OHTUVAYRE (ensifentrine) が慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療薬としてFDAに承認された

OHTUVAYRE (ensifentrine) が慢性閉塞性肺疾患(COPD) の治療薬としてFDAに承認されました。


COPDとは

慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、有害物質(主にはタバコ中の物質)を長期間吸入することで肺に慢性的な炎症が引き起こされる疾患です。慢性気管支炎と肺気腫という2つの主な病態を含みます。慢性気管支炎による気道の炎症は過剰な粘液の産生と気道の過敏性・攣縮を引き起こして気道を閉塞します。炎症により酸素と二酸化炭素の交換を行う場である肺胞が損傷した状態が肺気腫です。

OHTUVAYREとは

OHTUVAYREは、Verona Pharma社が開発しensifentrineを主成分とする吸入薬です。成人の慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者が適応です。の維持療法として承認されています。気道の平滑筋を弛緩させるとともに、気道内の炎症を軽減する効果が期待されます。これにより、COPDの症状を改善し、急性増悪の頻度を減少させることができます。

作用機序

Ensifentrineは、ホスホジエステラーゼ3(PDE3)およびホスホジエステラーゼ4(PDE4)の二重阻害剤です。PDE3やPDE4は環状アデノシン一リン酸(cAMP)を分解する酵素であす。PDE3/PDE4の阻害により、細胞内cAMPレベルが上昇し、気道の平滑筋の弛緩とマクロファージを中心とした炎症の抑制が促進されます。

臨床試験

OHTUVAYREの有効性と安全性は、ENHANCE-1およびENHANCE-2という2つのランダム化二重盲検プラセボ対照試験で評価されました。いずれも中等度から重度の慢性閉塞性肺疾患(COPD)を持つ患者が参加しました。両試験の対象者の平均年齢は65歳であり、喫煙歴はそれぞれ41パックイヤー(喫煙年数×1日のタバコパック数)(ENHANCE-1)および42パックイヤー(ENHANCE-2)でした。また、ENHANCE-1試験では57%、ENHANCE-2試験では55%の患者が現喫煙者でした。
 Ensifentrine投与群では、3 mgのensifentrineを1日2回、ジェットネブライザーを使用して24週間にわたり吸入しました。プラセボ群は同様の方法でプラセボを吸入しました。

  主要評価項目であるFEV1 AUC0-12h(12時間の1秒量の曲線下面積)では、ENHANCE-1試験においてensifentrine投与群は61 mLの改善を示したのに対し、プラセボ群では26 mLの悪化が見られました(87 mLの差)。ENHANCE-2試験でもensifentrine投与群は48 mLの改善を示し、プラセボ群は46 mLの悪化しました(94 mLの差)。

  生活の質の改善を評価するために使用されたSGRQ(St. George’s Respiratory Questionnaire)の結果では、ensifentrine投与群とプラセボ群の間に統計的に有意な差は認めませんでした。プラセボ群の生活の質改善がすごいですね。呼吸機能は悪化しているのに…。

つまり、ensifentrineの投与は呼吸機能を有意に改善するが、生活の質の改善は確認できませんでした。

安全性・副作用

臨床試験で認められた一般的な副作用は、腰痛、高血圧、尿路感染症、および下痢でした。特記すべき副作用として、ensifentrine投与群で精神的な副作用、特に不眠症や不安、さらには自殺念慮が報告されています。過去にうつ病や自殺念慮の既往がある患者に対しては、治療のリスクとベネフィットを慎重に評価する必要があります。

まとめ

OHTUVAYREは、COPD患者の呼吸機能を改善し、症状のコントロールに寄与する新しい治療オプションです。治療中の精神的な副作用は慎重にモニタリングする必要があります。

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