[電源回路基礎]昇圧DCDCの入出力電圧関係式

本記事では、PWM制御をする非絶縁昇圧DCDCの入出力電圧関係式の導出方法を解説します。前回降圧DCDCの入出力電圧関係式を導出しておりますので、良かったら見てみてください。

今回導出する式

先に導出する式を提示します。

Vo ＝ 1 / (1-Duty) × Vin
Vo：出力電圧[V]
Duty：1周期あたりのON時間の割合[%]
Vin：入力電圧[V]

まず覚えるべき大事なこと

降圧DCDCのときもそうでしたが、昇圧DCDCでも「スイッチON／OFF1周期のコイル電流増減分は等しくなる」ということは変わりません。この考え方で最初の式を導出出来ます。

昇圧DCDCの回路構成

回路はM1のスイッチがON/OFFを繰り返して入力電圧が昇圧されて出力電圧に出ます。導出にはコイル電流に着目します。

スイッチONのとき：LにVin - 0[V]の電圧がかかる
スイッチOFFのとき：LにVin - (Vo - Vf)[V]の電圧がかかる

「スイッチON／OFF1周期のコイル電流増減分は等しくなる」ということは「コイル電流増減が足したら0になる」ということです。

事前知識

コイルの式：V ＝ L×di/dt

高校、中学の物理で出てきますね。私はこの式をすぐ忘れちゃいます。忘れたら調べればいいだけです。それでは、導出をやっていきましょう。

スイッチON時OFF時のコイル電流を計算する

スイッチON：ΔIL_on = Vin / L × ton
スイッチOFF：ΔIL_off = (Vin - (Vo-Vf)) / L × toff

Vfはダイオードの電圧ですが、簡単のために0Vとみなします。

スイッチON：ΔIL_on = Vin / L × ton
スイッチOFF：ΔIL_off = (Vin - Vo) / L × toff

これらを足したら0になるので、そう書きます。

Vin / L × ton + (Vin - Vo) / L × toff = 0

Lを消します。ついでに右辺に動かします。

Vin × ton = (-Vin + Vo) × toff

Vo = 〜の形にしていきます。

Vin × ton　/ toff = -Vin + Vo
Vin × ton　/ toff + Vin = Vo
Vo = Vin × ton　/ toff + Vin
Vo = (ton + toff) / toff × Vin

ton + toffは1周期の時間になります。tpwmと書くこととします。

Vo = tpwm / toff × Vin

toff / tpwmはOFF時間の割合ですね。DutyをON時間の割合とするとOFF時間の割合は1 - Dutyで表せます。んで、tpwm / toffはそれの逆数なので以下のように書けます。

Vo = 1 / (1 - Duty) × Vin

はい。これで最初の式が導出されました。昇圧DCDCも降圧DCDCと同じ考え方で導出できます。

本記事は以上です。理解のちょっとした一助となれば、幸いです。

最後まで読んで頂きありがとうございました。