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春に薄氷

4/7、春の訪れと共に、Anisoninとして新曲をリリースしました!
「春に薄氷(はるにうすらい)」という、いかにも季節に添い遂げたタイトルの曲です。
当初は「薄氷」というタイトルでリリース予定でしたが、いくら春の季語だとは言え、少し寒くかたいイメージが強いかな…という思想と、楽曲プロデュースの加藤さんの助言もあり、「春に」という文字を置きました。
季節にすべてを託すような詩の制作は、あまり経験がありませんでしたが、全体にまんべんなく春のやわらかさを塗り、染められたかなと思っています。

最近は、夏を思うほど気温が上昇したり、はたまた雨が冷たく降ったり、世界のすべてを吹き貫くが如く突風が吹いたり…とても目まぐるしい気候ですが、この不安定な感じも含めて、春なのだと思わされる日々です。

リリースからだいぶ時間が経ってしまいましたが、結構身近な人に、今までと違った角度から歌詞を褒めてもらえた印象の曲でしたので、解説とまではいきませんが、少しばかりの作詞関係の情熱を、ここに注ぎたいと思います。


実はこの楽曲、もう何年前だ…?と時を遡るのも不躾なほど前に、既に形が完成していた作品でした。
当初は「春を信じる」というタイトルで制作していて、歌詞でいうと、もっともっとドストレートなラブソングでした。

そもそも、音楽世界においての詩の存在意義について、未だ理解の及ばない部分があります。
音を耳にスムーズに運ぶ為のものなのか、感情を誰かと共有するものなのか、誰かに共鳴してもらう為か、絵画のような視覚的策略なのか、はたまたそのすべてなのか?
本当に心の小さく、まだ何も一人では遂行できないような頃の方が、何か訴えたいことや聞いてほしいことがあり、それを叫びに乗せるように歌っていたような気がします。
今はとんでもなくて、「伝えたい事」なんて、そんな烏滸がましいことを…と思うような弱気な心が存在しているようです。
成長なのか衰退なのか、これらどちらかに分類するもしないも、自分の思考次第な訳ですが、やっと個人的過ぎない味つけで、“私の歌詞”を発露できるようになった気がしています。
こう思えたのは、この「春に薄氷」の歌詞が完成した瞬間でした。

「春に薄氷」について、まず、一つの光景を思い浮かべていました。
既存の景色ではなくて、想像の光です。

例えば、1年に1度、非常に素晴らしい露を落とす草木があって、その至上な落下をただ待ちわびている季節がある。
例えば真夏の大地に、1日だけ顔を上向けする花があって、それと眼を合わすことを夢見る太陽がある。

概念と概念の恋、みたいなものって、言葉が伴わないので理解はできませんけれど、途轍もなく美しい全身の悦びが、世界一帯をさいわいへ導く力が、存在することを考えました。

こういう感じ、このイメージが、一言にまとめるのであれば私にとって、「春」という概念だなあと至ったのです。

一番好きな季節について、ガシガシ書きたてるということも是非やってみたいものですが、春の訪れは多分、誰にとっても暖かく、やさしい瞬間だと思うのです。
幸福で仕方がない感じ、でもそれに大袈裟な理由はなくて、ただぼんやりした、とろっとした、途方もない蜜のような、まどろみの中で眠るような、そんな春特有のイメージに、前述した概念たちの恋を喜ぶ心を植えました。

けだるいのに、かろやかな肌触りの、そんな言葉の華たちを、私の脳みそにあるお花畑から一本ずつ抜き取り、ゆるやかに結って花束にしました。

各種サブスクリプションサービスにてご視聴頂けますので、是非聞いてみてほしいです!


好きだけを連れて、どこか遠くへ旅に出たいお日柄です。
私は春が好きです!


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春に薄氷


ひとひらの風が 吹き抜ける予感
空は高く 朝日はつやめく
木枠の窓際 静かに結露する
季節は今 変わるのだろう

私は変わらず此処で
変わらぬ命で
あなたを思い惚けて
巡る春を信じている

もう一度生まれて もう一度探して
もう一度出会い 恋をして
綻ぶこの身を 全て捧げて
何度も あなたに恋しにゆく


ひとつぶの光 テーブルの上の
瓶を透かして ぬるめき微睡む
舌を転がってく 甘くてだるい
修道女たちの飴玉の味

忽ち香る 春が吹き込む命よ
記憶はいつも匂いが 思い出させるのでしょう

季節が満ちては 鼻先に宿る
それはあなたが愛した地球を
柔らかい宇宙へ埋める行為と
同じ優しさを携える

ユズリハの木から
揺れ降り立った美しい露が
背を返した風景の視軸を
見失わぬように

漏れ入る光が私を ゆり起こしている
どうかあなたが地球に
救われますように


余りの懐かしさに涙が溢れて
神様の国で愛しいひとと
ゆっくり落ちたいの 幸福の底へ
何度も あなたに

もう一度生まれて もう一度探して
もう二度とこの眼を離さないで
これ以上の喜びを知ることは無い
何度も 私に恋しに来て

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