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「資格取得」前進する実感が欲しいから

第5回 「資格勉強」を始めたアラフォー女性のインサイト


and Insight株式会社 戦略インサイトリサーチャー® 窪谷衣里子

今回の「Insight」

「○○社の△△です」って肩書を持って名刺を出せたら、どんなに自分を表現しやすいだろう。
今の私は、社会人としての存在意義がわかりづらい。
私はこんな能力がある人なんだって自信を持って言える自分になりたい。
資格取得はそんな自分のために必要なパスポート。
勉強を頑張っているから、自分を認められる。
勉強を頑張っているから、前に進んでいる実感が持てる。

調査レポート

5月という季節。
4月から新しい環境になった方はようやく新生活に慣れ始めたころでしょうか。新学年・新年度が4月スタートなので、春になると「新しいことを始めたい」と思う気持ちになる方も多いのでは?
今回は「スタート」の季節ということで、「資格勉強をスタートした女性」をテーマに考察したいと思います。

自分磨きに対する意識
「リスキリング-Reskilling(ビジネスの変化に対応するために、新しい知識・スキルを学ぶこと)」という言葉が「ユーキャン新語・流行語大賞2022」にノミネートされ、耳にすることが多くなった昨今。
社会人にも学び直しが必要という風潮が高まってくるようになりました。
転職サイトdodaの「【意識調査】社会人の自己研鑽とリスキリング 」によると、 ビジネスシーンで役立つスキルを身につけるための自分磨きに対するアンケートに対し、下記のような結果が出ています。

Q.ビジネスシーンで役立つ資格・スキルを身につけるために、自分磨きを行っていますか?
※社会人15,000人に実施した「自己研鑽(自分磨き)」の調査結果

女性のうち、22.6%が「(自分磨きに)現在行動している」と答えた中で、「必要性は感じているが、行動できていない」と答えた女性は37.4%。
4割近くの方が何か行動を起こさなければと感じているものの、実際には行動できていない結果が見受けられます。

そこで、今回は「資格勉強」という切り口で、
実際に「資格勉強」に向け行動を起こし、勉強をスタートした38歳~47歳の女性3名にお話を伺いました。

1.WHO-資格勉強を始めた女性像

学生時代は、可もなく不可もなくという表現があてはまるような、飛びぬけて成績が良い訳でも、悪い訳でもないし、好きな勉強があるわけでもなかった。文系、理系ぐらいの得意分野の違いはあったけれど、この勉強を極めたい!という強い思いはなく、何となくこの辺が良いかなと思い、周囲の風潮に流されつつ、学生時代から社会人になった人達のようです。

卒業し、社会人になった20代。それなりに頑張って仕事をしていたものの
・”何か合わないな"と思ったら転職、気づけば数年で転職を繰り返している・・・
・頑張って部下をマネジメントする立場になった後に妊娠出産。育児は充実しているものの、育休のブランクで社会から取り残される不安が増すばかり。育休の間も何かやっておかなければ、これからの自分が不安・・・
・結婚し専業主婦になり、家事・育児を頑張ってきたけれど、社会人としてのブランクに不安と覚えている・・・
など、社会に出てからの職業遍歴は様々なものの、
彼女たち全員が「アラフォー・アラフィフの自分の『社会人としての立ち位置』に対して不安を抱え、もやもやとした日々を送り、何か行動しなければ!と模索していきます。

2.「資格」に対するイメージ

もやもやとした不安がある中で、何か行動できないかと、まず見たのは転職サイト。
新しい職を探すことから試みたものの、履歴書フォーマットに書くことがあまりに少ない自分に気が付きます。
空白ばかりの履歴書を見ながら、目に留まるのは「資格・特技」欄。

私ってこんなに何もなかったっけ?
今の私ができるのは、この真っ白な「資格・特技」欄を埋めることからでは?

3.資格勉強を始めたきっかけ

資格を取得すれば履歴書に何か書くことができる。
そうすると「社会人としての立ち位置」を得るための仕事に一歩前進するのではないか。
資格勉強を始めるその裏には
「その資格そのものを学んでみたい」気持ちに加えて
「履歴書に書ける何かを得ること」が目的になっている様子が見え隠れし、そんな焦る気持ちが行動につながったようです。
とはいえ、資格は国家資格から民間資格まで多種多様。
ここで資格が取れなければ、「社会人としての立ち位置」を得るための術が思い浮かばない。

4.資格勉強をしている時の気持ち

資格をとれば履歴書に書ける。
何物でもない自分に1つ「資格という肩書」がつくことで、頑張った自分に自信がつくはず。
今は、社会から取り残されたような気分だけれど、その状況を改善すべく頑張っているのだから、私は前に進んでいる。
資格をとれば自分も周りの「きちんとした社会人」に肩を並べられるのではないかと期待し、その道を進んでいることに、不安が一つ解消できたような安心感を得ているようです。
社会人としてそれなりに頑張っていた20代の自分に近づいているような気持ちも思い出して、自分を信じる力が湧いてきます。

5.資格を取ることで期待すること

20代なら資格がなくても、新しい会社でがむしゃらに働いて仕事を得ることはできるかもしれない。
でも、40代に差し掛かった自分が資格もない履歴書を出したら、相手からどう見られるのだろう。
本当は履歴書の文面には書かないような努力をたくさんしてきたのに、何もしてこなかったかのように思われるのは悲しすぎる。
だから、彼女たちは今までの人生を振り返り、自分には今何ができるのだろうか、と考えました。
今回のインタビューの中で見られた「資格」は

仕事経験を文字にできる資格(MOS)
経験したことが職業につながる資格(ドッグトレーナーやベビーヨガ)

など、これまでの人生で得たことを「資格」につなげたものが中心。

資格を持っている自分が新たな職で社会に出たら、『自分の名前』で仕事ができるかもしれない。

自分の経験値を生かして仕事を得て、理想とするライフワークバランスを実現している自分を想像します。
生き方も仕事も理想に近づくそんな生活を思い描き、わくわくと心を躍らせながら勉強をするうちに、社会から取り残された不安を払拭していきます。
○○である自分、と胸を張って社会の中で生きていけるかもしれない。
そうすれば、仕事もプライベートもさらに充実した素敵な人生を送れるはず。
そんな理想の生活を思い描き、胸を躍らせ、勉強に励む日々を送ります。

6.まとめ

これまでの人生において、その時々で自分の心のおもむくままの道を進んできた彼女たちだけど、アラフォー・アラフィフになった今、社会から取り残された感覚を感じるのは、これまでの自分の生き方にどこか納得がいかない・不安があるから。
資格を勉強している時間は、前進している・達成感があって、何より頑張っている自分が好きでいられるようです。
資格をとると
「○○である自分」と信じることができて
社会の居場所を得た安堵感を得られることを期待しています。

資格を取ることは、否、資格を取るために頑張ることは、不安と戦う彼女たちが、前を向いて進んでいく糧であり、今を生きる希望のような存在になっているのだなと感じる調査でした。

&Insightは「戦略リサーチ」を通し「インサイト」を探り出す「戦略インサイトリサーチャー®」を派遣・育成するサービスです。
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