小鳥「SSで学ぶ千早ちゃんでもSSが書けるようになるSS講座」

千早「春香、私、春香に書いて欲しいSSがあるのだけれど」

春香「うん。良いよ?……って、ならないからね?」

千早「そんな……」

春香「そもそもどうして私がSSを書いてるって
   知ってるのかな、千早ちゃん?」

千早「音無さんが教えてくれたの」

春香「小鳥さーーーーん!?」ガタッ

小鳥「はーい?」

春香「なに宅配業者が荷物を持ってやって来た
   みたいな感じで返事をしちゃってくれてやがるんですか!」

小鳥「え、えぇ……?」

春香「そもそも、どうやって私がSSを書いてることに
   気付いたんですか!?」

小鳥「ふふふ。事務所のPCから掲示板に投下するのは
   止めておいたほうが良いわよ?」

春香「あっ、しまった! 完全に抜かった……」ガクッ

小鳥「おほほ♪」

千早「そもそもSSってどういうものを指すのかしら?」

春香「何か分かって無いのにさっき知らずに聞いてきたの!?」

千早「一応、春香のSSは読んだのだけれど」

春香「うわぁああああああああ、恥ずか死ぬ!!!」

小鳥「SSというのはファンによるファンのための
   二次創作小説を全般的に指した言葉よ!」ババーン

千早「……二次創作、ですか?」

小鳥「まあ、手っ取り早く言うとキャラクターや設定を借りて
   自分なりの解釈でくっつけたいカップリングをくっつけ―――」

春香「わぁああああああああああ!? 語弊しかない!?」ガタッ

千早「カップリング……?」

春香「えっとね、千早ちゃん!
   SSっていうのは自分の好きに物語を作れるんだよ!」

千早「自分の好きに?」

小鳥「あまり好き勝手やりすぎると他のファンから反感買うこともあるから
   やり過ぎ注意だけど……」

千早「へぇ……あまり文章の勉強をしたことの無い私でも書けますか?」

小鳥「ええ、書けるわ!」

春香(断言しちゃって大丈夫なのかなぁ~……?)

小鳥「それより千早ちゃんが音楽以外のことに興味を持つなんて
   なんだか珍しいわね?」

千早「ええ。春香のSSを読んでみて私も―――」

春香「わぁあああああああああ!!!?」

千早「その元になった作品は知らないけど、十分楽しめたわ。
   特にあのラストシーンの―――」

春香「わわわわぁああああああああああ!!!!!!?」

千早「さっきから、春香のこのリアクションは一体……?」

小鳥「書き手にはよくあることだから気にしないで?」

千早「と言うことは小鳥さんも、もしかして?」

小鳥「えーっと、私は同人漫画がメインだけど」

春香「ああ、たまに事務服にトーンの切れ端が付いてますもんね?」

小鳥「そんな……!?
   ちゃんと事務所で作業するときは気を付けていたのに……!」

春香「トーンの切れ端が付いてたなんてウソですけどね」

小鳥「嵌められた……! 春香ちゃん、恐ろしい子……!」

春香「律子さんには内緒にしておきますね、ふふっ」

小鳥「お、オネガイシマス。それじゃあ気を取り直して
   千早ちゃんでもSSが書けるようになるSS講座をします!」

春香「わー」パチパチ

千早(今、私が猿と同列に扱われた気がするのは気のせいかしら……?)


  ―――千早ちゃんでも書けるようになるSS講座。


小鳥「まずは、SSには大まかに分けて二通りのパターンがあります!」

千早「あ、はい」

小鳥「まず、これまで私たちが繰り広げてきた会話の応酬で物語を成立させる
   台本形式と言われる書き方ね」

千早「台本形式、っと」メモメモ

春香「台本形式だと台詞の鍵括弧の前に
   キャラクターの名前を書くのが基本ですよね?」

小鳥「まあそれが台本形式と言われる理由ね。誰が発言してるかを
   明確にすることで簡略化できるという利点が大きのよね」

春香「状況説明が無いと誰が言ってる台詞なのか
   読んでる人が混乱しちゃいますもんね?」

千早「ああ、確かにそうかもしれないわね」

小鳥「そして、状況説明や登場人物の心理などを
   文章化するのが地の文形式ね」

千早「地の文ですか」

小鳥「まあ、普通の小説を思い浮かべてみたら分かると思うけど
  『誰が何をしたか』というのを文章で説明するのが主な使い方ね?」

春香「最近は台本形式と地の文をミックスするやり方もよく見ますね?」

小鳥「そうね。特殊に発展したSSならではのハイブリッドな書き方ね」

千早「じゃあ、私が読んだ春香のSSは台本形式なのね?」

春香「う、うん。そうなんだけど、
   私のSSを例に挙げるのは止めて欲しい、かな……?」

小鳥「それじゃあ、実際に台本形式で書きながら学んでいきましょうか!」

春香「おぉ、実践的ですね!」

千早「でも、いきなり書けるものなんですか?
   やっぱりちゃんと勉強してからの方が……」

小鳥「ふふっ、誰でもいきなり書けるのが台本形式の強みなのよ!」

春香「まずは基本の『5W』ですか?」


  ―――Who(誰が) What(何を) When(いつ) Where(どこで) Why(なぜ)したのか。


小鳥「更に、それに『Whom(誰に)』と『How(どのように)』を足した
  『6W1H』が物語の軸になるんだけど、そんなものはあと回しよ!」

春香「ええっ!?」

小鳥「春香ちゃん、『小説には無い、SSの利点』って何かしら?」

春香「えーっと、『読みやすさ』とか『気軽さ』ですか?」

小鳥「その要因はキャラや世界観の『共通認識』がなせる技なのよ!」


  共通認識について―――。


小鳥「例えば、私たちは『如月千早』という人物を知ってます」

千早「それはまあ、知り合いですから……?」

小鳥「えっ、知り合いのレベルなの……?」

千早「ふふっ、冗談です」

春香「おお、あの千早ちゃんが冗談を言えるように……!」

千早「『あの』って何なのかしら、『あの』って」

小鳥「お手本のような会話ね。
   こんな会話も共通認識があるからこそ、なのよ」

千早「ああ、なるほど。なんとなく分かりました」

春香「『みんなが知ってるという前提』で話ができるわけですね」

小鳥「書き手と読み手が共通の知識を持ってるからこそ、
   ある程度の説明は不要なのよ!」

春香「なるほど~」

小鳥「ああ、今の春香ちゃんの台詞、講座っぽくてイイわね!
   10点プラス!」

春香「やったぁ!」

千早(加点されると何か良いことがあるのかしら……?)」

小鳥「まあ、簡単に言うと、端折れるところは端折っちゃおう!
   ってことね!」

春香「急がば真っ直ぐ進んじゃおう!」


 『必要』か『不必要』か―――。


小鳥「はい。SSで言えばこれまでの会話は全部不必要です!」

千早「ええっ!?」

春香「断言しちゃうんですか!?」

小鳥「所謂、導入部分なんだけど、ここはスムーズに行きたいじゃない?」

春香「ま、まあ……」

千早「……?」

小鳥「私たちはさっきまで何を目標にしてきたのかしら?」

千早「『SSを書く』ということですか?」

小鳥「はい、そうです。『必要なもの』を『必要な分だけ』書けばいいのよ」

春香「えっと、つまり……?」

小鳥「導入はシンプルイズベスト!
   例えば、私たちはだいたい事務所に居ます!」

千早「ええ? ちゃんとアイドルの仕事に行ってますけど……?」

小鳥「SSでは、ってことね?」

春香「ああ、なるほど」

小鳥「何も説明が無ければ読んだ人は『事務所で会話をしてるんだな』と、
   勝手に思ってくれるのよ」

春香「それはそれで、悲しいと言うか何と言うか……」

千早「それもさっき言ってた共通認識ですか?」

小鳥「そうね。まあ、共通認識は思い込みや先入観でもあるわけだから
   それを逆手に取ることも出来るんだけど……、
   そういうのは書きながら学ぶしかないわね~」

千早「色々なアプローチの仕方があるわけですね」

小鳥「ええ。そして、これがさっき『5H』をとりあえず飛ばした理由なの」

春香「あ~。ある程度、時間と場所の説明を省けるのかぁ」

小鳥「それじゃあ、実際に私たちを登場人物にしてSSを書くとします!」

  

  千早「私、みんなのが登場するSSを書いてみたのだけれど」
 
  春香「SS、って……?」

  千早「SSと言えばSSよ!」

  春香「何の説明にもなって無いよ、千早ちゃん!?」

  小鳥「あら? どうしたの?」

  千早「SSを書いてみたんです! 音無さんも是非読んでください!」


小鳥「冒頭は(既存の有名SSからパクって)こんなものかしら?」

千早「すごい! ちゃんと私たちが会話してるわっ!?」

春香「落ち着いて、千早ちゃん。私たち人間は会話するのが普通だからね?」

小鳥「初心者が最初に書く台本形式なら、
   これくらいシンプルなほうが回しやすいと思うわ」

春香「ストーリーを回す、っていうことですか?」

小鳥「ええ。そしてこの時点で八割の読者が
  『このSSはシリアスでは無い。コメディだ』と、
   思うんじゃないかしら?」

春香「それも共通認識ですか?」

小鳥「ええ、これはいくつかあるパターンのひとつだから」

千早「共通認識って題材にする作品の知識だけじゃないんですね」

小鳥「ええ、こういう共通認識もあるの」

千早「ところで、春香、私ってこんなグイグイ来る性格だと
   思われてるのかしら?」

春香「えーっと、SSという世界の中での話だから
   あまり気にしなくて良いんじゃないかな?」

千早(否定はしないのね……くっ)

小鳥「じゃあ、千早ちゃん、ここからコメディSSを書いていきましょうか!」

千早「えっ!? 私はコメディじゃなくて、
   切なくて読み終わったあとにほろ苦さを感じるような物語が……」

小鳥「まあここは、授業の一環だと思って、ね?」

千早「そういうことなら……」

小鳥「じゃあ、尺の都合もあるので、ここで一旦この講座を締めたいと思います!」

千早「あの、まだ何も書いてないような……?」

小鳥「次から実践していく方向で何卒……!」

千早「まあ、なんでも、いいですけれど」

小鳥「自分のキャラを思い出したように突然クールに……!」

春香「『千早ちゃんでも書けるSS講座その2』に続きますよ!」


  春香メモ。『乙女よ、共通認識を最大限に利用せよ!』


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