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Column:簿記3級の新人に「間接法」キャッシュ・フロー計算書を説明するメモ

■キャッシュ・フロー計算書は難しい?

新人「キャッシュ・フロー計算書難しい~!」

先輩「どうしたどうした」

新人「キャッシュ・フロー計算書の作成担当になったので勉強しているのですが、難しくて…。」

先輩「そうなんだ、苦手にしている人多いよね。」

新人「キャッシュ・フロー計算書には、取引ごとに現金の動きを説明する直接法と、利益の額に調整を入れて現金の増減を説明する間接法があることを勉強しました。直接法は銀行口座の明細追っているようなものだから、キャッシュ・フロー計算書の金額と実際の現金増減額がピッタリ合うのはわかるんです。」

先輩「うん。まぁ直接法は、お小遣い帳を集計したみたいなものだよね。」

新人「でも、間接法でなぜピッタリ現金の動きが説明できるのか不思議なんです。1件1件の取引についての表現の説明は理解できますし、なんとなくはわかるのですが、それが何百何千件と積み重なってキャッシュ・フロー計算書の集計が現金の増減とピッタリ一致するのが、腹落ちしないというか…モヤモヤします。」

先輩「確かにね。」

■現金は他の全勘定の差額

新人「売上が増えても(+調整)売掛金が増えただけ(▲調整)ならキャッシュ影響は±0、売掛金が減少したら(+調整)入金したのだからからキャッシュ影響がプラス。説明されると一つ一つは納得できるんです。」

先輩「ふむ。」

新人「でもこんな複雑な調整をたくさん入れて、なぜ帳尻がピッタリあうのか不思議なんです。」

先輩「それならまず全体像を先に理解したほうがいいね。キャッシュ・フロー計算書は、前期から当期の現金の増減を説明するためのものだけど、ポイントは、【現金は他の全勘定の差額】ということなんだ。」

現金 = 諸負債 + 純資産 - 現金以外の資産

新人「総資産(=諸負債+純資産)から現金以外の資産を引くと、現金になるということですか?そんなの当たり前じゃないですか?」

先輩「そういうこと。ということは、現金の動きは、こんなふうに他の【もれなく全て】の勘定の動きと一致するということだよね。」

新人「!!!!」

新人「なるほど!確かに、元々BSは貸借が一致しているので、現金以外の動きをぜ~んぶ足したら、現金の動きと裏表になってて、絶対帳尻合いますね!」

先輩「そうなんだよ。あとは、資産や負債の動きのうちどれが営業キャッシュ・フローでどれが投資キャッシュ・フローで、というグループ分けをしてあげれば完成だ。」

■PL勘定の調整は2重カウントされている?

新人「でも待ってください。間接法のキャッシュ・フロー計算書って、当期利益から始まってるのに後から色んなPL勘定の調整が登場しますよね。PLの影響が2重カウントになっているような気が……」

先輩「当期利益以外のPL勘定が登場する場合、基本的にどこかのキャッシュ・フロー項目で足して別のキャッシュ・フロー項目で減らして打ち消しあっているはずだよ。だから全部足し合わせるとその分の影響が相殺されるので、2重カウントにはなっていないんだ。」

新人「!!!!」

新人「そういうことですね!ようやく、間接法キャッシュ・フローの帳尻がきちんと現金残高とピッタリ一致する理由が腹落ちして理解できました!」

■キャッシュ・フロー計算書作成システムのマスタメンテナンス

新人「キャッシュ・フロー計算書の作成に全ての勘定を使うってことは、新しい勘定を作ったりしたら、キャッシュ・フロー計算書を生成するシステムのマスタも更新が必要というですね。」

先輩「その通り。我々の会社では会計システムが半自動的にキャッシュ・フロー計算書を出力してくれるようになっているので、どの勘定のどのような増減をどのキャッシュ・フロー区分に集計するのかマスタ管理をしているね。この集計が正しく行われるように、マスタをきちんとメンテナンスする必要があるんだ。」

先輩「ここまで理解できていれば、システムの計算・集計ロジックがどのようなものか、自力で検証できるレベルになったと思う。ここまで説明してきた考え方を踏まえて、自社の間接法キャッシュ・フロー計算書の作成システムのロジックを確認してほしい。きっと理解が深まると思うよ。」

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