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陰キャオタクが「You are my soulmate」という歌詞の曲(Friends)を聴いて大泣きした話


「ソウルメイト」、私は長い間この言葉を信用できずに生きてきた。

過去にこの言葉を用いて私に近づいてくる人間は大抵「親友に感謝」「仲間との絆」のような浅薄なワードの数々を並べ、胡散臭い話を持ち掛けてくる傾向があったからだ。



そもそも私は思春期の頃にガッツリ拗らせてサブカル陰キャモンスターへと進化してしまった人間である。


高校時代はCocco、鬼束ちひろ、Syrup16g、Radioheadなどという闇を抱えるサブカルオタク御用達音楽トリプル役満みたいなラインナップを部屋に引き篭もって聴いていた。

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高校時代に同じクラスになり知り合った可愛らしい女の子(ジャニーズ好き)と何の因果か仲良くなり、私の家で遊ぶことになった時に急に「オススメの音楽教えて!」と言われた時、


「えっ、えっ、なんだろうなぁ、最近聴いてるのは、Bjorkかなぁっ!」と焦って咄嗟にこの「Tri umph Of A Heart」のMVを観せたらガチでドン引かれて泣きそうな顔で「怖い……」と言われたのは忘れもしない私の黒歴史です。

そりゃこんなものいきなり見せられたら身の危険すら感じるわな。

何故かこの友人とは今でも続いており
その後15年来の付き合いとなる





その後も私は同級生たちのSNS滅びのバーストストリームみたいな殺傷能力と光度が高過ぎる投稿の数々に慄くことになる。


指で星を作った画像を見る度にライフポイントをゴリゴリ削られたし、

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みんなで手を繋いでジャンプしてる画像なんかを見た日には戦意喪失でサレンダーするレベルでダメージを受けていた。

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しかしその後様々なライブや音楽イベントに参加して趣味の合う仲間がたくさんでき交友関係が広がったことによって、結果的に私の周りの友達は全員陰キャになり、みんな陰キャだから何も怖くないという謎の一体感すら感じるようになったので、この頃は陽キャ集団によるSNS攻撃で負傷することはほぼなくなっていた。


同級生の友人達がリムジン女子会やナイトプールといった映えるキラキラ投稿を続ける中、
私は古のSNS、mixiに「今年のマイベストアルバム(邦楽編)」という投稿をしたり、「新宿のブート屋で買ったレアライブDVD」を紹介したり、
たまに海外旅行に行った時の投稿では「アビーロードで撮った写真」「フレディー・マーキュリーの生家」といったオタク全開の聖地巡礼画像を上げたりしていた。

「輝かしい青春」「熱い友情」などといったソウルフルなワードなど到底信じられない世界で生きていたのである。




そんな私が、時を超えてBTSの「Friends」という友情ソングを聴いて咽び泣くことになりました。




BTSの沼に落ちたばかりでまだメンバーのキャラクターや関係性を全く知らなかった頃、「クオズのfriendsほんとエモい」というコメントをSNS上で見かけた。


まず「クオズ」というワードがわからなかったのでそこから検索。
どうやらパクジミンさんとキムテヒョンさんの組み合わせの呼称らしく、2人は1995年生まれの同い年でデビュー前から同じ高校に通った仲だという。

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もうこの時点でフレッシュなアオハルの香り漂う王道青春漫画の設定のようなのだが、調べれば調べるほど嘘みたいな情報が出てきて私は戦慄した。


あざと可愛いパクジミンさんは酒豪で実はめちゃくちゃ男らしい性格の釜山男子。
クールな雰囲気のキムテヒョンさんは実はビールもブラックコーヒーも飲めない辛い物もNGな天然ぽやぽや系男子。

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この事実はどう考えても少女漫画である。
君たちは別冊マーガレットの住人かなんかなの?


きゅるんきゅるんな可愛い顔して半笑いでワインを一気飲みするジミンさんの姿や、「酒なんて水」みたいな顔して「シャンパン苦い…キムチ辛い…」と苦虫を噛み潰したような表情を見せるテヒョンさんのギャップの塊でぶん殴ってくるような映像を見て私はあらゆる感情が爆ぜました。


もし私がこの漫画の編集担当だったら現代の少女漫画ではベタ過ぎるという理由でこの設定は却下します。
(ついでに大谷翔平の高身長ベビーフェイス+完璧な人間性を持った上でのあの二刀流での活躍も漫画すぎるので却下します)

そんな別マのキャラが現実にいるんだから人気が出ない筈がありません。

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これ、明治安田生命のCMで小田和正の歌声と共に流れてきてもおかしくないレベルでいい写真



ネット上で防弾少年団の成り立ちや彼ら2人の仲良しエピソード、苦楽を共にした感動エピソードの数々を見てガッチリ心を掴まれた後、ついに私はFriendsという曲を聴くことにした。

YouTubeで「BTS Friends」と検索。
そこで2000万回以上再生されている、映像と歌詞字幕が付いた音源が出てきたのでとりあえずそれを再生してみた。


まず驚くべきは出だしのジミンさんの圧倒的エッジボイスだ。

声帯を閉じた状態で発声するこのテクニック、エッジボイスが特徴的な歌手といえば、邦楽シーンでは男性なら平井堅、ONE OK ROCKのTaka、女性なら宇多田ヒカルAimer等が有名。

歌唱一声目でこのエッジが炸裂する。
男性にも女性にも聞こえるこの中性的かつエネルギッシュな歌声に誰もが興味を惹かれるだろう。


更にジミンさんはエッジをきかせてくる上に、音程を下から上にずり上げる歌唱法、しゃくりもとんでもない勢いで入れてくる。
松田聖子ばりの自然かつ天性のしゃくり上げボイスなのだ。

私は彼らが出演する音楽番組を初めて録画して観たのが2020年放送のベストアーティストのDynamiteだったのですが、
ジミンさんの2番Bメロで僅か7秒の間「エッジ→がなり→がなり→しゃくり」と歌唱テクニックをこれでもかと詰め込んでくる様に度肝を抜かれました(しかもそれを踊りながらやってる)。

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これがテレ東のTHEカラオケバトルだったら
加点だらけで画面がめちゃくちゃカラフルになる


しかしジミンさん、同年12月にCDTV Live! Live!で披露したクリスマスをイメージした衣装とセットでのDynamiteでは、この同じパートにおいてエッジとがなりを全く使ってないんです。

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おそらくクリスマスの厳かで聖なる雰囲気を出すために、しゃくりのみにして美しくさらっと歌い上げたんだと思います。
同じ曲でもその時のテーマに合わせて歌い分ける
パクジミン、恐ろしい男だよ〜!



一方テヒョンさんはジミンさんのエンジェリックハイトーンボイスに対してハスキーで甘い低音ボイスです。

アイドルとしては珍しい深みのあるバリトンボイスで、ここぞという時に美しいビブラートも決めてくる3オクターブの音域の持ち主。
このイケボで壺でも売られた日にはもう有り金全部振り込んでしまいそうです。


彼の歌唱力と、それに加えて表情管理のレベルの高さに驚かされたのは2020年のFNS歌謡祭のDynamite、ラスサビの「Shining through the city with a little funk and soul」の高音パートだった。


このラスサビは転調してるので「little funk and soul」の部分のキーはhiC#。
男性が出すにはかなりしんどい高さ。

それをこの男は苦しそうな顔は一切見せず、しかも片方だけ目を細める、眉毛や口角などを上下させるなどの表情変化を0コンマ1秒毎に行い、音程を外すこともなく完璧に歌い上げていた。

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ここ凄すぎてはちゃめちゃにスクショした


僅か数秒の間にこれだけ表情を変えながら歌って踊れるってどうなってるんだと、5、6回は巻き戻してスロー再生で観た。

私にとってこの完璧なパフォーマンスは、4回転サルコー+3回転トーループの後に4回転トーループ+1回転ループ+3回転サルコウ、さらに4回転トーループまでもを決めてくる羽生結弦さんのSEIMEIみたいなものです。
この日のキムテヒョンは実質安倍晴明であり、私史上最高得点を叩き出した瞬間だったのだ(何を言ってますか)。




話が脱線したのでFriendsの話に戻りますが、とにかく2人ともこのように歌唱力、表現力がずば抜けている上に、両者の声質のコントラストも効いているので聴いていてとにかく心地がいい。

この曲は簡単コードでいうところのF-C-G-Am。
邦楽だと米津玄師の「Lemon」、優里の「ドライフラワー」のサビと同じコード展開。
どう足掻いても泣いてしまう涙腺直撃進行です。

コード進行からして勝ちが確定してる曲ですが、歌詞もそれを凌駕するほどににオタクの琴線にバシバシ触れてきます。



「僕らの会話は宿題みたいだった」
「ある日は親友、ある日はライバル」
「僕たちの思い出は一つひとつが映画みたいだ」
「スクールバスを埋めるほど交わした色んな話」
「今では一緒にドライブに行くんだ」
「何一つ変わらないあの頃の僕ら」



こ、これか〜!
これがエモいってやつか!



彼らと青春時代を共にしたわけでもないのに、まるで一緒に登下校でもしていたかのような錯覚を起こしてしまった。
もう気分は映画「時をかける少女」。

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クオズと私
(※Friendsは男子2人の友情ソングなので
女子は出てきません。)


彼らの過去や歴史を履修済みということもあり、「このメロディアスな雰囲気でこの歌詞はやばいやろ…」と完全にセンチメンタルな気分に浸ってしまっていた。
しかし、そこに更なる歌詞(台詞)が追い討ちをかける。



「ねぇ ジミン、今日さ…」




突然NANAのモノローグみたいなのがぶっ込まれる。

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別マかと思ってたら掲載誌はまさかのCookieでした。
そもそも別マの登場人物は大体みんな未成年で酒は飲めないのでCookieで正解だった。

この台詞によって私はもう完全に矢沢あいモードに突入してしまい、Friendsと共に突如GLAMOROUS SKYが脳内再生される展開に。

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ジミンさんにこういう衣装着てほしいな〜


なるほど、クオズのFriendsっていうのは大崎ナナと小松奈々の友情ストーリーだったんやな…ほんと二人の出会いは運命だよ…と勝手に自己完結しそうになったが、
その直後私の目に飛び込んできたのは、泣き始めるテヒョンさんと彼を笑顔で抱きしめるジミンさんの姿だった。

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映像に関する音声がなかったのでどういう状況かわからなかったのだが、テヒョンさんはカメラの前でボロボロと涙をこぼしていた。
(後からわかったことだが、どうやらこれは2018年のパリ公演の映像の一部で、彼は風邪で声が上手く出せず悔しい思いをしたらしい。)




私は所謂「男泣き」に非常に弱い人間です。



MAMA2018での彼らのArtist Of The Year受賞時のスピーチ映像では、ちょっとありえないくらいにもらい泣きしてしまった。

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オリンピックや高校野球などスポーツのシーンではもちろんのこと、何かに全力に取り組んでいる人の嬉し涙、悔し涙には否が応でも胸を打たれてしまう。

(もはやMr.SASUKEの山田勝己が「俺には…SASUKEしかないんですよ…」と泣きながら自らの感情を吐露するシーンを観た時ですら「おいTBS〜!山田にSASUKEを続けさせてやって!」と赤坂方面に向かって叫びそうになったくらいだ。)


感情を露わにするテヒョンさんと彼を優しく包み込むジミンさんの姿は友人関係を超えて、まるで生まれた頃から生活を共にしてきた家族のようにも見え、それは彼ら2人の歴史の長さを物語っているようだった。



そしてサビの
「この歓声が止む時には側に居て」
という歌詞。



これ凄くないですか。
「歓声が止む時」って。



始まりがあれば、必ず終わりも来る。
ワールドスターとして活動を続ける彼らは、既にその終わりも見据えて走り続けているのだろうか。
歓声が鳴り止むその瞬間も、その後も、ずっと一緒にいようというお互いの気持ちをサビの頭に持ってきていることには、とてつもなく大きな意味を感じた。



田舎街からソウルという大都会に上京してきた二人。


事務所に入所した頃、彼らはまだ16歳の子供だったのだ。


設備も完全に整ってはいない設立して間もない小さな事務所の宿舎だ。
親元を離れ、2、3時間という僅かな睡眠時間の時もあった中で一日15時間もダンスの練習に費やし、食事や外出も制限される中ボイストレーニングに励み、SNSでは笑顔の動画を提供し続ける。


これを義務教育を終えたばかりの、この前まで中学生だった子供達がやっていたのだ。

当時においての大手三代事務所のように、デビューしたら必ずトップアイドルになれるということが約束されていたわけではない。
防弾少年団はデビュー当時「売れるはずない」、「すぐ消える」と言われていたグループだったと聞く。
先の見えない不安を感じる中、謂れのない誹謗中傷をうけることだってあった筈だ。

大人ですら逃げ出したくなるであろう厳しい環境の中で、まだ未成年の高校生の彼らは、どんな思いでカメラの前で笑顔を作っていたのだろう。

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どれだけの涙を流してきたか、どれほど苦しい思いをしてきたか、私は彼らのインタビュー映像やネット上の記事からしか知ることが出来ない。

しかし彼らが茨の海のような道を共に乗り越えてきたこと、一生において掛け替えのない仲間に出会えたこと、今こうして「Friends」という曲を生み出せたこと、これらは紛れもない事実でありこの歴史があるからこそ、今の彼らとARMY達の世界が存在しているのだ。



そしてラスサビで来ました、
「You are my soulmate」です。



バンドサウンドと美しいストリングス、そしてとてつもなく厚いゴスペルのような多重コーラスによって、まるで大歓声を再現したかのように力強く伸びやかに繰り返されるこのフレーズ。

そしてその後にこう続くのである。


君は僕のソウルメイト
永遠にずっとここにいてほしい
君の小さな小指みたいに
7回の夏と寒い冬よりも長く
たくさんの約束と思い出よりも長く


もう無理でした。
こんなの泣きます。



こんな説得力のある「ソウルメイト」という言葉を用いたフレーズを私は今まで見たことがありません。

私が思春期に感じた軽薄で上滑りした響きとは違う、ジミンさんとテヒョンさんの彼ら二人が長い歴史の中で織り成した、絶対に破られることのない「絆」が確かにそこには在りました。



「長く続いてほしい」という思いを込めたフレーズを2回残して、アウトロも無くテヒョンさんの「Yeah」という歌声を最後に突然この曲は終わりを迎える。

まるで祈りにも似たその願いが込められた歌詞はリスナーに向けられたものではなく、ジミンさんとテヒョンさん二人だけの世界で、お互いのためだけに存在する言葉なのかもしれない。


そして、そんな彼らが歌う「Friends」だからこそ、ソウルメイトという言葉はこれほどまでに大きな意味を持つのだ。




彼らはどこまで走り続けるのだろうか。
かつてユンギさんが発した「墜落は怖いが、着陸は怖くない」という言葉は多くのファン達の心に残っただろう。

どのような形であれ、BTSが活動を休止する未来は必ず来てしまうのだ。


私は歴が浅いファンだが、この短い年月の中だけでも彼らからは芸術的な知識だけではなく沢山のことを教わった。
自分を愛する方法、他者に愛を伝えることが出来る幸せ、たった一行の歌詞に救われることがあるということ、好きな人の何気ない一言や一枚の画像だけで「明日も生きていける」と強く思えるということ。

そしてこの「Friends」という曲は私に目には見えない大切なものがあるということを教えてくれた。
時間は有限だが、彼らが「永遠に側にいて」と願えるように、魂はいつだって燃え続け永遠に存在し続けるのだ。

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そしていつか訪れるであろうジミンさんとテヒョンさんの着陸を私は見届けたい。


きっと歓声が鳴り止むその瞬間も、二人は笑っているだろう。


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