消化試合

noteでも始めてみるか。

と思って最初に書いたタイトルが「消化試合」というのもなんだが、
それはそれでありなような気もしてきた。

というわけで、
昨シーズン麻雀のプロリーグであるMリーグで物議を醸し出した
「目無し問題」について書こうと思う。

奇しくも今年のプロ野球は両リーグとも優勝の可能性のないチームの勝利によって優勝が決定。
ちょうど同じような事が昨シーズンのMリーグの優勝決定戦で起きたのだ。

まず大前提として、「リーグ戦」である以上消化試合が発生するのは当たり前である。
今シーズンのプロ野球しかり、1位と2位の直接対決で優勝が決まるなんていうことは稀で、
下位のチームがとどめを刺すパターンは往々にしてある。

ただ麻雀のというのはご存知の通り4人でやるゲームで、
優勝決定戦に優勝を争う2チームと優勝の目のないチーム(厳密には完全にないわけではないが、現実的にほぼ不可能)が混在していたために物議を醸し出したのだ。

もちろん優勝を争う2チームは優勝を目指して戦えばいいが、
問題は目無しのチームの選手がどう振る舞うかである。

なぜなら麻雀が4人同時に戦うゲームである以上、
目無しチームの一挙手一投足が優勝争いをしているチームのどちらかに有利に働く可能性があるからだ。
こういう場合目無しチームのプレイヤーは「何もしない」というのが通例であった。
和了も放銃もせず、ひたすら降りるのだ。

ところが昨年の最終戦、目無しチームのプレイヤーである村上がとったのは「トップを取る」という戦い方であった。
僕もそれまで「何もしない」派だったが、村上の麻雀を見て考えが180度変わった。
麻雀をプロスポーツとして見るなら村上の選択は正しいと思ったからだ。

贔屓の野球チームの話で恐縮だが、昨年ヤクルトスワローズの五十嵐投手の引退試合があった。
あいにく昨年のヤクルトは断然の最下位で、引退試合は順位争いに影響のない消化試合で行われた。
こういう場合、投手は一打席限り登板、対戦する打者は三振をするというのがしきたりとなっているようだ。
ところが、その試合で対戦相手の中日ドラゴンズの外国人選手が初球をヒッティングしたのだ。

なぜか?

それは生活がかかっているから。

プロのスポーツ選手は年俸を上げるために少しでもいい成績を残さなければならない。
例えチームの優勝の目がなくなっても、プロの選手は成績を残すために全力でプレーする。
海を渡って稼ぎに来た選手ならなおさらだ。

ところが麻雀においては、Mリーグが発足するまでの間、
麻雀プロの対局で成績が悪かったからといって生活に直接大きな影響が及ぶことがなかった。
これは多くの麻雀プロが対局以外に生活の手段があったから、というか麻雀の対局で賃金を得てなかったからである。
(ゲストとして呼ばれる等もあるので全く影響がないわけではないかもしれないが)
だから「何もしない」という選択肢がまかり通っていたのだ。

しかし将来、Mリーグがもっと大きな規模になって、
ひとつのゲームの成績が進退にかかわる選手がそこに座ったらどうだろう。

もちろん今回村上がトップを取ったところで査定が上がることはないかもしれないが、
村上はMリーグが発足した当時の「(生活の手段とするという意味で)本当のプロになった」という発言然り、
対局中に首を傾げたりため息をついたりする以外は非常にプロ意識の高い選手である。

この村上の戦い方は将来麻雀がスポーツとしてもっと大きな規模になったときのプロとしての在り方を示し、
これまでの惰性的な習慣に一石を投じたと言えるのではないだろうか。

一方何もしないというのはどちらかというとエンタメ寄りな考え方である。
何度も繰り返してるように、そもそも麻雀というのは相手3人と戦うゲーム。
1人が何もしないというのはもはや麻雀と呼べない状況である。
消化試合がエンタメとしてつまらないというなら、
極端な話、芸能人のクイズ番組のように最終問題は100万点みたいにすればいい。

また最初に少し触れたように目無しとはいえ完全に優勝の目がなくなったわけではなく、
「10何万点とれば逆転優勝」のようなあまりにも非現実的な条件が残されていることも
麻雀と呼べない状況を作り出している要因の一つとなっている。
いっそのこと勝ち点制にするというのも一つの手かもしれない。
そうすれば村上の戦い方が否定されることもないし、
無駄なオーラスの連荘もなくなる。

いずれにしてもプロスポーツというのを謳い文句にしているのに、
完全に実力主義ではないところに一視聴者としては中途半端さを感じてしまう。
もちろん集客があってのプロスポーツなので難しい問題ではあるが、
個人的には完全実力主義の世界を見てみたい。

さて、人生も40になるとほとんど消化試合のようなものだが、
少しでも何か目標となるものを見つけて日々生きていきたいものである。


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