静かなる一日

今日は土曜日、世の美容メーカーさん達はお休みの日。いや、むしろ昨日は祝日だったし今日含めて3連休になっているのだろうと思う。

そんな中で我が社は普通に出勤日である。そう昨日の祝日ももちろん出勤日である。しかし世間様は美容メーカー=土日祝はお休み。そうお考えなので昨日、今日とにかく静かなのである。

おっと、誤解していただきたくないのは、この文章をもって「我が社はブラックなのでは?」ということが書きたいわけではない

ブラックどころかオレンジだ(社名:オレンジコスメ)

あくまで前フリなので誤解されないようお頼み申す。

静かな理由は休日と思われているからか電話が少ないこともあるし、今日はとにかくお休みの社員が多く普段の半分くらいの出社数、まるで私が入社した10数年前のような人数だ。

当時はこんなこと考えられなかったなと昔を振り返る。我が社は9時から17時半までが営業時間なのだが昔は当たり前のように残業があった。駆け出しでペーペーの僕に残務などあるはずもないが、何かしているフリをしながら無意味な時間を過ごしていた

私は営業部に所属していて周囲の開発部や製造部などは定時で「お先!」と言いながら帰社しているにもかかわらず、私は帰ることができなかったのだ。

ある日こんなことがあった

髪の伸びてきた私は定時に上がって美容室へ行こうと考えたのだ。急ぎの仕事があるわけでもないし、取引のある美容室に行くわけだしこれならすんなり帰れるだろう、そう思い昼休みに予約を入れて17時半がくるのをワクワクしながら待っていた。

すると17時20分頃だったろうか?定時まで残り10分もないくらいで先輩セールスが私に「販促POPを作ってくれ」と依頼してきたのだ。依頼の流れから急ぎ案件でもなく、明日以降で大丈夫と理解した私は「かしこまりました」と返事をして帰り支度をこっそり始めた。

美容室の予約は18時、会社からは20分の距離、さすがに定時ジャストは気が引けたので17時35分まで待ち席を立って上司に挨拶をした。すると上司から「さっきの仕事はどうした」と詰問されたのだ。

私はパニックになった

さっきの仕事とは?なんのことだろうか?今日中に上げなければならない、そんな仕事は請け負っていないが・・・

固まった私に上司は言った

「さっき○○から受けたPOPがあるやないか」と、それ急ぎ?と胸中穏やかでない私は返答に困ったが、そんな風に返せるわけもなく正直に早く帰りたい・・・いや普通に定時で上がりたい理由を話した。

「すみません、今日美容室予約してるんです」と

ふう・・・プライベートなことは言いたくなかったが仕方ない。さて帰るかと体を出口に向けた時に追撃がきた。

「そんなもんいつでも行けるだろうが」

これはどうしようもない。もう、そう言われたらどうしょうもない。「わかりました。すみません。」と席に着きPCを睨みつけながらPOP作成に入ったのだ。これを私の真後ろで聞いていた先輩は、それこそ胸中穏やかでなくなった様子で私に助け舟を出してくれたがそんなものはなんの意味もないのだ。

開発が帰り、製造が帰り、事務員が帰り、ついには依頼主の先輩までもが皆と一緒に帰ってしまった(これには怒り心頭)

あれから10年以上の時が流れた

当時ペーペーだった私は部門を背負う立場となり部下もいる。17時半、定時がくると必ず私は言う

「さっさと帰る準備をしてくれ、オレが帰りたいから」と

有給は使い切るよう頑張ってくれ、休日出勤した分の振休はすぐ使え、決して貯めたりするな。長く働く奴が偉いんじゃない、休みに働く奴が偉いんじゃない。時間内にキチンと仕事を終わらせる奴が偉いのだ。

こんな風に言えるようになったのは「残業する奴は能力が低い」「明日やれることを今日やる必要はない」と教えてくれた社長のおかげだ。ただこの言葉を簡単に受け止めてはいけない。

「残業するな」ではなく「残業しないでいいように仕事を終わらせること」だし「今日やらなければならないことは必ず今日中にやる」と言うこと。時代は変わっていっているとはいえ、まだまだ昔気質の人はどの業界にもたくさんいる。

昔気質が悪いわけではなく、そのおかげで今があるわけだからその感謝は忘れてはならない。ただ昔のままでは年齢と同じように老いていくだけだと私は思う。今を生きなければ時代に取り残された者になる。

だから私は幸運だと思う。

当時の上司からは昔ながらの仕事のやり方を叩き込まれて、おかげで今や部門の顔になれているわけだし、その過程の中で社長からバランス感覚や論理的思考を学ばせてもらったし。良い成長が出来たと思う。

今の若い子には当時の我が社のことはわからないし、他の会社がどれだけ大変な日々かもわからないと思う。私からすると楽で自由なこの環境が当たり前の日常だから。この先を想うと期待と不安が入り混じった不思議な感情になる。

今より自由になるのは素敵だ。楽になるのは素晴らしい。でもそこに同じだけの責任感を伴わせられるだろうか?「楽する」と「楽しい」を混同しないだろうか?色々と伝えていきたいことはあるが、あくまで老害にならないよう注意したいと思う。

静かな環境だとほんと文章が書きやすいな笑

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