衆議院の本会議では岸田総理も私も登壇して質疑をして答弁をするところから審議入りして、その後に法案が付託された衆議院の内閣委員会ではその他の日はずっと私が答弁をするのですが、最終日の内閣委員会には、最後の1時間に岸田総理も出席をしてくださり、委員会で可決していただき、その後週を超えて本会議で採決が行われました。
参議院においても重要広範議案という位置づけでありましたら同じ手順で進んでいきますので、成立までにまだ一定の期間を要するかなという状況です。

セキュリティ・クリアランス制度とはどのような制度なんでしょうか?

セキュリティ・クリアランス制度というのは国会における情報保全措置の一環です。
図の①にある通り、政府が保有する安全保障上の重要な情報を指定し、図の②にあります通り、当該情報にアクセスする必要があるものに対して政府が調査を実施して信頼性を確認する、つまり適性評価を行うということです。
そして、調査を受ける対象は国家公務員が多いのですが民間の契約事業者も含まれます。
調査の実施には、本人の同意が必要ということです。
図の③にあります通り、情報漏洩時の罰則も含む特別の情報管理ルールを設けるものです。

つまり国が指定をする安全保障上の重要情報を取り扱う必要がある方に対して国の調査を受けていただき、情報を持つ省庁が適性評価を行い、情報を漏らす恐れがないものとしてクリアランスホルダーになった方、クリアランスホルダーだけが重要情報を取り扱えるという仕組みです。

つまりセキュリティ・クリアランスとは国が持つ重要な情報を守る仕組みですね。
すごく重要な仕組みだなと思ったのですが、今まで日本には、セキュリティ・クリアランス制度がなかったんですか?

現在まだこの法律案が成立してませんので、現段階で日本に存在する唯一のセキュリティ・クリアランス制度は、激しい反対運動の中で安倍晋三元総理が内閣の命運をかけて成立させた特定秘密保護法を根拠法とするものです。
これも各行政機関の長が指定する特定秘密を扱う必要がある国家公務員や、一部の契約事業者の中でご本人が同意をされた場合にのみ各行政機関の長が調査と適性評価を行って、セキュリティ・クリアランスホルダーとなった方だけが特定秘密へのアクセス権限が付与されているというものです。
この特定秘密保護法の制定によりまして、日本の情報保全制度に対する国際社会の信頼がすごく高まりまして、同盟国・同志国との情報共有が格段に円滑になったと聞いています。
当時の菅官房長官は、確信に迫る情報が得られるようになったとコメントをしておられました。
そのほか外務省の方、防衛省の方国家安全保障局の職員なども、ずいぶん機微な情報のやり取りが諸外国との間にできるようになったということです。
つまりちゃんと調査を受けた人が、この情報を扱ってくれるという安心感・信頼感が諸外国との間にできたということなんです。
ただこの特定秘密保護法は、外交そして防衛、特定有害活動、つまりスパイ活動の防止、そしてテロリズムの防止、この4分野だけを対象にしています。
しかも特定秘密ですから、外国ではトップシークレット・シークレットに相当する、日本ではかつて機密情報とか極秘という、こういう分類に相当する、かなり機微な情報に制限をされています。
そうしますと、4分野だけですので民間の方のクリアランスホルダーというのは、そんなに多くはいらっしゃいません。
全体で国家公務員を入れて約13万人ですけれども、民間の方はそのうち3%ですから大体3,800人台ぐらいで今推移をしていますが、どういう方がクリアランスホルダーになっているかというと、その4分野限定ですので、防衛省のお仕事をされている防衛装備庁の仕事をされている、また外務省の仕事を手伝っておられたり、あと内閣官房の仕事に参加されている、そういった方々限定という状況になっています。

何で今、重要経済安保を保護活用するための法律案を出しているかということをお話ししたいのですが、日本も加入しているG7諸国とそれから友好国であるオーストラリアの制度と比較をしてみました。

表の一番左端ですけれども、これが現在の日本です。
特定秘密保護法ですから、防衛・外交・特定有害活動の防止・テロリズムの防止に関する事項に限られています。
特定秘密にアクセスする資格は、トップシークレット・シークレットに相当する、ごく一部の方ということです。

その隣のアメリカをご覧いただき、黄色いラインマーカーをしている部分があります。
どこの国も防衛外交とかテロとかスパイとか、そういった分野が当然のごとく秘密指定をされているのですが、この黄色いラインマーカーのところ、アメリカでしたら⑤国家安全保障に関連する科学的技術的経済的事項ですとか、⑦国家安全保障に関連するシステム・設備・インフラ・プロジェクト・計画・防護サービスの脆弱性又は能力、こういった分野が入ってきてます。
科学技術とか経済、そしてインフラの脆弱性、それをまたどうクリアしていくか、そういう形の能力、こういったものが指定されてまさに経済安全保障分野ががっつり入っています。

イギリス見てください。
これも日本の4分野は指定されているのですが、⑦英国経済への長期的な損害ということになりますと、これもかなり幅広く読めるというものになります。

そのお隣ドイツ。
これはもっと幅広そうです。
公共の利益のため、特に連邦または州の福祉を保護するために秘匿する必要のある事実または知見、とかなり幅広く取れるものとなっています。

そのお隣のフランスも政治軍事外交というのはあるんですが、その後のラインマーカー部分、科学経済産業等の分野で用いられる、それらが国防秘密に入っているということです。

そのお隣のカナダ。
ここはマーカーしていないのですが、ここは各省の判断により個々で情報の分類及び指定を実施ということですから、さらに幅広く各省が指定できる。

そのお隣イタリア。
①に政治と書いてありますが、②経済その後、金融・産業・科学・技術・健康・環境保護といったことで、国益に関する情報その他多数が対象です。

ここまでがいわゆるG7の国々です。

その右側、日本と友好的な関係を築いているオーストラリアなんですけれども、これも③を見ていただくと国の経済、④を見ていただくと国のインフラということで、かなり幅広いものになっています。

日本では4分野のみが情報保全の対象ですが、他の国では経済や技術やインフラに関する情報も厳重に守られているということでした。
そう考えると他の国の方が安心して重要な情報を取り扱える気がします。
このように制度が違うことで、日本には不都合があったのでしょうか?

日本企業はすごく優秀な技術を持っているにも関わらず、ほとんどの日本人・ビジネスマンや技術者の方は、セキュリティ・クリアンスを保有しておられません。
よって国際ビジネスの場において、不利益というのは顕在化しています。
私自身や経済安全保障政策を担当する職員たちは、有識者会議の場でしたり個別の場で、さまざまな企業からヒアリングを行ってきました。
経済界から伺った切実なお声をいくつか紹介したいと思います。

まず装備品と関係ない国際共同開発でセキュリティ・クリアンス保有者がいなかったために、情報開示を受けるまでに長い時間を要し、しかも契約に至らなかったことがある。
次に宇宙分野の海外政府からの入札に際し、セキュリティ・クリアンスを保有していることが入札説明会の参加要件になっていた。
だから説明会にも行けなかったという話。
そして、またデュアルユース技術に関する会議に参加する際、クリアンスホルダーオンリーだったので参加できず、最新のデュアルユース技術に触れることができないというお声。
そして、また外国の国防調達に当外国企業の下請けとして、外国企業の下請けとして参加しようとしたが、セキュリティ・クリアンスを保有していなかったため詳細な情報が渡されずに苦労したというお話。
また自社開発製品に海外からの機微な技術が搭載された際は自社にセキュリティ・クリアンス保有者がいなかったため、自社製品であるにも関わらず、双方で十分な情報交換ができなかった。
自分のところ、日本企業が開発した技術だったのに、製品だったのに、そうなって情報交換ができなくなると何かトラブルが起きたときのメンテナンスなんかでも、かなり支障が出てくるように思われました。
またある海外企業からビジネスの協力依頼があったが、機微に触れるということで十分な情報が得られなかった。
政府間の枠組みの下でそれぞれセキュリティ・クリアンスを保有している者同士で共同開発ができれば、より踏み込んだ情報が得られたのではないかというご意見。
またファイブ・アイズ間では情報保全制度が比較的似ているため、何々相当のクリアランスを保有している。
例えば私はトップシークレット相当ですとか、シークレット相当ですとか、コンフィデンシャル相当ですと、そういうクリアランスを保有していると。
この何々相当のクリアランスを保有しているということが共通言語として役立っていると思う。
他方こうした共通言語を持たない日本は、最初から同じ土俵に立てていない印象ということでした。

本当に切実なお声、みすみすビジネスチャンスを逃しているという、そして最新のデュアルユース技術に触れられないという、そういうお声をたくさん伺ってまいりました。

日本ではまだ制度が整っていないことによって実際に困っている声がたくさんあるんですね。
つまり日本企業が4分野以外の安全保障上、重要な技術分野で国際共同研究や外国の政府調達や民間企業間の取引に参加するためには新しい法制度を作ることが必要ということですか?

そうです。
やはりこの安全保障の裾野が、防衛とか外交とか伝統的な領域から、経済とか技術の分野にも拡大しましたので、経済安全保障分野においても情報管理には万全を期す必要性が高まっています。
今回の新しい法律案は一義的には日本の情報保全の強化というのが目的なんですけれども、やはり同盟国や同志国の信頼を得るということによって、日本企業のビジネスチャンスが広がるということを大いに期待いたしています。

先ほどの図を見ると国によって制度が違いますが、日本が情報保全の分野を経済・技術・インフラにも広げると国際的に通用するのでしょうか?

各国の制度というのは国によって法体系も含めて多様です。
しかし少なくとも制度の中核となっている事項は同じなんです。
つまり重要情報であることをちゃんと表示しているということ。
2つ目に調査による取扱い者を制限しているということ。
そして3つ目に情報漏洩時の罰則を規定している。
この3点は各国で共通しています。

私が通用すると断言できるのは、さっき申し上げた防衛・外交・特定有害活動の防止・テロリズムの防止、この4分野に限定している特定秘密保護法におけるセキュリティ・クリアランス制度でも、これは各国と全く同じ制度ではないです。
法体系も違いますが、さっき申し上げた制度の中核となるこの事項は同じなので、同盟国や同志国からも同じレベルの情報保全を日本ができる国だということで、信頼されて、その4分野については機微な情報を共有できるようになりました。

世界に通用する法律にするために、一昨年の夏から私自身も時間をかけて諸外国の大臣や政府関係者、そのセキュリティ・クリアランスの実務に実際に携わっておられた方々からもお話を伺い、意見交換をしてきたので大丈夫だと思っています。

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