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今月のひと駅-2024年11月

大沢(奥羽本線)

おおさわ駅 山形県米沢市
明治39年開業

閉ざされた里への優しさを

 峠から先は米沢盆地に向けての下り坂。電車の足取りも軽やかだ。ただし、人里離れた山峡の景観に変化はなく、またもやシェルターに入って仮組みのようなホームに停まる。そこは、大沢集落のまだ手前。もう少し下ると家並みがあるけれども、線路は切り通しとシェルターの連続になって車窓からの視界は利かない。周囲の道路も冬季通行止めが多い、閉ざされた山里なのである。

 この駅も板谷と同様、シェルター内のホームから錆びついた引き込み線に沿って歩くと、旧駅のホームへと辿り着く。そこにはまだ、鳥居型の駅名標やカプセル駅舎も残されたままだが、腐食が進んで何とも薄ら寒い空間である。それでも新駅へ行くにはこの経路を使うしかないのだから、公共の空間としてもう少し安心できるような配慮があってもよさそうな不満が残る。

 旧駅の前から狭い坂道を下ると、途中でシェルターに挟まれた本線の上を跨ぎ、古い家屋が細々と連なる集落に突き当たる。特に目立つ事業所や観光施設もない中、確かにこの規模だと、駅の利用者も知れてはいる。だが、特に冬の移動の難儀を思いやると、やはり地元からの改善の声が上がってしかるべきではないかと感じるのである。

新幹線つばさ通過の迫力
シェルターからつながる旧駅ホーム
閉鎖された旧駅舎

【2013(平成25)年取材】

『駅路VISION第18巻・奥羽本線Ⅰ』より抜粋


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