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第8夜 ユキヒョウと獣害

2022年2月22日は、にゃんが続くスーパー猫の日!
猫にちなんで、ユキヒョウをテーマにお話しをしました。

1.ユキヒョウはどれでしょう?

まず、ユキヒョウがどんな動物かを知っていただくために、クイズを出題しました。

この中のどれだと思いますか?

正解は左です!
みなさんは分かりましたか?

白っぽい毛色に、特徴的なまだら模様。そして、もふもふのしっぽが目を引きます。

この太いしっぽは、崖や岩場を登り降りするときにバランスを取る役割を持っています。狩りでは、岩場の上から飛びかかって獲物を捕らえています。

ユキヒョウの生息地は、高山や険しい山岳地帯にあります。
ヒマラヤ山脈からアルタイ山脈にかけて続くユーラシア高山の生態系で頂点にいる動物です。

また、夜行性であり、一頭で広い縄張りを持つため、その姿を目にするのは簡単なことではありません。
そのため、生息地近くに住む人々のあいだでは、神秘的な動物として畏怖の対象となっていました。

2.ユキヒョウと人との関わり

ユキヒョウはもともと数が少ないのに加えて、現代ではさまざまな理由で数を減らしています。

1980年代までは狩猟が許されていたため、トロフィーハンティングの標的になっていた時代もありました。また、美しい毛並みは毛皮として利用され、薬として食べられていました。さらに、狩りに挑んで殺すことで自身の強さを示すことにも利用されていました。

そのほかにも、数を減らしているのには理由があります。

地球温暖化の影響で高山の気温も上昇したため、これまでよりも高い標高の地域でも家畜の放牧ができるようになりました。それにより、放牧地が広がり、家畜の数も増加しました。

このことから、ユキヒョウの生息範囲にまで放牧地が広がってしまい、ユキヒョウと家畜の接触が増え、結果的に家畜を襲うようになります。

人々はこれに怒り、ユキヒョウを殺すということが起きています。

ユキヒョウは特に2才くらいの馬など、これから利用できるというときの家畜を襲うため、ますます人々からの恨みをかってしまっているのです。だからと言って、現地の人も家畜をユキヒョウから守る対策を(手段が分からなくてか、)しておらず、ユキヒョウとヒトの関係をますます悪化させていました。

3.もし、あなたがユキヒョウの生息地に近い場所で暮らす村人だったら?

ユキヒョウの現状を共有したところで、もしあなたが現地で暮らす村人だったら、というロールプレイングをしました。

以下が、あなたに起こるストーリーです。

ここで補足として、
なぜ父親がユキヒョウだということが分かったかという理由を2つお伝えしました。

まず1つ目は、ユキヒョウは狩りが成功した場所で何度も狩りをすること。
もう1つは、獲物の頭だけを残して食べるという特徴があるからです。
村人は、この特徴を知っているのでユキヒョウの仕業だということが分かったのです。

このストーリーを踏まえて、私たちが考えた選択肢をいくつか見ていただきました。

これらを踏まえて、参加者さんとお話しをしていきました。

ユキヒョウから家畜を守るために、ほかにどんな対策ができそうか?という話や、実際の保全活動では柵を立てたり、小屋を作る支援をしていることなどをお話しました。

また、現地の人々はユキヒョウは祟りを知らせる者と考えていて、ユキヒョウが家畜を襲うと数日後に伝染病が流行る、恐ろしいものを持ち込むとして畏れています。
そういった、文化や思想の違いも含めてお話をしていきました。

そして、視点を変えて次のようなロールプレイングもしました。

4.もし、あなたがユキヒョウの研究者だったら?

今度はユキヒョウを守ろうとする研究者の立場になって、参加者さんと一緒に考えました。

以下が、あなたに起こるストーリーです。

参加者さんには、選択肢なしで、自由な発想で考えていただきました。

また、どんな気持ちになりそうですか?という質問や主催の私たちもどうしていくだろうかということを共有しながらお話を進めていきました。

5.むすび

今回は動物福祉の視点でなく、ユキヒョウを取り巻く「人」にスポットを当てて考えていきました。動物問題は、人と人のあいだに根深い問題があることも多いです。今回は村人と研究者という立場から考えていきましたが、実際には国や動物園、トロフィーハンティングをする人々、そして遠い国の話のようですが私たちもこの問題に関わっています。

動物の問題で大切なことは、そのたくさんの人に「自分事」として考えてもらえるような工夫をしていくことなのではないでしょうか。

6.私たちにできること

むすびをお伝えしたあとは、私たちが出来ることをシェアしました。

◆本物のユキヒョウを見てみる

まず、日本でユキヒョウに会える動物園を紹介しました。

北海道から九州までいろいろな動物園で見ることができるので、ユキヒョウを間近で見て、ぜひこの問題について考えてみていただけたらと思います。

◆ユキヒョウの保全活動を支援する

次に、ユキヒョウを守りつつ、研究や保全、現地の人々の支援を行っている活動があるのでご紹介しました。

それは、「まもろうPROJECT ユキヒョウ」です。
こちらで詳細を見ることができます。

「まもろうPROJECT」は、
研究者とクリエーターがひとつになって、
絶滅の危機からユキヒョウを守るプロジェクト。

これ以上、絶滅種を増やしたくない。

人間と生きもの達が共存するために、何かできないか。
そんな想いから、それぞれの専門を活かし、
任意の保全団体を立ち上げました。

まもろうPROJECT ユキヒョウ

この活動の大きな特徴は、「ユキヒョウさん」というオリジナルキャラクターを通し、動物園のショップでグッズを販売して普及啓発活動をしたり、そのグッズ製造を現地の女性が担って新しい仕事を生み出している点です。

私たちはグッズを買ったり、サイトでユキヒョウのことを学ぶことで、遠い国に住むユキヒョウと保全に関わっている人々の支援をすることができます。

気になる方は、ぜひサイトをチェックしてみてくださいね。

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【第8夜で使用した参考文献】
キルギスにおけるユキヒョウ研究の試み 菊池デイル万次郎 木下こづえ
ユキヒョウの保全生態をめぐる伝承と科学的根拠の複合型生物誌 相馬拓也
ユキヒョウとモンゴル遊牧民のコンフリクト 相馬拓也
ユキヒョウ/札幌市円山動物園
まもろうPROJECT ユキヒョウ
ユキヒョウ博士からのメッセージ
RODNEY M. JACKSON ユキヒョウを守る
大牟田市動物園/ライブ配信!中国のユキヒョウとネコ科動物の年齢推定 1/23

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