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今月のひと駅-2024年9月

大堂津(日南線)

おおどうつ駅 宮崎県日南市
昭和11年開業

海面を滑る撮影聖地

 油津から崖伝いにせり上がり、大きな漁港の施設を見やると、ようやく日向灘との再会を果たす。油津港の長い岸壁が途切れると、そこは、七つ八重と呼ばれる景勝の地。やや沖合に数々の岩礁や小島が散らばり、東に向かって突き抜ける大海原の豪快さと相まって、初日の出の名所とされる。展望台のある猪崎鼻の根元を短いトンネルで抜けると、大堂津の集落に至る。漁港のグルメもあれば南国ムード満点の海水浴場もあり、観光の要素にも事欠かないけれども、何といっても大堂津といえば、鉄道ファンにとって堪らない撮影名所という印象だろう。

 七つ八重の絶景に臨んで河口を跨ぐ、一見、海上を薙ぐような橋梁が、駅を挟んで2カ所ある。油津側、猪崎鼻の手前にあるのが隈谷川橋梁、そして、駅の南郷寄り、さらに開けた海辺に架かるのが細田川橋梁だ。特に、細田川橋梁は、周りに遮るものがなく、「海幸山幸」も徐行してくれるので、多くの愛好家がシャッターチャンスを待ちかねる。

 無人の木造駅舎は建て替えられたが、地元特産の飫肥(おび)杉や、霧島新燃岳の灰から作ったレンガを使うなど、地域の特色を随所に取り入れた。小さいながらも降りてみたくなる駅へと、さらなる魅力の発信が期待される。

隈谷川橋梁
細田川橋梁

【2020(令和2)年取材】

『駅路VISION第31巻・日南/指宿枕崎線』より抜粋


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