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推し活って、実は「私」を肯定するコト

&Insight(and Insight株式会社)の戦略インサイトリサーチャー®が、毎月様々な”旬”のテーマについて、インタビューを行い「Insight(インサイト)」=思考回路で重要な分岐点となる ”鍵” を掘り下げるインサイト分析企画。第2回目は最近趣味の一つとして耳にすることも増えてきた「推し活」について。
調査時期:2023年12月
調査手法:1x1 デプスインタビュー
対象者:1年以上推し活をしている 30代 40代女性(N=3)

第2回 30代 40代女性の推し活・インサイト 

and Insight株式会社 戦略インサイトリサーチャー® 窪谷衣里子

今回の「Insight」

勉強、部活、仕事…それなりに頑張ってきたけれどこれまでの人生で私が本気で熱中したものは無かった。何かに自分のエネルギーを100%ささげている人を見るとうらやましい。私には「これをやりきった」と自信を持って言えることが無い。妻、母、社会人としての私はいるけれど、私のパーソナリティーとして存在価値がある場所はどこにあるのだろう?
私がまるで自分のことのように自信をもって語れるもの、それが推しの存在。
こんな素敵な人を見つけて語れる私、結構すごいんじゃないかしら。
        「推し活で、私の価値を肯定できる」
        

調査レポート
1.「推し活」とは?
最近メディアでも目にすることが増えた「推し活」という言葉。イメージはあるもののどのような定義がされているのでしょう?消費者庁が提示している「令和4年版消費者白書」には次のような記載があります。

有名人やアニメ、ゲーム等のキャラクターや鉄道等、応援する対象にお金を使う消費形態は、「推し活(おしかつ)」といわれています。2021年の流行語にもなった「推し活」は、近年、若者が長時間利用しているSNSによって、応援する人同士のみならず、応援する人と応援される人のつながりも強くなっています。また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大時において、コンサートやイベント、映画の上映中止等があったものの、それ以前の2019年度のアニメの市場規模は3,000億円、アイドルは2,610億円と推定され、「推し活」に着目してグッズやイベントの機会を提供する企業や団体も増えています。

また、同資料内には消費行動として推し活にお金を使う人の年齢別分布について下記を提示しています。とても当てはまる、ある程度当てはまると答えた人は10代で約40%と多く、30代は17.5%、40代は約10%。年齢を重ねるにつれ推し活にかける金額が少なくなっていることが顕著です。

消費者庁 令和4年版消費者白書

10代、20代に多い推し活。では30代、40代にとっての推し活とはどのような意味を持つのでしょうか。今回は推し活を実際に行っている30代、40代女性のインサイトについて調査レポートをまとめました。

2.推し活をしている人の人物像
WHO ー 推し活をしている人はどんな人?
推す対象はそれぞれですが「推し活」を継続する人には共通点がありました。
仕事、家事、育児と毎日の生活をそつなくこなしているが、何となく日々がルーティン化していて、どことなく物足りなさを感じているタイプ。
他人に共感する傾向が強く影響を受けやすいタイプ。
自分が好きだと思うものに対しては遠方まで出向いたり、未知のコミュニティに飛び込む勇気もあり、フットワークの軽さも特徴。

これまでの推し活遍歴
現在推し活をしている方達は、過去にも推し活をしていたのでしょうか。これまでの推し活について聞いてみました。

Q. これまで行ってきた推し活について教えてください。
・学生時代に見た舞台に出ていた俳優が好きになった。今は家事、育児で舞台を見に行く時間がないが気持ちとしては応援している。
・アイドル育成ゲームで思春期の女の子が頑張っている姿に心惹かれた。一生懸命頑張る姿にのめりこんでしまった。
・学生時代に女性アイドルグループが好きになった。ファン投票などで自分が育成に参加している感じが良かったが、メンバー間の不仲が見えて熱が冷めてしまった。
・ドラマの役柄が魅力だった俳優のインタビューを見て人間らしさを感じ好きになった。ファンクラブに入ったが、その後ファンクラブが無くなってしまい活動ができなくなり熱が冷めていった。

推し活に出会う時期は学生時代のケースが多く、現在と同様に推しに対し共感し、熱量が高く活動を行っていることがうかがえます。
また、ファン投票に参加するといった自分の行動が推しの活動に直接影響していることが、推し活の魅力と感じています。

現在の推し活について
現在の「推し」に出会ったきっかけとはどのようなことだったのでしょうか。

Q.現在、推している方に出会ったきっかけを教えてください
・最初はゲーム自体を楽しんでいたが数多くいるキャラクターの中で他とは違うキャラクターだったため目を引いた。最初の自分のイメージとのギャップに魅力を感じ努力している姿を応援したいと思った。(ゲームキャラクター推し)
・偶然音楽を聞いた時に自分好みの曲だった。その後オーディション番組を見て苦労して現在の位置を得たことを知り、より好きになった。(女性アイドル推し)
・コロナ禍で自宅にいる娘が繰り返し見ている映像を一緒に見て魅力を感じた。その後その方の練習風景などの映像を見て前向きで明るい人柄を知り好きになった。(男性アイドル推し)

推しに出会うきっかけは偶然ですが、目にした後にその方の成功の裏にある努力や苦労を目にすることで共感。
未完成な部分を目にすることで、現在は成功している推しが、実は自分に近い存在と感じ「好き」の熱量が高まっていました。

3.推し活がもたらした自分の変化

Q. 推し活をして良かったことは何ですか?
・家事、育児だけの生活だったが推し活で出会った友人ができ、かけがえのない存在になった。
・推し活仲間と自分の推しについて同じ熱量で(もしくは自分より高い熱量で)話せることは打てば響くような感覚を得られて嬉しい。
・娘と同じものを共有できることで楽しさを感じる。話のきっかけになり家族のコミュニケーションのひとつになっている。
・推しのキラキラした部分だけでなく、努力する姿を見ることで人間味を感じ、仕事や家事を頑張っている自分との共通点を見出し共感。
・推しの完璧でない姿を見て自分のマイナス面を受け入れることができ、人をうらやましいと思わなくなった。

皆さんに毎日の推し活について気持ちを色に例えてもらうと「黄色」「オレンジ」。推しの動向を頻繁にチェックし思いを巡らせたり、語る時間は前向きな気持ちになれる時間は温かく、ほっとした気持ちを表す暖色系の色に例えられるようです。
一方で日常とは違う特別なこと(新曲発売、動画配信)が起こった場合の気持ちの色は「ピンク」「赤」。刺激になるできごとが時折起こり、気持ちの高揚を得られるのも推し活の魅力として感じています。

Q. 押し活をしていて、不安や不満に感じることは何ですか?
・時間やお金をかけて推し活に熱中していることを家族があまりよく思っていない。
・推しの今後の活動がどうなるのか。(配信されているゲーム、推しのアイドルグループがいつか無くなるのではないか)
・推しの努力している人間らしい姿は見たいが、仲間内のいさかいといったネガティブな人間らしさは見たくない。

推し活の継続は対象者の動向に左右されるため、自分のコントロールの利かない推しの今後の活動について不安に思う声が共通項としたあげられました。他には推しの人間的な部分は知りたいものの、全てを知りたいわけではなくネガティブな人間性は知りたくないという意見もありました。

Q. 推し活とはどんな存在か 
・かけがえのないもの
・代替のきかないもの
・私の生活のうるおいをあたえてくれるもの
・自分の考えをプラスにしてくれるもの

無くても生きていけるけどきっとつまらない毎日になりそう。私が私として充実した日々を送っていくためのエネルギー源として存在しています。

4.まとめ
今回のインタビューを分析した結果、推し活とは、その推しに、恋心を持つ・好きだと思う気持ちと同時に、推しに自分を投影し、代弁する形で自分を表現しているのではないかということ。

推し活について語る時、推している方のことを、まるで自分のことのように生き生きと語る姿が印象的でした。
自分が推しのことを深く理解することで、推しの生き様がまるで自分ごとかのように投影する。そしてそこに、自分でも気が付かないうちに知らないうちに自分の存在価値も感じる推し活。

自分が自信を持って強く語れるものがあることは、生きて行く上の糧のひとつになっています。日々がルーティン化する中で見つけた推し。
自分と同じように不完全な部分もあって、でも自分とは違うだけの努力ができるから、共感するし、尊敬もする。
私の応援が、こんなすごい人が頑張ることができる理由になっている共依存の関係にあることって、なんかすごい。
そんな存在を見つけて、応援することや語ることができる自分って、すごい。
私が、私として存在していいんだって思える力になれるから、推し活はやめられない・・・・!

筆者自身には「推し」がいなく、何かにどっぷりはまり応援できる存在がいないことが、今まで気が付かなかったけれど、実は人生の中で少し彩にかける、さびしいことなのかもしれないな・・・・と思うインタビューでした。

インサイト
推し活で、私の価値を肯定できる

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