発音記号で発音の勉強をしてはいけない 日本の学校が教えない英会話術①
この前、他大学の教員と英語の発音教育の話をしていたときに、「日本人はもっとちゃんと発音記号を意識すべき」みたいな意見があって、全く納得いかないので記事にしてみようと思う。
英会話の基本はまずは基礎英文法が見についているかが大前提です。
ここでいう基礎英文法は高校レベルの精緻な文法ではなく、もっと大枠の中学1年生レベルの1番基本的な文法の話です。
もちろん、ハイレベルな会話をするために知っておくべき語彙・文法・イデオムはありますが、まずは一番シンプルな英語の基本構造さえわかっていれば大丈夫です。ハイレベルな文法も、結局はこの基本構造の上に成り立っているからです。
次に正しい発音です。
発音を学ぶコツはたった一つです。
「英語と日本語の発音ルールの違いを理解すること。」
はい、おしまい。
これだけで短期間で劇的に聞き取れるようになるし、自分の発音が相手に伝わりやすくなります。
発音ルールを勉強するなら発音記号は大事やんと思うかもしれませんが、これが大きな罠です。
基本的に発音記号クソくらえと思っておいた方がよいです。
納得いかない人のために日本語を例に挙げて説明します。
日本語の発音を外国人に教えることを想像してください。
まず何を教えますか?
あいうえおの50音(厳密には46音)を教えますよね?
そこで、例えば「ん」の音。
日本語で「ん」の音は何種類ありますか?
日本人の誰に聞いても普通は「1種類に決まってるでしょ?」と答えると思います。
しかし、発音記号の世界では、日本語に「ん」の音は「n」と「m」と「ŋ」と「N」の4種類あります。
んなアホな、と。
このどれで発音しても日本人はちゃんと「ん」として認識してくれますので、この違いを一生懸命勉強するのは時間の無駄ですよね。
発音記号で英語の発音を勉強するというのはそれぐらい無意味な行為です。こんな愚かな勉強法をしているのは私の知る限り日本人だけです。
日本語の母音は「あ」「い」「う」「え」「お」の5種類ですが、英語の母音の発音は何種類あるでしょう?
私の見解では、日本人が意識すべき英語母音の発音は以下の14種だけです。
異論はあるでしょうが、事実としてこれだけ覚えておけばほぼ確実に通じます。日本語に存在しない発音に関しては私の独断と偏見でカタカナ化しています。残りの発音(二重母音など)はこれらを組み合わせるだけです。なお、上の表ではあえて「短母音」「長母音」「二重母音」といった用語を用いずに「発音1」「発音2」と表現しました。
大事なのは完璧に正しいかどうかではなく、自分はこの発音で行くと決めてしまうことです。ブレないこと。そして英語に関しては完璧に正しい発音を追い求めるのは無意味です。国や地域によって微妙に(ときには劇的に)発音が変わるからです。
ちなみに、上記の表の発音に発音記号をつけるとこんな感じです。
発音の話をするときに、一気に20種類以上に増えました。これは私がパッと思いつく限りの発音記号なので、実際にはもっとあるかもしれません。
はっきり言いましょう。
ネイティブはこんな細かい違いをいちいち意識していません。
仮に「ʌ」を「ə」と発音しても誰も気づきません。
一方で、重要なのは「エァ」と「ア」の違いや、「イ」と「イェ」の違いです。
この両者は明確に違うということを知っておくことは大切です。
「hat」と「hot」、「it」と「eat」の発音は明確に区別されるので、完璧に発音できなかったとしても、区別する努力が必要です。
他に日本人が注意すべきポイントとしては「A」は「エー」ではなく、「O」は「オー」ではないというところです。
昔、笑い飯の漫才のネタで「かわいそうなゾウ」の話がありました。
「ゾウはゾ・ウって書くけど、みんなゾーって発音するねん!」というやつ。
日本人は遅くとも小学校1年生のときに「えいご」は「えーご」、「おうさま」は「おーさま」と発音する様に矯正されますので、無意識化でそう発音してしまいがちです。英語教師ですらそう発音する人がいるぐらいです。
「A」の正しい発音は「エイ」、「O」の正しい発音は「オウ」です。同様に「J」は「ジェイ」、「K」は「ケイ」です。
あと、ついでに英語にないけど日本語に存在するルールも知っておくといいでしょう。
小さい「っ」と長音符「ー」の概念は英語には存在しません。
え?あるやろ!と思うかもしれませんが、ないです。
英語ネイティブは「イト」と「イット」と「イート」は区別しません。
これらはすべて上の表の「e」の発音1と同じ音と認識されると思ってください。
「it」を「イット」と発音したら、英語ネイティブには「イート(eat)」と同じに聞こえています。
心の中で「こいつめっちゃ訛ってるけど、たぶん文脈的にはitって言いたいんやろな」と思われています。
「it」の正しい発音は「イェッ」が近いです。ちなみに「eat」は「イーッ」です。
小さい「っ」と長音符「ー」使ってるやん!と思われたかもしれませんが、語末の「t」はほぼ発音されないので便宜上「ッ」で表現させていただきました。あと、仮に「イーッ」と「イッ」と発音してもちゃんと通じます。
ネイティブっぽくしゃべるコツとしては、アクセントの部分に長音符「ー」をつけるイメージで発音すること。日本語には息の強弱をつける「ストレスアクセント」の概念がありませんが、長音符をつけるイメージで発音すると自然と息が強くなって発音できます。
試してみてください。グッとかっこよくなりますよ。
dog(犬)は「ドッグ」ではなく「ダーグ」。
cat(ネコ)は「キャット」ではなく「ケァッ」。
以上です。
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