推し活って、実は「私」を肯定するコト
第2回 30代 40代女性の推し活・インサイト
and Insight株式会社 戦略インサイトリサーチャー® 窪谷衣里子
今回の「Insight」
勉強、部活、仕事…それなりに頑張ってきたけれどこれまでの人生で私が本気で熱中したものは無かった。何かに自分のエネルギーを100%ささげている人を見るとうらやましい。私には「これをやりきった」と自信を持って言えることが無い。妻、母、社会人としての私はいるけれど、私のパーソナリティーとして存在価値がある場所はどこにあるのだろう?
私がまるで自分のことのように自信をもって語れるもの、それが推しの存在。
こんな素敵な人を見つけて語れる私、結構すごいんじゃないかしら。
「推し活で、私の価値を肯定できる」
調査レポート
1.「推し活」とは?
最近メディアでも目にすることが増えた「推し活」という言葉。イメージはあるもののどのような定義がされているのでしょう?消費者庁が提示している「令和4年版消費者白書」には次のような記載があります。
また、同資料内には消費行動として推し活にお金を使う人の年齢別分布について下記を提示しています。とても当てはまる、ある程度当てはまると答えた人は10代で約40%と多く、30代は17.5%、40代は約10%。年齢を重ねるにつれ推し活にかける金額が少なくなっていることが顕著です。
10代、20代に多い推し活。では30代、40代にとっての推し活とはどのような意味を持つのでしょうか。今回は推し活を実際に行っている30代、40代女性のインサイトについて調査レポートをまとめました。
2.推し活をしている人の人物像
WHO ー 推し活をしている人はどんな人?
推す対象はそれぞれですが「推し活」を継続する人には共通点がありました。
仕事、家事、育児と毎日の生活をそつなくこなしているが、何となく日々がルーティン化していて、どことなく物足りなさを感じているタイプ。
他人に共感する傾向が強く影響を受けやすいタイプ。
自分が好きだと思うものに対しては遠方まで出向いたり、未知のコミュニティに飛び込む勇気もあり、フットワークの軽さも特徴。
これまでの推し活遍歴
現在推し活をしている方達は、過去にも推し活をしていたのでしょうか。これまでの推し活について聞いてみました。
推し活に出会う時期は学生時代のケースが多く、現在と同様に推しに対し共感し、熱量が高く活動を行っていることがうかがえます。
また、ファン投票に参加するといった自分の行動が推しの活動に直接影響していることが、推し活の魅力と感じています。
現在の推し活について
現在の「推し」に出会ったきっかけとはどのようなことだったのでしょうか。
推しに出会うきっかけは偶然ですが、目にした後にその方の成功の裏にある努力や苦労を目にすることで共感。
未完成な部分を目にすることで、現在は成功している推しが、実は自分に近い存在と感じ「好き」の熱量が高まっていました。
3.推し活がもたらした自分の変化
皆さんに毎日の推し活について気持ちを色に例えてもらうと「黄色」「オレンジ」。推しの動向を頻繁にチェックし思いを巡らせたり、語る時間は前向きな気持ちになれる時間は温かく、ほっとした気持ちを表す暖色系の色に例えられるようです。
一方で日常とは違う特別なこと(新曲発売、動画配信)が起こった場合の気持ちの色は「ピンク」「赤」。刺激になるできごとが時折起こり、気持ちの高揚を得られるのも推し活の魅力として感じています。
推し活の継続は対象者の動向に左右されるため、自分のコントロールの利かない推しの今後の活動について不安に思う声が共通項としたあげられました。他には推しの人間的な部分は知りたいものの、全てを知りたいわけではなくネガティブな人間性は知りたくないという意見もありました。
無くても生きていけるけどきっとつまらない毎日になりそう。私が私として充実した日々を送っていくためのエネルギー源として存在しています。
4.まとめ
今回のインタビューを分析した結果、推し活とは、その推しに、恋心を持つ・好きだと思う気持ちと同時に、推しに自分を投影し、代弁する形で自分を表現しているのではないかということ。
推し活について語る時、推している方のことを、まるで自分のことのように生き生きと語る姿が印象的でした。
自分が推しのことを深く理解することで、推しの生き様がまるで自分ごとかのように投影する。そしてそこに、自分でも気が付かないうちに知らないうちに自分の存在価値も感じる推し活。
自分が自信を持って強く語れるものがあることは、生きて行く上の糧のひとつになっています。日々がルーティン化する中で見つけた推し。
自分と同じように不完全な部分もあって、でも自分とは違うだけの努力ができるから、共感するし、尊敬もする。
私の応援が、こんなすごい人が頑張ることができる理由になっている共依存の関係にあることって、なんかすごい。
そんな存在を見つけて、応援することや語ることができる自分って、すごい。
私が、私として存在していいんだって思える力になれるから、推し活はやめられない・・・・!
筆者自身には「推し」がいなく、何かにどっぷりはまり応援できる存在がいないことが、今まで気が付かなかったけれど、実は人生の中で少し彩にかける、さびしいことなのかもしれないな・・・・と思うインタビューでした。
インサイト
「推し活で、私の価値を肯定できる」
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