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新型コロナワクチン 5~11歳接種 どうする?判断材料は?

 2月下旬から12歳以上に加えて、5~11歳の子も新型コロナウイルスワクチンを接種できるようになった。5~11歳は新型コロナに感染してもほとんどが軽い風邪か無症状で治まるが、ワクチンは副反応が出やすいため、接種を迷う保護者がいる。専門医は「社会的事情も考慮してはどうか」と助言する。具体的な「判断材料」は何か―。同世代の子を持つ記者が、静岡県内の小児科と感染症の専門医4人に尋ねた。こち女公式LINEアカウント登録者から寄せられた疑問にも回答してもらった。

専門医の略歴
 野田昌代氏 小児科医。県小児科医会予防接種協議会会長。わんぱくキッズクリニック(浜松市)院長

 荘司貴代氏 小児科医、感染症医。県新型コロナ対策専門家会議委員。県立こども病院感染対策室長

 矢野邦夫氏 感染症医。県新型コロナ対策専門家会議委員。浜松市感染症対策調整監。浜松医療センター感染症管理特別顧問

 田中敏博氏 小児科医。日本小児感染症学会理事、日本ワクチン学会理事。静岡厚生病院小児科診療部長

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家庭の社会的理由考慮

 日本小児科学会は1月19日、周りの大人がまず接種して予防することが重要とした上で、健康な5~11歳への接種は12歳以上と同じように「意義がある」との見方を示した。ただ、厚生労働省は12歳以上の接種を努力義務とする一方、5~11歳には課さなかった。県小児科医会予防接種協議会の野田昌代会長はその背景を「接種のメリットとデメリット、家庭の事情などを照らし合わせて、それぞれが判断してほしいから」と説明する。

 臨床医によって考えはさまざまだ。野田会長は「本人が発症したり重症化したりするリスクと、家族や友人にうつすリスクを減らせる。本人と周囲が受ける社会的影響も減らすために、接種をお勧めする」と話す。家族の1人が感染して同居者が濃厚接触者となり、その後陽性になった場合など、長ければ2週間以上も自宅待機を余儀なくされる。子どもは学びや遊びの機会を失い、親は仕事に行けず収入が減るなどの社会的リスクがある。

 浜松市の矢野邦夫感染症対策調整監と、県立こども病院の荘司貴代感染対策室長は、基礎疾患のある子とそのきょうだいに接種を勧める。荘司室長は「高齢者や基礎疾患のある人と同居していない健康な子にとっては、接種後の副反応の方が目立つだろう」として、「日頃から信頼するかかりつけ医の意見を聞き、それぞれの社会的理由で判断してほしい」と助言する。矢野調整監によると、海外の医療体制の不安から、子どもの渡航前に接種を希望する保護者がいる。「打ちたい人が、いつでも打てる環境を用意しておくことが重要だ」

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 感染した子とその家族を大勢診てきた静岡厚生病院小児科の田中敏博診療部長は、「ワクチンは、大人にとっては十分に有効で安全」と前置きした上で「健康な5~11歳が打つ必要性は感じない」という。子どもが定期接種しているワクチンは、本人がかかると重症化や後遺症のリスクが大きい感染症を予防する。「第一の目的は本人を守ること。次に社会を守ること」。しかし新型コロナワクチンは目的の順番が逆。「保護者と本人のどちらかでも納得しないまま接種に至る事態は避けたい」と強調する。
 厚労省によると、米国、カナダ、フランス、イスラエル、EUはすべての5~11歳に接種を推奨。英国、ドイツ、世界保健機関(WHO)は重症化リスクのある子などに限って推奨している。(静岡新聞社 社会部・伊豆田有希)


 静岡新聞社こちら女性編集室(こち女)は、2月中旬、LINE公式アカウントの登録者に、ワクチンについて知りたいことを募集し、保護者からさまざまな質問が寄せられました。<大人と同じワクチン、子の体に影響は?><小学5年生の娘。定期接種をたくさん控えているので、今回は見送りたい>など、Q&Aの全文は下記のリンクへお進みください。


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