配信ライブ、ついに現場越え。~HYDEの配信ライブをみて~
みなさん、配信ライブに満足してますか?
現場至上主義のライブキッズが多い中、とりあえず配信ライブをしてくれるアーティストの努力には圧倒的に感謝しつつも、正直言っちゃうと現場に行くほどの満足感や感動は得られないし、なんだか不完全燃焼…というのが現実ではないでしょうか。
わたしもそう感じていました、でもヤバい配信ライブに出会いました。配信ライブを現場越えさせるアーティストが現れました。
そう、生きる伝説HYDEです。
今回見たのがこちら、HYDE LIVE 2020 Jekyll&Hyde。今年の夏にオープンしたZepp HANEDAで、前半3日はアコースティック、後半2日はロックのライブ、計5日間開催されました。(ちなみに観客はアコースティックは収容人数の50%、ロックは二階席のみで有観客。配信は全日SHOWROOM。)
特に後半2日のロックライブは、二階席のみの集客であったこともあり、配信をメインに据えていました。そして今回衝撃を受けたのが、この後半2日間のロックライブ。
配信ライブが発表された当初は、私は現場至上主義なこともあり、「配信か…1日だけ見るか…」というテンションだったのに配信が終わると「配信ライブ最高!!!!!!!!」と衝撃を受けて手のひらを返してしまいました。なぜこんなに配信ライブが成功したのか、2つの理由を私なりに考えてみました。
1.配信ライブをライブの延長ではなく、1つの映像作品として完成させる
配信ライブに満足できない最大の理由は、「現場の延長」だからです。いつもとさほど変わらずアーティストはライブしていて、私たちはその様子を配信で見る。それだとどう考えても現場の方が良いに決まってます。
配信ライブにしかできないことをやる、配信ライブに価値を持たせる、そして1つの映像作品として完結させる。これがHYDEが今回の配信ライブで意識していたことのように思います。
https://natalie.mu/music/newsより
この写真は、ライブのラストシーン。灰の中で半裸の男(HYDE)が倒れる→画面が急に暗転(死の暗示)で終了します。これはJekyll&Hydeと銘打っていることから、「原作ジキルとハイドのラストシーンのオマージュなのではないか…?」と勘の良いオタクが言っていました。
ちなみに原作ジキルとハイドのあらすじはこちら
ジキル博士は心の悪を分離して別人格「ハイド」になる薬を開発し、ジキルとハイドの間を薬で行き来して楽しんでいた。しかし人格の行来を繰り返したあまり、薬なしでもハイドへと変身するようになってしまう。ジキルに戻るための薬の量は増える一方で、ハイドからジキルに戻る薬は無くなってしまった。そしてジキル博士が自殺。
ちなみに、この原作の「薬」をHYDEは蛍光飲料で表現していました。ライブが進むにつれて、蛍光飲料を飲みまくり、次第に口から垂らし、身体中に浴びていました。
いや、すごくね?
原作ジキルとハイドを表現し、そして蜷川実花顔負けの灰の降らしっぷり。考察したくなる演出。映画と錯覚するくらいの狂気的な美しさ。これは現場だと伝わらない。Zeppの4柵目だと何が起こっているのか絶対分からない。
配信ライブは「現場の延長線上、客がいないリアタイのライブを配信で見る」というのが普通の考え方だと思います。というか、私もこのHYDEの配信ライブを見るまでそう思っていました。
でも、それだと配信ライブはいつまでも現場に負ける。このコロナ禍で現場が無い中、現場より魅力の無い配信ライブをいくらやっても、焼石に水なのではないかと。配信ライブをするなら、配信ライブでしかできない魅力を出す。そして、1つの映像作品として価値を持たせる。それが配信ライブのあるべき姿なのではないかと思います。
2.客がいないことを逆手にとって、表現の幅を利かせる
https://natalie.mu/music/newsより
こちらはライブの途中で一曲だけのために、いきなり出てきた祭壇の写真です。Zeppのステージの広さでこの演出はまず不可能です。アリーナのサブステだとできるかもしれませんが、一曲だけのためにこの写真の量のライトを設置するなんて現実的ではないですよね。
客がいないからこそ、Zeppのフロアにドーンと祭壇を設置できる。それを設置しているスタッフの姿は配信ライブに全く映らないから、一曲だけのために贅沢な演出ができる。
客がいないからスペースができる、だから表現の自由の幅が広がる。という表現者ならではの思考回路に衝撃。まさに客がいないことを逆手に取った演出だと思いました。
いやーーーーーーすげえ。すごすぎる。
こういう配信ライブだからこそやれる表現って個人的にたくさんあると思います。予算の関係とか事情とかあるかもしれないけど、いつものライブをただ披露するんじゃなくて、いつもの演出を変えてみる、いつもは使えない場所を使ってみる、ステージを広げてみる…そういう工夫が凝らされた配信ライブを見ると、見ごたえがあって、満足できるんじゃないでしょうか。
バトンを次のアーティストへ
HYDEは以前、「コロナが終わるなら我慢するけど、終わらないならただ単に衰退していくだけ」「いかにセーフティーに転がしていくか考えないと、色んなものがダメになる」「このライブを成功させて、次のアーティストにバトンを繋ぎたい」と言っていました。
音楽業界を牽引してきた1人としての使命と、エンタメを守りたいという思いをHYDEのファンの1人としてヒシヒシと感じています。HYDEは、「配信ライブ」を一つの映像作品として完結させる道を切り開き、新しいエンタメの形を創り出したのかもしれません。
※追記
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