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村上隆氏が言うNFTの「総合力」とは?~NFT ART TOKYO対談より~

2023年6月3日に渋谷で開催されたNFT ART TOKYOにてあの世界の村上隆氏とメルカリ田面木氏の対談が実施されました。限られた時間でしたが内容は非常に濃く国内のNFTプロジェクト達に対す具体的で実用的で実のある鼓舞だと感じました。そこでキーワードとなったのが「総合力」。そしてセッションの中でありがたいことに私の事をそこそこNFTビジネスの総合力がある奴としてご紹介頂いたので、私たち自身のプロジェクトも含め国内NFTプロジェクトの底上げの一助になればと思い、鉄は熱いうちに「総合力」の意味や中身を自分なりに咀嚼して書いてみようと思います。

※あまり構造性や網羅性は気にせず思うことをつらつらと書いていくのと、意訳含めなるべく難解な言葉を使わず表現していますので細かい表現はご了承ください。

自己紹介

まず簡単に自己紹介をさせていただくと、私は暗号資産取引所のコインチェックで新規事業の責任者をしていて、これまでの取組でいうとJVCEA(日本暗号資産取引業協会、金融庁認定自主規制団体)が設立され暗号資産取扱いの審査ルールができたあと全取引所の中で初めて通貨の上場、日本初のIEO、暗号資産取引所初のNFT取引所ローンチ、メタバース事業の参入、自社NFTプロジェクトなどを行ってきました。業界特性上、まずは取引所と法律事務所に情報が集中する傾向がありそこそこ多くの案件に触れてきています。一次情報を網羅的に早く集め、組み立てて、判断基準を定め、優先度を決め総合的に意思決定し実行しながら実行後も軌道修正を加えていったから実現できたと考えています。

村上さんからのメッセージ

今回村上さんが言いたかったメッセージは「クリエイティブだけ、お金だけではなくその周辺を含めた構造を総合的に理解した上でまずは生き残ってプロジェクトを続けて下さい」というメッセージだったと捉えています。NFTではスピードが早いので自滅しなかったとしても守ってるだけでは生き残りはできず「自滅しない+攻めて勝つ」ことが生き残るための必須条件ですが、村上さんのニュアンス的には、何かしら攻めるのは必要なので大いに結構だがその前に自滅しないように全体的、大局的、構造的に周りを見よというニュアンスがあったかなと思います。

これは村上隆さんの著書「芸術起業論」と同じ思想なので読んだことが無い方は是非おすすめです(自滅しないだけでなく、どのように戦略的に考え・行動され生き残っていったかについても書かれています)。


NFTプロジェクトの95%は淘汰される

初めに刺激的な表現をすると、国内におけるNFTプロジェクトの95%位はこれから淘汰されていきます。それはなぜか、まずブルーチップ銘柄と言われるBAYCやAZUKIなど人気NFTプロジェクトは既に数百億円単位の資金があります。そして今後国内においても大手企業がwhy NFT?にちゃんと答えることができるNFTやブロックチェーンを使う意味がある優良プロジェクトがでてきます。NFTを数千個デザインしてアロケーション(販売する配分)を考慮せず大半を売って数千万を運よく獲得できたとしても税金が引かれブルーチップと3桁以上の軍資金の差と共にその先にとれる選択肢が違うのでイレギュラーはあれど札束の殴り合いで基本的に勝てないです。この全体の動きを加味した上で生き残って勝つために「どこの戦場で」、「何の違いをつけるか」を決めて戦略的に動く必要があります(例えば欧米のマーケットでアニメポップ風の作風でスーパーフラットで勝つ)。そしてこれは芸術起業論でいうところの世界全体のマーケット構造を把握し、欧米のアート市場の大きさや差別化できそうな勝ち筋の仮説を立てて戦略的に海外にでていったことと同じ。ではどんなことを総合的に考えていけばいいのか。

例えば・・・・

例えば、トークンエコノミクスの設計

いくつかのNFTプロジェクトを並べ基軸となる暗号資産を組わせていき、APECOINやAXIEのように発行する暗号資産のキャピタルゲインを得るのが主流ですが、金融商品である暗号資産と非金融商品であるNFTを複雑に組み合わせると暗号資産のスピードに引っ張られ全体的に遅れていくのでNFTで完結する仕組みをまずつくり、暗号資産の準備が整ったらあとからエコノミクスにマージしていく。もしくはNFTの組み合わせだけで考える、とか。

例えば、取引所との付き合い方

Web3はトークン経済なのでNFTが流通し一定の流動性がある方事が望ましいです。よほど強いIPじゃない限りユーザー数とお金がある取引所に上場していくことが大事。ただ上場するだけでなく取引所内で埋もれないようにするために取引所の特性を把握して動く必要があります。一例としてコインチェックが運営するコインチェックNFTはお客様から預かっている約3000億円の暗号資産に対して多くても1万個程のNFTとなっており需給のバランスが他のNFT取引所と異なります。OPENSEAやblurやSBINFTやLINE NFTなどそれぞれ違います。それぞれの取引所の強みやどのチェーンを採用しているかも知っておく必要があります。

例えば、FATFの話

FATFは世界的にマネーロンダリングを防止するワーキンググループで(詳細はググってください)、各国の金融庁と密接に連携しています。2023年6月からトラベルルールというマネーロンダリングを防止する取り組みが施行されているので概要は掴んでおいてください。一言で言うと暗号資産を取引所から送金する際に、送金先/相手方の情報を確認して問題ない相手に送って下さいという内容です。これは暗号資産かつ暗号資産取引所に限った話でNFTは一旦スコープ外です。しかしNFTに話を置き換えてみるとどうかは思考実験の価値ありです。現状の本人確認をしていないメタマスクを使ったNFTのやりとりは極端な話、悪意をもって売買するとマネーロンダリングが成立してしまう状況にあります。何か大きな事件が発生すると利用者保護の観点で介入せざるを得なくなります。この懸念ポイントをFATFや各国の金融庁や業界団体がどのように考えているか。とか。

例えば、法律の話

NFTに法的な定義はまだありません(なので日本暗号資産ビジネス協会ではNFTに関するガイドラインを発表しました)。


しかし、NFTの周りには暗号資産、前払式支払い手段(=suica)、為替取引(FX)、有価証券(株)などユーティリティの設計次第で周辺の金融商品に該当する可能性があり、該当、抵触してしまうとその各金融商品の法律・ルールに乗っ取りながら進める必要があるので、基本的に重くなります。だからこれら周辺の金融商品の定義はざっくりでもいいので把握しておく必要があります。その中でも日本は世界と比べてweb3・NFT周りのルールの明確化が進んでいます。今年2023年に出た金融庁のパブリックコメントの中身を見ていない人は是非みてください。一言で言うと暗号資産とNFTの境界線について書かれています。一例でいうと1000円以上100万個以下の発行だと暗号資産ではないという見解が示されたり。もちろんなにやってもいいわけではなくその他のルール違反や抵触がない事が前提です。リスクをとって具体的に明示して頂いた金融庁さんに深く感謝)。勝ち筋を見つけるにはルールをしっかりハックする必要があります。ただひねくれた理屈をこねくり回し過ぎてもだめです。そして法律は国ごとに変わるので必要に応じて確認する必要があります。
※まずは弁護士費用をかけずに全体感を、ということであれば「NFTの教科書」という本に法律や会計の考え方が記載されているので図書館で借りて読んでみてください。

他にも・・・

キリがなくなってきましたが、私の中の「総合の中身」は自民党web3プロジェクトチームや金融庁、経済産業省、デジタル庁はどのように考えて動いているか、アメリカや香港、シンガポール、ドバイなど海外の規制動向、PFPやコミュニティアクセス権を進化させたメンバーシップNFTやダイナミックNFT、フィジタル、チケットのような新しいユーティリティの潮流、最近ではERC6551などの新しい規格の話、これから国内で激化するweb3ウォレットやその先に来るDIDの活用、大手企業のweb3に参入・検討動向、各産業ごとのweb3活用の傾向、勃興したAI市場を踏まえたweb3市場の位置づけ、会計監査や国税庁の動向、IPコラボ先、自分たちのプロジェクトのコンセプトやストーリー、クリエイティブ、コミュニティ、競合動向・・・などなどぱっと思いつくところこんな感じですが、例えば私は日々このようなことを「総合的」に考えています。

村上さんとの出会い

ご縁があって村上さんと初めてやりとりさせて頂いたのが2022年の2月。色々情報交換をさせていただく中で、その時の1番強い印象は「法律の事、めっちゃ詳しい」、です。「総合的」にというと広く浅くみたいなニュアンスがありますが、浅いどころか深く、弁護士やビジネスマンと話しているような感覚になりました。(ちなみに2番目はご自身の生き様として世の中への問題提起やどう一石投じるか、自身にしかできないことは何かという哲学そのものでした).

さいごに

web3業界はスピードが早く状況がどんどん変わります。上記のように記載したことを可能な限り一次情報を総合的に取得して解像度をあげ、組み立て7割位いけそうだとおもったら一気に全力でつっこみ、違うとおもったら早めに引く、というPDCAを高速で繰り返し、戦略的に「どこの戦場で」、「何の違いをつけるか」を考えてスピード重視で実行する(そしてさらに状況は変わるので微妙な軌道修正を繰り返す)。
日本は世界全体で見てもルール整備が進んでいるのでアドバンテージがあります。総合的に考え抜けば、その先に一点突破できる勝ち筋が見えてくるはずです。是非一緒にNFTやweb3を盛り上げていきましょう。

今後も色々発信していこうと思っているのでご興味ある方は
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