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外国語の発音に無頓着な日本文化 日本の学校が教えない英会話術②

日本人が英語を正しく発音できない原因の一つに「カタカナ英語」いわゆる外来語の影響が指摘されることが多いように思います。

日本には外来語があるから英語の発音ができないんだ!

という論調。

概ね同意なのですが、実は本質はもっと別のところにあります。

日本人が発音に鈍感な理由、私は漢字のせいだと思っています。

漢字は表意文字、つまり文字自体に意味があります。

子供のころから漢字を叩き込まれている日本人は、「文字には意味がある」という常識にとらわれています。

なので、言葉は発音に意味があるという世界の常識に疎い。

例えば「日本」という漢字、「にっぽん」と「にほん」という二種類の読み方があり、どちらもこの国の名前として認識されています。

これは発音ではなく文字に意味があると考えている日本特有の文化です。

英語の場合、例えば「station」という単語は「ステイシャヌ」という「発音」に意味があるのに、日本人は無意識に「s - t - a - t - i - o - n」という「文字列」に意味があると思っているので、正しい発音に興味がないのです。

この意識が根底にあるため、英語の発音のルールを理解しようという考えに至りにくいのでしょう。

なお、この理屈で言うと日本と同じ漢字文化の中国人も発音に無頓着なのか、ということになりますね。

答えはノーで、彼らの英語発音は多くの日本人話者よりもずっと綺麗です。

なんやねん。矛盾しとるやないかと。

これには日本の歴史が関係しています。

日本人は古代、独自の大和言葉を使う民族でしたが、文字を使用する文化がありませんでした。

そこに大陸から漢字、つまり表意文字が輸入されたのです。

元々独自の文字を持っていなかった日本人は、漢字をそのまま使用することになりましたが、漢字を二種類の方法で用いるという面白い形で文化に取り入れました。

漢字の本来の発音を使って表音文字として使用し、一方で大和言葉の意味を表す表意文字としても利用するというダブルスタンダードです。

その結果生まれたのが日本語を勉強する外国人たちを困惑させる「音読み」と「訓読み」。そして表音文字として使用しているうちに漢字の形が変化したのが平仮名と片仮名です。

1つの文字に幾通りも読み方があるという日本独自の文化はこの様に生まれたのでした。なお、音読みはそのまま最古の外来語にもなりました。

日本人が昔の中国人が書いた漢文や漢詩を読むとき、そのまま中国語発音で読むことはなく、大和言葉の書き下し文に変換して読みますよね。(そのせいで漢詩の韻が台無し)

これと同じことをついつい英語でもやってしまうのが日本の英語教育に悪影響を及ぼしているわけです。

元々独自の文化として漢字を使用していた中国人は、漢字の読み方は一通りしかありません。(地域による発音の差異はありますが)

そのため、中国人は漢字をそのまま表音文字としても使用しますし、日本人ほど発音に鈍感ではないのでしょう。

ちなみに中国にも外来語が存在しており、コカ・コーラは可口可乐、マクドナルドは麦当労という漢字が当てられ、本来の発音とはかけ離れています。

これは外来語の存在が発音への敏感さとはあまり関係がない証拠でしょう。

とりあえず「日本人は正しい発音に鈍感な文化」ということを自覚して、

言葉は発音に意味がある

という風にマインドセットを入れ替えることが発音上達の最初のステップかもしれません。


なお余談ですが、お隣の韓国は何十年の間、独自の文字であるハングル文字を使っていますね。

このハングル文字はアルファベットと同じ表音文字なので、彼らは言葉の発音に非常にセンシティブです。

まあ、韓国人の英語を聞いたことがある人はわかると思いますが、韓国語と英語の子音の発音体系が大きく異なるために、彼らの英語発音はあまり良いとは言えません。それでも、日本人の様にテキトーに発音しているわけではなく、英語のルールに沿った正しい発音を心がけて発音しているのは伝わってきます。


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