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《スマホを紛失したが、出てきた話し》  

2023年7月2日の未明、私はスマホをどこかに紛失しました。新しいストーリーが私を呼んでるなと感じました。人は私のことを楽天的だと言います。

7月1日(土)~2日(日)にかけて、私はアメリカ村にある『FARPLANE』にいました。そこでオーナーのロビンと友人を挟んで、熱い議論を交わしていました。熱い熱い議論です。根性について話しをしていたのです。

夜もどっぷりと暮れて、日付が変わっても議論は冷めることなく深夜3時までにわたりました。そして、そこからタクシーに乗って帰路へとつきました。翌日、気がつくとスマホがどこにもありませんでした。

最後に自分がスマホの存在を認識したのは、午前1時頃(25時頃)のFARPLANEです。友人の冷泉にラインを送っていたので、その返答を待ち構えていたのです。

スマホがないことに気がつきましたが、とても晴れやかな気持ちにもなりました。「すごい、これで誰とも連絡取れなくなるんだ」という安堵感が心の中で芽生えたのは自分でも意外でした。しかし、その意外さも心のどこかに「FARPLANEへ行けば、ソファに挟まった自分のスマホが出てくる」という根拠のない自信があったからかも知れません。

特に急ぐこともなく、まずは心斎橋パルコのFARPLANEにお邪魔をしてロビンとコンタクトを取ってもらうことにしました。もう今となっては誰の電話番号も覚えていない、知らないことが当然なのかも知れません。日常の当たり前である便利がすごすぎて、便利ではなくなったときの原初風景に目と気持ちを慣らすのは大変だろうなと考えていました。

結果的にFARPLANE皆さんのご協力を仰ぎながらも、私のスマホは出てきませんでした。このタイミングで急に不安に駆られるようになってきました。「そこにあるべきものが、いざ調べてみると無かった」という事実を突きつけられて、私自身のメンタリティというものは脳内の思い込みのみを根拠として成立しているのかと空恐ろしくなりました。

自分の信じていたことが、事実と違ったとき、またそうではないと第三者から判断されたときの不安感というのはたまりません。また、そういうタイミングのときに限って、自分自身でなくては対応できない事案が同時多発的に発生しているイメージが頭から離れなくなります。

誰かが自分の登場を待っている。着信が100件、親戚中から私のスマホへ送信されているような気がしてたまりません。こんなときにアイツとは連絡がつかないという私には届かない声が、そのメッセージの内容を消化できないまま世間に漂っていると考えると、申し訳ない気持ちになりました。

でも、私は私なりに焦る気持ちを落ち着けるためにカラオケでも行こうかと考えましたが、スマホで決済しようと考えていたため思考を整えるためのカラオケにすら行けないのです。取り急ぎ、近くの警察署に遺失物届を提出してその後の連絡を待つことにしました。

さて、今朝になって会社に来て「スマホが見当たらない」で、Google検索すると【デバイスを探す】というのをしてみてはと記事に書かれていました。

スマホが手元にあるうちに「無くしたときのこと」を考えておけば、このように自分で発見することもできるのかと思いましたが、そのような対策を一切していなかった私は記事で発見の可能性を示唆されるごとに、自分の甘さを認めざるを得ません。こうしておけばとか、事前にこうしたことを予測して対案を幾つか持っておくようにしておけばとか。

読み進んでいるうちに、「Googleマップでデバイスの位置を確認」という項目に差し掛かりました。そこにURLが引っ付いており、何気なくリンクを開いてみると、マップが出てきました。

「もしかして!」

マップをよく見ると、ある地点にスマホのマークがあります。どうやら、私のスマホは東大阪市の八戸ノ里あたりにいることがマップに出ていました。

八戸ノ里は勝手知ったる土地ですが、ただ、漠然と八戸ノ里の駅前とマークが出ていてもそこから情報は途切れてしまいます。八戸ノ里近辺の人間に聴き込みをするわけにもいきません。

一体、誰が八戸ノ里にまで持って行ったのか。ただ、このマップの情報もアテになるのかどうかもまったくわかりません。このようにして自分の失くしたモノの場所が明確にわかるツールなんて今まで経験がなかったので疑念を持って当然です。とにかく気持ちの中で主たる部分を占めていたFARPLANEで失くしたという思い込みの術からは解き放たれました。

自分のスマホがあるといわれる東大阪市のマップを睨みつけること数分、「タイムライン」という機能に気づきました。タイムラインと書かれたところをクリックしてみます。

「すごっ!」となりました。

私のスマホがどういった経路でどのように東大阪までたどり着いたのか一目瞭然でした。スマホの現在地もざっくりと駅前という指示ではなく、思いっきり布施警察署を指していました。何より驚いたのがどこに何時間あって、どれくらいの時間をかけて移動したというのまでわかるところです。

写真の濃い青のラインは車で移動しています。東大阪のある地点で車から自転車か徒歩で交番まで運ばれて、交番から布施警察署まで運び込まれた時間までが明確に出ていたのです。結果的に私の不注意により、スマホをタクシー車内に忘れてしまっていたということです。

なので布施警察に電話しました。「私のスマホを探しています」という慣れ親しんだ問い方ではなく「私のスマホ、そこにありますよね」という新しい尋ね方です。

生まれて初めての経験でした。失くしたものを自分で取り戻せたという実感。でも、スマホとPCをGoogleで連携していただけでこんな魔法のようなことが起きるのかと、ちょっと怖くもなりました。

あまりにも知り過ぎているのですよ、このスマホもパソコンも。
私のことを。

また、ボタン1つでメモリーを遠隔で初期化できてしまうモノに危うく命を握られてしまうところだったと気づくキッカケにもなりました。落とそうと思って落としていない以上、また落とす可能性もあるので次からは不特定多数の人に拾われても全然平気な情報のみを管理させようと考えました。

届けてくださった皆さん、探してくださった皆さん、大変お騒がせいたしました。ありがとうございました。

そして、私の頭の中で思い描いていた大量の緊急通知のようなものは一切スマホに着信しておらず、冷泉からの「寝てました」というメッセージのみが私に届けられてないままスマホにありました。

おわり


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