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人工股関節置換手術のあとさき29 何度でも書く 入院は自分と向き合う場所

気がつけば退院まであと1日。
いやがおうにも気持ちが高まる。
病室に来る看護師さんとのなんと言うこともない会話も弾む。

さて。
入院生活は寮生活のようでもある。ここは女子病棟なのでさながら女子寮といったところか。

毎朝同じ時間に起きて、同じ時間に同じ食事をして、同じ時間に消灯になる。ちょっとしたルールもある。

寮生活と違うところは、入れ替わりが激しいところである。
毎日のように新しい方が入院してきて、毎日のように退院していく。

年齢も病状もそれぞれ違う。ここは産科の方も入院しているので若いお母さんもいる。時々バスケットに寝かされた赤ちゃんが看護師さんに病室まで運ばれていく。かわいい!いつでもどこでも赤ちゃんは永遠のアイドルだ✨

術後5日もすると看護師の見守りなしで自由に動けるようになるので、トイレに行ったりリハビリで廊下を歩いたりしているとなんとなく顔見知りの方ができてあいさつするうちに、ちょっと立ち止まってお話したりする。
お互いの病状をシェアするのも興味深い。

当たり前だが、それぞれなにか不具合があってここにいるからかみんなやさしい。
ニコニコ笑ってあいさつしてくれるし、「歩行器から杖になったのー?よかったね〜」と言ってくれたりする。
退院の場面に出会うと「おめでとうございます。よかったね〜」と祝福する。
みんなつらさやしんどさを経験しているからお互いを思いやれるのだろう。

看護師さんやその他のスタッフのみなさんもみんなやさしくて、この空間はやさしさに満ちている。

この病棟には人と競うという観念がない。
同じ手術を受けた人でも、もともとの状態が違うし、入院時期が違ったら回復の度合いも違う。
それぞれにリハビリのメニューも違う。
だから、あの人はわたしより回復が早い、などと思うことはない。

ただひたすら、昨日の自分より少しでも身体が動けるようにと、日々リハビリに励んでいる。
そう、この場所は、ひたすら自分と向き合う場所なのだ。

競争がない世界はこんなにもあたたかでやさしい世界なんだということを、わたしはこの入院で教えられた。

本来は、この病棟と同じように、わたしたちが暮らすこの社会も人と比べられるものではないと思う。

向き合うのはただひたすら自分だけ。
自分を感じて、自分を満たすこと。

それが、おそらくすべての人が望むやさしい世界なんだと思う。



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