【#バトリレ非公式】relay-tion 03.dear myself

「あれ、ヒナちゃん。どうしたの、庭でごそごそして」

「ん、これ飾ろうと思って。なかなかいいところ無いんだけど」

「ちっちゃい鯉のぼり? ヒナちゃん、そういう趣味もあったんだ」

「違うし。有理が部屋に忘れてっただけ」

#非公式


「ゆりちゃんが? たしかに縁起かつぐタイプだよね。意外と」

「まあ、部屋に放っといても腐るだけだし、やっぱり空を泳がせないとって」

「じゃあ、表の玄関先に差しちゃおうか。ちょっと待って、添木持ってくるね」

「……そういう道具がポンと出てくる小見川さんも、意外しかないけど」


――――

「これでよし、と。うん、いいね。#こどもの日 っぽくて」

「そこでヒナの方見られても言うことないけど。でも……そうなんだよね、今日って」

「今日なんだよね。やっぱり意外というか、見かけによらないというか」

「いやー結構子どもっぽいところあるよ。こないだも――」


『あら――』

「あ」
「ゆりちゃん、お帰り。ごめんね、鯉のぼり飾っちゃった」

『いえ、いいのですわ。室内へ閉じこもるより、大空へたなびく方が幸せでしょうし』

「あと、それから――」「おめでとう、ゆりちゃん。ついでみたいで、ごめんだけど」

『ふふ――いえ、いいのですわ』


「これって、お店に飾るはずだったの?」

『いえ、ワタクシが自分のために用意したものです。毎年の恒例でして』

「5月5日がゆりちゃんの日かあ…でも、子どもの頃って想像つかないね」

『あら、今日に相応しい子どもでしたわよ。公園を走り回って――一時期は缶蹴り姫なんて呼ばれたりして』


『――そうですわ。実はここに、先ほど釣り場で拾ってきた空き缶がありまして』

「やっぱり見かけによらないよねえ、ゆりちゃん」
「ほんと、たまに子どもっぽい時あるよね、有理」

『いいじゃありませんか。そういう振る舞いもきっと――すべて、自己表現の一つなのですわ。ふふっ』


――――

「運動着で集合ってこういうことだったのね……まさかこの歳になって公園で遊ぶとは思わなかったわ」
「私は懐かしいわ。小さい頃に戻ったみたいで! ふふっ」
「ねえねえ有理ちゃん、缶踏む時なんて言うんだっけ。ペコポンだっけ?」
「いや、天神さん。最近は何も言わないはずだよ…」


子どもっぽい。
大人っぽい。
意外っぽい。

どんな言葉も、それはすべてワタクシなのです。

受け入れて、噛み入れて、踏み入れて。

その評価から生まれるものこそが。


「じゃんけん――最初の鬼はおみさんですー」「あちゃあ」

『ふふ、それじゃ蹴りますわよ――そおれ!」
「うわ、有理遠慮なしじゃん」

――全部、つながって。
ワタクシの未来になるのですから。


#バトンリレー
#戸田有理誕生祭2022

#dear_myself


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※このSSは #非公式 であり、BATON=RELAY本編とは無関係です。

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