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大井川とリニア 第8章完結

静岡新聞/あなたの静岡新聞の長期シリーズ企画「大井川とリニア」の第8章が完結しました。

事業認可から7年を経て、なお着工できていないリニア中央新幹線工事の静岡県内区間。大井川の水問題を巡るJR東海の現在の説明と姿勢で流域の理解と協力は得られるのか、改めて5回連載で考えました。

①JR東海の説明、丁寧さ欠き混乱 不信感
「今年は秋に雨が少なかった。こういう時期の工事の影響が気になるよね」。大井川土地改良区の内田幸男理事長は11月下旬、ダム貯水率を気にしてつぶやいた。渇水が頻発する大井川は今季も取水制限が視野に入る。リニア中央新幹線工事では、取水制限が行われるような少雨時、中下流域の水量が減らないかが利水者の最大の関心事でもある。・・・
②減水リスクの認識、情報開示不足 溝深める
 リニア中央新幹線工事に伴う大井川の水問題で最大の焦点は中下流域で水量が減るのかどうかだ。JR東海は2月の国土交通省専門家会議で、地質や降水量が自社の想定通りにならない場合などの「リスク」をパターン分けして水量が減る可能性もあり得ると説明した。宇野護副社長は会議後の取材に「リスク要因を取れば(水量減少や水質悪化の)可能性はゼロではないとなるので、それも含めてきちんと説明することが重要だ」と答え、県側はJRがリスク重視の姿勢に転換したと肯定的に捉えた。
③JR東海の企業体質 問われる地方への姿勢
「当社は東京~名古屋~大阪の高速大量旅客輸送を担うことを使命としている」。JR東海は経営理念の説明冒頭にこう記し、リニア中央新幹線にも触れている。首都圏と近畿圏を結ぶ東海道新幹線は年1兆2千億円(2020年3月期)を稼ぐ「ドル箱路線」で、収益構造はその輸送に大きく依存する。
④指導役の国交省会議 肝心な議論不十分の声
JR東海が今後、説明のベースにすると言っている大井川水利用に関する国土交通省専門家会議の中間報告。昨年4月に設置された会議は「トンネル湧水の全量の表流水への戻し方」と「中下流域の地下水への影響」を中心に議論してきた。今年9月の第12回会合では中間報告案が議論され、福岡捷二座長(中央大教授)が次回会合で取りまとめる方針を表明した。
⑤完 科学的議論に限界 着工是非 誰がどう判断
リニア中央新幹線南アルプストンネル工事に伴う大井川の水問題は、県や国土交通省が設置した会議で専門家による科学的議論が長期化し、問題の出口が見えない状況が続く。JR東海による岐阜県や長野県の別のトンネル工事では崩落事故が相次いだ。科学的議論を尽くしてもトンネル工事の不確実性を踏まえれば、中下流域の水への影響を完全に予測できず、事前に影響がゼロと言い切れないというのが識者の大方の見方だ。


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