見出し画像

第17夜 ヤマネって、知ってる?〜日本の動物のぞき見 第1弾〜

みなさん、こんばんは!
今回の主役は「ヤマネ」です。日本の森に住む小さなこの動物をさまざまな視点から見ていきました。

ぜひ最後までご覧ください!


1.ヤマネって、知ってる?

まずヤマネのことを考える前に、クイズを出題しました!
このなかでヤマネはどれか、分かりますか?

正解は、③です!
①はムササビ、②がモモンガです。
見た目は似ていますが、それぞれ特徴が違うということをお話しました。

2.ヤマネに立ちはだかる2つの問題

日本に生息する小さな動物、ヤマネ。
このヤマネたちは、大きく2つの問題で困っています。
それは、冬眠が出来ないということとロードキルの問題です。

冬眠が出来ない
年々暖かい冬が増えてきて、ヤマネたちが冬眠する気温にならないことが問題になっています。
ヤマネは英語で「眠りネズミ」と表記されるほど冬眠期間が長いことで知られています。

山形県のヤマネは5月の連休頃まで冬眠しているそうなのですが、年々彼らが眠れないほど暖かい冬になってきています。ヤマネは9℃を下回ると冬眠するそうなので、気温の上昇による影響が大きいことは想像がつきますね。

冬眠できないということは、単に眠れない、餌がない時期に起きてしまって餓えるだけでなく、身体のバランスも乱れてしまいます。

ヤマネは冬眠後に子育てをしますが、しっかり冬眠をしないと、きちんとしたサイクルで子どもを産み育てることができません。こうした原因が重なって繁殖などに影響をきたし、数を減らしていると言われています。

ロードキル
ロードキルとは、路上で野生動物が運転中の車と追突してしまうことです。ヤマネのような小さな動物はロードキルに遭って注目されることは少ないものの、確実に被害を受けている動物です。また道路によって生息地が分断されると、個体間の出会いが少なくなり、繁殖に影響が出ます。

このような、道路と野生動物の生態系の問題や解決策を考える「道路生態学」という学問も存在します。
道路生態学は、ロードキルだけでなく、騒音や水質汚濁、生態系への影響、排気ガスなど多様な視点からインフラと生態系を考える学問だそうです。日本でも道路生態研究会が発足され、精力的に活動をされています。

3.一緒に考えてみよう!

ここで、「冬眠できないこと」と「ロードキル」が野生動物にとってが大きな問題であることを知っていたか、またこのことを知ってどんなことを考えたかをお話ししました。

ロードキルの問題でいうと、オーストラリアのコアラも被害にあっています。道路ができて生息域が分断されることによる問題は世界中のどんな生き物でも起こっているというお話をしました。

また、冬眠の問題では、気候の変化による動物や植物の変化や、自然災害の増加もあるというお話もしました。

動物も人も守りたい。でも、インフラ整備も欠かせない。地球温暖化だからといって、冷暖房を我慢したら人も生活できないから難しい…といったことが話題に挙がりました。

ここで、ロードキルから野生動物を守る取り組みとして、アニマルパスウェイについて紹介しました。

アニマルパスウェイとは、道路や電車の線路などで分断された生息域を繋ぐために設置された動物のとおり道のことです。ヤマネミュージアムのある山梨県北杜市にもアニマルパスウェイが設置されており、ヤマネのほかにも様々な小動物が利用しています。

そのほかの動物も例に挙げると、タヌキの行動拠点になりやすい住宅地の緑地や水田には、ザリガニやカエルなどの餌が豊富にあります。そこではタヌキのロードキルが起きやすいです。また、側溝ではモグラやネズミが落ちて死亡する事故が起きています。

森の中の道路だけでなく、私たちの身近なインフラの中で密かに犠牲になっている動物たちがいます。

動物も守りたい。でも、人の生活も大切。それでは、私たちはどのように行動すればよいのでしょうか。

4.何ができるだろう?

ここまでは道路生態学やアニマルパスウェイ、事故対策など研究者や技術者の方々の活動を紹介してきました。でも、「じゃあ普通に暮らしている私たちはどうしたらいいのだろう?」と思った方もいるかと思います。

そこで、ここからは私たちにできる野生動物の保護活動について考えてみました。
一般的な活動としては、寄付・ビーチクリーン・お世話ボランティア・ゴミ拾いがあるかと思います。

では、こういった保護活動の先の「動物種」はどんな動物をイメージしますか?

私たちが挙げた一例を紹介します。

寄付だったらコアラ・スマトラトラ・ホッキョクグマ・カワウソ・ゾウ。
ビーチクリーンやゴミ拾いだったら、ウミガメ・イルカ・クジラ・カモメ。
お世話ボランティアはトキ・猛禽類・タヌキ・サギでした。

こうやって見てみると、共通点があることに気付きました。

哺乳類や鳥類が多いこと、ある程度大きな動物であること、見ためが目立つ、可愛い、生態系のトップに近い動物種であるということです。

今回の主役「ヤマネ」のように、小さくてあまり目立たない動物はみなさんも思いつきにくいのではないでしょうか。

このことから、次のようなことを考えることにしました。

5.アイデアを出し合おう!

保護動物でイメージしづらい「一見地味な動物たち」に注目してもらうには、どんなことをしたらいいだろう?ということを考えました。

最後に、一見地味な動物たちに注目してもらう活動として、いくつか例を紹介しました。

千葉市動物公園では、「地味鳥クエスト」というイベントが実施されていました。
これは、素通りされがちな地味な鳥たちをじっくり見てみよう!というイベントです。かなり好評だったようで、続編まで出ていました。

また、ヤマネについては、山梨県北杜市に「ヤマネミュージアム」というヤマネ専門の博物館があります。小さなヤマネを通じて、自然環境の大切さを伝える活動をしています。

アニマルパスウェイと野生生物の会では、ヤマネが主人公のアニメーション映像作品も制作しています。

6.おわりに

今回は、日本の森に棲む小さな動物「ヤマネ」から、野生動物や自然環境を取り巻く様々な問題を考えました。普段は有名なイメージしやすい動物に注目しがちですが、生態系は目につきやすい生き物だけで形作られているわけではありません。
人の生活も動物の生息地も守っていくために、私たちに何ができるのかを考え続けていきたいですね。

7.参考文献

東京ズーネット
https://www.tokyo-zoo.net/encyclopedia/species_detail?species_code=375

山形新聞「第2部・森と林(7・完) 小さなヤマネの警告」
https://www.yamagata-np.jp/feature/seitaikei_crisis/kj_2023033100764.php

盛岡市動物公園 ZOOMO
https://zoomo.co.jp/animals/j-dormouse/

ヤマネ・いきもの研究所『野生動物のロードキル』が発刊されました
https://www.yamane-ikimono.org/news/2023/%E9%87%8E%E7%94%9F%E5%8B%95%E7%89%A9%E3%81%AE%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%89%E3%82%AD%E3%83%AB/

世界の類似例 〜ヤマネブリッジ 詳細〜
https://www.animal-pathway.jp/whatAP_yamaneBridge.html

環境省グッドライフアワード2015
アニマルパスウェイ研究会 森と命を繋ぐ歩道橋「アニマルパスウェイ」の開発と普及
https://www.env.go.jp/policy/kihon_keikaku/goodlifeaward/report/2015_01/

『保全生態学研究』の掲載論文に見られる研究対象の偏り
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hozen/17/2/17_KJ00008327543/_pdf

絶滅危惧種の保護指標は“かわいさ”ではない
https://wired.jp/article/animal-conservation-metric/

野生動物と共生できる交通インフラを目指して-ロードキルゼロを目指して-(日本大学理工学部)
https://www.cst.nihon-u.ac.jp/about/public_relations/gakubu_guide/2023/book/pdf/26.pdf

第20回 「空港における野生生物マネジメント(その1)」(一般財団法人港湾空港総合技術センター)
https://www.scopenet.or.jp/main/columns/kukoinfura/No20.html

風力発電は学問の「総合格闘技」、人にも生態系にもやさしい風力発電システムをつくる(東京大学先端科学技術研究センター  飯田 誠 特任准教授)
https://www.rcast.u-tokyo.ac.jp/ja/research/frontrunner_iida.html

清泉寮 やまねミュージアム 日本で唯一のヤマネの博物館
https://www.seisenryo.jp/spot_yamane1.html

「約束の森」~ヤマネ物語~
https://www.animalpathway.org/anime/

人気動物の影に隠れた地味で目立たない鳥たちを探す、園内散策ラリーを地味にひっそり開催中!
https://www.city.chiba.jp/zoo/event/202211_1event.html



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?